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オッサン達との旅⑩

この回は《汚い》表現が出てきますので

お食事中の方や、そういう表現が苦手な方はお読みになられないようにお願い致します。


グレンとウェインの謝罪の後、和気あいあいと歩き続けて一時間。


「おひぃさん、昼間に教えた事を思い出して、この辺りで野営するに適切な場所を探してみな」

とトルーノからお題が出されました。


突然だったので驚いたけど、今日教えてもらったことを振り返って考える。

確かトルーノは

【吹きさらしの場所は駄目だ。だが、出来る限り見晴らしのいい場所が良い】

と言っていたはずだ。

周囲を見ながらそれに当てはまる場所を探していく。

ついでに地面も確認する。

あっちは地面がボコボコしてて、寝にくいだろう。

そっちは岩が多いからいざという時に足下の邪魔になる。

なら、こっちはどうだろう?

岩や邪魔になりそうな切り株もなく、見晴らしが良い。

うん。ここが良いと思う。


「トルーノ。ここ。見晴らしは良いし、足元に邪魔なものも少ないから、ここが良いと思う。」


私が指差した方向を見て、地面を確認して


「ん。いいな。ここで正解だ。俺が教えた事、ちゃんと覚えてんな」

と頷き頭を撫でてくれたトルーノ


やった!褒められた!

とドヤ顔してみたら、オッサン達が微笑ましそうな目で見てて、次々に頭を撫でられて、なんだか恥ずかしくなった。


「こほんっ」

とわざとらしく咳をしてから、次の指示を待つ。


ククッと笑ったグレンが

「あー、んじゃ、昼間と同じように飯の用意するか。カナ嬢、見ててやるから火の起こし方、始めてみ。」

と、私に火起こし用の道具を渡してきた。


うむ。

教えた事をその日の内に復習させる。

いい指導方法だなぁ。

と思いつつ、昼間、グレンに見せてもらってた方法で火をおこした。

多少時間はかかったが、一から自分でやったので、教えてもらうよりも手順が頭に残った。


「おお。いいな。教えた通りだ。問題ねぇ。まぁ、速度はまだまだだがな。後はやっぱ慣れだな。明日から火はカナ嬢に任せる。そうすりゃ、俺並みに早くなれる。問題ねぇ。」


とグレンに褒められた。

素直に嬉しい。

嬉しくて顔が緩むので、さっきみたいにドヤ顔しないように気を付ける。


「料理だけど、お米炊いても良い?お肉はタレに漬けて焼きたいんだけど。米の上に肉を乗せる的な感じで」

と相談してみる。

そう。今日は簡単に焼き肉丼だ。


「あー。米はドロドロだろ?その上に肉を乗せる意味無くねぇか?それとよ、カナ嬢。ちっとでいいからよ、こっちのパン食ってみねぇか?いざという時に食えた方が良いからよ。食って慣らしとくのもありだぞ?」

と突っ込みどころ満載な返答をしてきたグレン。

他のオッサン達は簡単に周囲の探索兼焚き火用の木を拾いに行ったので、ここは私とグレンだけだ。


まず、米がドロドロってなに?

この世界の米は炊くとドロドロになるの?

それとも、お粥が主流なの?

そして、最大の問題。

臭いだけでもキツイ、そのパンを食べてみろって?

正気か?グレン。

お米についても聞きたいけど、それより先にパンだろう。

確かに、他のオッサン達がそのパンを食べている時に私が違うパンを食べているなんて違和感があるだろう。

よし!食わず嫌いなのかもしれない!

大丈夫かもしれない!

今はグレンだけだし、オッサン達全員の前で失態を晒すより、一人にみられる方がまだましだろう。

最悪、気絶はすると思うけど。


そう気合いを入れて


「食べてみる。臭いだけで既に厳しいんだけど、今後、食べなきゃいけない時もあるかもしれないから。頑張ってみる。けど、吐くかも。その時は見ないふりして。気絶したらよろしく。」


先にお願いしておく。


「了解。とりあえず、食ってみ。」


とグレンの声と共に手渡されたパン。


すごい臭いがする。

なんだろう。

涙が出そうで、鼻が痛い。

気合いを入れて、鼻をつまんで食べる!


そして


リバース!!!!



あかん。

これ、ガチでダメなやつ。

泣きながらリバースした。

水を口に含んで何度も。

ヤバイ。口から臭いがいなくなってくれない。

涙が止まらない。

気絶も出来ない、息が息が!


「むい!むりぃ!ぐえん!ぐえん!どーしょう!いやぁ!どーしょう!くち!へん!いやぁ!」


もう、なんて言えば良いか分からない。

思っていたのの、100倍のダメージを負った。


涙を流しながら、頭を振って必死に助けを求める私にグレンは大慌てだ。


「おわぁぁぁ!カナ嬢!マジか!!どうすべ!やべぇ!!誰か!おい!誰か来い!やべえ!」

と大声で周りに助けを求めるグレン。


その声を聞いて

『どうした!?なんだ!?』

と走ってきたオッサン達。


そして、泣いて頭をふり、呼吸も浅く助けを求める私と、私を見ながら、【助けてくれ!どうすりゃいい!?】と頭を抱えてテンパってるグレンを見たオッサン達。


トルーノがグレンに拳骨を落とした。

ウェインは私の背中を撫でてくれた。

ヨダレなんかで口回りが汚れている私の口をアルドが拭いてくれた。


「おい!グレン!何があった!?お前にしかわかんねぇんだ!しっかり説明しろ!」

とトルーノがグレンに詰め寄る


グレンはパンを食べた事を皆に説明した。

オッサン達は

『マジか。そんなにか。』

と声を揃えた。

みんな、こんなに拒否反応を示すとは思わなかったのだろう。

私もだ。

こんなに酷い物だとは思わなかった。


トルーノが水を渡してくれたので、再度、口をゆすぐ事に全力を注ぐ。

ウェインは後ろで私の背中を撫でながら、オロオロしているのが分かる。

そして、少し考えていたアルドが


「ウェイン、今、周りに人はいるか?」

と突然周りを気にし始めた。


「んだ?突然。んーと、いねぇ。大丈夫だ。」

不思議そうにも周りを確認して答えるウェイン


ホッと溜め息を吐いてから


「カナちゃん、神様鞄から《調理パン》を出して食べろ。口の中の違和感が酷ぇんだろ?食べ慣れたもので口の中のをリセットしろ。なんもしねぇよりはましだろ?」

とアルドがアドバイスしてくれた。


《調理パン》の単語を聞いて、すぐに取り出す!

そして、食す!

ああ!

これがパンです!

これが食べ物です!

なるべく、なるべく口になかでゆっくりと咀嚼する。

口の中の違和感を拭うように、何度も口に入れて咀嚼して、飲み込んで。それを繰り返す。

そして、四つ目のパンを食べ終えた時、ようやく正気に戻った。


「助かった。死んだかと思った。うん、ダメだ。私、この世界の食べ物、本当に食べれない。ごめん。無理だ。ごめんなさい。」


もう、土下座する勢いで謝っておく。

本当に無理だ。

あれを食べるなら、その辺の草やキノコを生で食べることを試みる。


「いやいや!んなに謝ることじゃねぇだろ!山奥にいたから山の味以外は食えねぇって事にしとけば 問題ねぇだろ!魚食えねぇ奴とかもいるくれぇだかんな!気にすんな!無理すんな!」

そう言いながら、未だに優しく背中を撫でてくれるウェイン


「そうだぞ。無理なもんを食う必要はねぇ。ただの《好きじゃねぇ味だから食わねぇ》なんてレベルを越えてるからな。そこまでして、食う必要はねぇ。安心していい。」

そう言いながら頭を撫でてくれたアルド。


「ああ。無理するな。さっきの様子じゃ、どう考えても身体を壊す。おひぃさんはこっちの飯は食うな。」

と真剣な顔で言ってくれるトルーノ


「すまん。カナ嬢。あんな事になるなんて、深く考えなかった俺の責任だ。本当にすまん。吐いて苦しいだろ?ツレェだろ?悪かった。すまん。カナ嬢、すまん。」

と何度も謝り、頭を下げたグレン

頭を上げた後も何度も謝罪を口にして私の目から流れる涙を親指て拭いてくれるグレン



「もう大丈夫。みんな、驚かしてごめんなさい。

グレン、私が今後の為にって自分で判断して食べたんだし、もしもの時の対策を建てなかった私が悪い。だから気にしないで。驚かせてごめんなさい。

みんな、助けてくれてありがとう。心配してくれてありがとう。」


そう。

食べることを決めたのは私だからね。

ここまでとは思ってなかったけど。


「おう!もう大丈夫なんだな?カナが無事だったんならそれで良い!」

と安心したと顔に書いてあるウェイン


「ああ。無事で良かった。けど、こんな風にこっちの世界の事に初めて挑戦するってぇ時は、出来れば、俺達が全員揃ってる時に頼みてぇな。」

と苦笑したアルド


「ああ。常にどうなるか、先を考えるのは大切なことだ。また一つ学んだな。」

とこれが日々の積み重ねだと言うような表情で頷くトルーノ


「あー、いや、俺一人で軽く判断すべきじゃ無かったのも確かだ。すまん。次は気を付ける。カナ嬢が無事でよかった。もう泣かせねぇ。」

と眉をハの字にしながら私の頭を撫でるグレン。


この世界の物で初めて挑戦する時は、オッサン達全員が見守るなかで。

という新たなお約束が追加されました。

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