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オッサン達との旅⑨

オッサン達がやっと正気に戻ったので、改めて怪我の確認をしてもらいます。


ウェインは無傷。

他の皆も大きな怪我は無いものの、擦り傷や浅い切り傷、打撲なんかもあるみたい。

オッサン達は

【屁でもねぇ】

【大丈夫だ】

【怪我とも言えねぇよ】

なんて言ってるけど、雑菌が入ったら大変なので、以前に作った回復薬を飲んでもらう。

本当は直接触って治癒魔法で治そうと思ったんだけど、なんでか断られた。


首を必死に振ったオッサン達をみて、

こんな人形があった気がする。でも、オッサン達の顔で首を必死に横に振る人形ってホラーかも。

なんて考えて1人で笑いそうになったのは秘密です。

回復薬はちゃんと効いたみたいで、皆、すっかり傷が治って安心した。

ただ、私が回復薬を作れるってのにはすごく驚いてたけど。

アルドが他の回復薬を作れるように、回復薬用の薬草を優先に教えてくれるって約束してくれた。

皆が無事で本当に良かった。



そして、早速ワイバーンの回収をしてます。

血が辺り一面に散らばっているから

他の魔物が来る前にワイバーンを全て回収して、この場から離れなきゃいけないんだって。


ワイバーンは貴重なので、ほぼ神様鞄に入れる事になった。

今日の夕飯に食べる分はトルーノに渡した拡張鞄に入れてもらう。

そのために今、ワイバーンの一匹をグレンとトルーノが二人で急いで解体している。

残りの二匹は既に神様鞄に仕舞っていて、今はウェインとアルドと周囲の警戒をしている最中だ。


動き疲れたのか、ウェインはスキンヘッドの頭や耳が未だに少し赤い。

やっぱり、私を抱えて走ったんだから、疲れたよね?

怪我が無くてもウェインにも回復薬を飲んでもらった方が良いかな?

ウェインに近づいて声をかける。


「ウェイン、顔がまだ赤いけど大丈夫?私を抱えて走ったから疲れてるよね?座って休んでも大丈夫だよ?回復薬飲む?」


「いや!いや!大丈夫だ!赤くなんかねぇよ!気のせいだ!見間違いだ!勘違いだ!」

なんて顔を左右に振ってるウェイン


いやいや、見間違いはないと思うよ?

頭が赤いし。

でも、なんか必死だし、男のプライドなのかもしれない。深く聞かないでおこう。


「そっか。あ、そうだ!ウェイン!抱えて走ってくれてありがとう。重かっただろうに、あんなに速く走れるなんて、力持ちだね。ウェイン。すごいね!」


本当に凄い。

私は45キロは超えてるからね。

よく考えてみて?

50キロ弱を抱えて走れる?

無理だよね。

現代人には絶対無理。

そう考えると、この世界の冒険者ってすごいよねぇ。

皆マッチョだし、重い武器を振ってるから手も大きくて、手のひらも分厚い。

腕も太くて、余計な脂肪は一切付いてない。

いい身体してる。

見てみたいなぁ。

じっくりと。

皆、外套を着ちゃってるから、よく分からないんだよね。

身体が大きくて、分厚いのは外套の上からでも分かるけど。

なんて頭の中で皆の身体について考えていると


「んにゃ!大したことじゃねーよ!全然!

それに、カナは全然重くねぇぞ!オークよりベアーより軽い!それに!重さより、柔らかいっつーか!あったけーっつーか!ちんまいっつーか!なんつーか!」

と必死に身ぶり手振りで説明しようとするウェイン


その言葉に突っ込みを入れたのは一緒に見張りをしていたアルドだった。


「ウェイン、オークやベアーを例えにだすな。どう考えても、誰が見てもカナちゃんの方が軽い。明らかに重いもんと比べてどうすんだよ。」

と呆れたアルド


更に


「しかもおめぇ、本人を前に柔けぇだの何だのってよく言えんな。恥ずかしくねーの?」

不思議そうに問いかけたのはグレン


「・・・・・・・・アホ」

今日の分のワイバーンを切り取りながら、完全に傷口を抉ったね、トルーノ


煙が出るかのようにボンッと真っ赤になって


「違ぇ!もっと、もっと軽かった!それと、あれだ!変な意味じゃなくだな!俺はただ、女って細っこくて折っちまいそうだって!そう思って!それで!」


と更に必死になったウェイン。


あのさ、そろそろ私も恥ずかしい。

確かに、ウェイン達に比べれば小さいし、鍛えてないから筋肉の重さもないし、軽いかもしれないけど、ここまで話を引っ張られると恥ずかしい!


「分かった!ウェイン、分かったから!ウェインが力持ちで、私を軽く抱えてくれてたのは分かったから!変な意味じゃないのも分かってる!大丈夫!

だから、早くワイバーンを仕舞って、歩こう!早くしないと他の魔物が来ちゃうから!」


未だに必死に首と手を振って、顔を赤くして否定しているウェインだったが、私の言葉を聞いて小さく

【そうか。良かった。ふうっ。】

なんて額の汗を拭いている姿を見て、少しだけ笑ってしまった。


ワイバーンを全て回収し、トルーノの鞄に今日の分のワイバーンを沢山仕舞い、早速出発する。


グレン曰く、

【まだワイバーンの血の臭いが濃いから弱い魔物は来ねぇ。怪我してるだけの時もあるかんな。けどな、既に本体も仕舞ったし、あいつら、あの人間の血の臭いもしてるはずだかんな。そろそろやべぇ。急いだ方がいい】

とのことで、皆で走ってます。

私も自分の足で走ってるよ。

チートがあるし、もともと足は速い方だし。

全然問題なく皆と走れてます。

走りつつ、トルーノとウェインが周りを警戒してくれてるんだけど、異変はないみたい。


やっぱり、さっきの奴等が魔物を呼び寄せる魔法を使ってたみたい。


「なんも来ねぇな。いつも通りだ。問題ねぇ。もう少し行ったら速度落とすか」

と周りを確認しながら告げるウェイン


「了解。にしてもアホだよなぁ。せっかく魔法を使えるようになったんだろーによぉ。あんな馬鹿みてぇな方法で使って死ぬなんてな。」

と哀れむようにグレンが言った


「そりゃ本人にしか分かんねぇだろうな。何か理由があったのかもしれねぇ、楽がしたかっただけかもしれねぇ、天狗になってたのかもしれねぇ。」

と例をあげていくアルド


「理由が何であれ、あんな行為はクズのすることだ」

と嫌悪感を表したトルーノ


目があった、グレンが私に問う


「カナ嬢は分かるか?魔法が使える人間としてよ、何であんなアホな事したのか。」


返事をする為に私も考えてみる。


皆に聞いた話だけど

この世界では魔法が使える人は珍しい。

まず素質が必要だし、もし素質があったとしても、全力で魔法の勉強をしなければならない。

それこそ、筋力を鍛えたり剣を振ったりする時間を全て割いて魔法の鍛練をしなければならない。

そこまでして手に入れた魔法の力。

確かに、他の冒険者より筋力や体力では劣るけど、

【魔法を使える】

というのは一種のブランドだ。

小さな魔法でも遠距離からの足止め。

旅の間の火や水を出す役割として。

凄い魔法使いなら転移魔法や空間魔法が使える。

誰もがパーティに1人入れたいと、必死に勧誘するらしい。

だから、自分は求められる人間だと天狗になったのかも。


私は魔法が使えるけど、そうはならないと思う。

だって、オッサン達は最初から私を【魔法が使える便利な人間】として扱ってないから。

私を魔法を使える人間として頼りにしたり、水を出してくれ、火を出してくれ、アレしてくれ、コレしてくれなんて一言も言わないもの。

寧ろ、周りから狙われないように隠せ。なんて言ってくれるぐらいだし。

それどころか、魔法を使わずに生きていけるように色々な知識を教えてくれてる。

自分達が長年かけて学んできたことを、知ってきたことを惜しげもなく私に教えてくれてる。

これがどんなに凄いことか。

私は仲間に恵まれた。

オッサン達に会えて、本当に良かった。

もし、他の人達だったら、おだてられて頼りにされて自分の力を過信して、好き放題やってたと思う。


そうだ。

多分、仲間にも恵まれなかったんだと思う。

冒険者(仮)の私でさえ分かったんだもの。

他の冒険者達に迷惑がかかることも、森に酷い影響を与えることも。

冒険者なら気づかないはずがない。

なのに止めなかった。

周りの仲間は注意しなかった。

それがあの結果だ。


うん。

深く考えてみて分かったのは、

私は

オッサン達と出会えて幸運だったって事と、

オッサン達を尊敬してるって事と、

オッサン達が大好きだって事だ。


でも、これは言わない。

恥ずかしすぎる。

これを言ったら間違いなく

恥ずかしくて死ねる。

なので、そこは省く。


「やっぱり、過信かな?周りに頼りにされて、おだてられて、自分の力を過信した。それと、周りに止めてくれる人間が居なかったんだと思う。周りに与える影響とか冒険者なら分かるはずだもの。」



私の言葉を聞いて皆、納得した様な顔をして頷いていた。

そんな中、勘の鋭さに定評のあるウェインが爆弾を落とした。


「カナ、何で顔が赤くなってんだ?風邪か?体調わりぃのか?」


心配そうに不思議そうに聞いてくるウェインだが、私はそれどころじゃない!

余計に顔が赤くなる!


他のオッサン達も

【本当だ!顔があけぇぞ!】

【なんだ!どうした!】

【具合悪いか?休むか?】

【担いでいくか?】

【寒いか?暑いか?】

【なんか食うか?】

【あ、便所か?】


なんて言って顔を覗き込んでくる。

前衛コンビはちょっと黙れ!


だぁー!私は今、さっきのウェインより真っ赤になってると思う!

ヤバい!

恥ずかしい!

オッサン達に出会えて良かったとか、

オッサン達を尊敬してるとか、

オッサン達が大好きだとか、

勝手に考えて赤くなってるなんてバレたら

恥ずかしすぎる!

恥ずか死ねる!


どうやって誤魔化すか考えていたら、常識人(このオッサン達内で)のアルドが何かを悟ったのか


「具合が悪いのか?ん?ああ、違うんだな?

多分、走って暑くなったんじゃねぇか?この外套も着なれてねぇし、肌も白いから赤みが強く見えてんだろ。まだ歩けそうか?

ん。じゃあ、もう少し行ったら夜営にしような。もう少し頑張れ。」


頷くしか出来なくなっている私に上手いフォローをしてくれた!

流石です!

オッサン達の中の常識人!

頭をポンポン撫でてくれるオマケ付きだなんて!

素晴らしいよ!アルド!


「んだ、便所じゃねぇのか。」


おい、ウェイン。

お前は・・・

ってアルドに殴られた。

ざまぁ!


「バーカ!便所ならさっき・・・」


グレン!おまえ、

あ、トルーノがぶっ叩いた。

ざまぁ!



職人気質コンビが前衛コンビを説教しながら歩くのを夕暮れを見ながらついていく。


ふふ。

やっぱり、良いなぁ。

オッサン達が元気で、時々ふざけながら、時々真剣に魔物を倒して、一緒に歩いて旅をするの。

楽しい。

もっと、いろんな所に一緒に行きたいな。

最初の頃より強く強く思う。



突然、前衛コンビが振り向いて同時に


『すまん!カナ(嬢)!許してくれ!』


って頭を下げるから、

後ろで職人気質コンビが腕を組んで仁王立ちしてるから、

私は声をあげて笑った。

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