オッサン達との旅⑦
恐怖の食事が終わり、ぐったりしております。
カナです。
グレンと一緒にお片付け。
食器は砂を入れて油分を砂に移し、使った砂は埋めて、川で洗います。
とある樹木から採れる天然の液体石鹸を使って、洗ったら完了です。
布でちゃっちゃか水分を取って片付けます。
グレンは見た目とは違い、割りと細かい男でした。
注意点やチェックも厳しいし、一度に沢山の事を聞くので頭が混乱しちゃいそう。
アルドやトルーノに聞いたことも含めて、教えてもらうことが沢山ありすぎて、頭がパンクしそうです。知恵熱出そう。
片付けも終わり、また歩き出す私とオッサン達。
そしてまた出会うウルフやオーク、ゴブリン。
「なんかあんな。あー、なんだ?んー。」
と眉間に皺を寄せながら目を閉じて立ち止まり、考え出したウェイン。
「だな。こりゃ異常だ。なんかある。」
と頷くグレン
「変だもんな。こんなに沢山の魔物がこっちに向かって来るなんてよ。」
と厳しい顔をしているアルド
「でもよ、俺とウェインが気づける範囲には何もいねぇぞ?人も、魔物も」
と目視での警戒を更に強めるトルーノ
「ねぇ、こんなに魔物が現れるのって変なの?」
確かに、私が草原から街まで歩いて相手をしたオークやベアーに比べると、
短い距離なのに沢山の種類の沢山の魔物が現れてる気がする。
「変だ。集落があるとか、大量発生してるとか、繁殖期だったら増えるが、大体は1日歩いてオーク2体、ウルフなら6匹くらいだ。」
と教えてくれたのは真剣な顔をしたトルーノ
「それがどうだ?まだ午後に入ったばっかりだってーのによ。今日だけで既に一週間分以上の獲物を狩ってらぁ。」
と口調に反して鋭い目付きでウェインの顔を見ているグレン
あれ?
何か変な感じがする。
これ、あれだ。
私が魔法を使ってる時と同じ?
「何か、魔法?誰かが使ってるみたいな。あっちの方。」
とりあえず指差してみる。
「は?魔法?使ってる奴がいんのか?ってか、カナちゃんは魔法使いかどうか分かんのか?」
不思議そうなアルドに聞かれた
「いや、魔法使いかどうかが分かる訳じゃないけど、私が魔法を使ってる時に周りに漏れる魔力みたいな感じのやつ?があっちから流れてる気がする。
誰がどんな魔法を使ってるのかは知らないけど。魔力を留める結界を張ったり、コントロールはしてないみたい。駄々漏れ?」
感覚での話だから、詳しく説明するのは難しい。
分かってもらえたかな?
「カナ!それだ!何か、あっちが変な感じなんだよ!あっちに居るぞ!みてぇなよ!気が引かれる物がある気がするっつーかなんつーか!」
目をクワッと開いて語りだしたウェイン
「おめぇもそう感じるなら、間違いねぇだろーぜ。」
グレンが納得した
「もしそうだとしてよ。魔法使いがそんな風に周囲の気を引いてどうすんだ?」
考え込むアルド
「・・・トレインか?」
怖い表情でトルーノが呟く
オッサン達は皆、顔を青くしてトルーノに注目した。
「でもよ、それだと違和感あるよな?トレインなら誰かが近づいてくるし、一度に大量の魔物が来るはずだろ?
なのに一度に来る数が少ねぇ。が、小出しに回数が多いってところだな。」
皆が感じた疑問を口にしたグレン
皆で考えていると
「餌か?」
勘で生きる男、ウェインが小さく呟いた
「説明しろ。俺たちにも分かるように、出来るだけ言葉を足してだ」
アルドが代表して説明を求めた
「あー、と、小物やらそこそこの大物が小出しに来るだろ?なら、小出しに魔法で惹き付けてんじゃねぇかと。
まず、魔法で小物を惹き付ける。
んで、小物と更に惹き付ける魔法を使って大物を狙う。
寄ってきたのが狙ってる大物じゃねぇなら、自分達に魔法で結界を張る。
そうすれば、餌にされた小物は本命じゃねぇ大物に追われる。
本命じゃねぇ大物は魔法の結界に入れず、小物を追う。こんな感じか?」
ウェインは不安そうにアルドをみてる。
まとめると、
①魔法で弱い魔物を惹き付ける(餌)
②①の魔物(餌)プラス惹き付ける魔法
③②に惹かれた大物を手に入れる
もし、大物が本命じゃなければ、自分達には結界を張り、餌である小物を使って、大物も小物も遠ざける。
これを繰り返す。
ってアホか!?
これ、トレインより最悪じゃない?
だって周りから魔物集めて、餌を追わせて大物を逃がしてんでしょ?
これ、繰り返してたらさ、餌が食い散らかされて、大物だけが集中的に残るんじゃない?
そうなったらどうするの?
皆が通る森なんでしょう?
魔の森にでもする気なの?
何を考えてるの?
魔法使いってアホなの?
なんて言えばいいか分かんない。
オッサン達も頭抱えちゃってるし。
「ああ、カナちゃんにも分かったよな?そうだ。常識がある奴等ならこんな事しねぇ。よっほどの馬鹿か、自信過剰な魔法使いか、ヤバい奴等か。だな。」
私を落ち着かせる為だろう、軽く私の頭を撫でながら、アルドが教えてくれる。
「さて、どうするかだな。馬鹿か自信過剰ならなんとかなるかもしれんがな、ヤバい奴等なら手は出すべきじゃねぇ。魔法使いは厄介だしな。」
とトルーノが話を続けた
「あー、それな。魔法使いはなぁ。どうすりゃ良いのかよく分からねぇかんなぁ。俺、あいつらの相手すんの苦手だしよ。」
と頭をかきむしるグレン
「それに今はカナちゃんがいるからな。下手なものには近寄らねぇ方が良いだろう?休み無しで、向かってくる魔物だけ相手して、そいつらに会わねぇように横を全力で通り抜けるべきじゃねえか?」
と提案したアルド
「んー。カナは会わせたくねぇけどよ、強いやつらじゃねぇと思うぞ?おっかねー感じしねぇし。勘だが。」
とどっちでも良さげなウェイン
オッサン達の視線が私に集まった。
「私は皆に従うよ。森のことも、トレインのことも、魔法使いへの対処法も知らないから。お荷物にしかならないから。皆の指示に従う。」
私の言葉を聞いて、オッサン達は頷き、どのルートを通るか、陣形はどうするか、いざという時には誰が私を連れて走るかを話し合っていく。
私は話を聞きつつも魔力を感じる方に集中しておく。
話し合いがまとまったのか、トルーノが真剣な顔で、腰を曲げて目線を合わせて話しかけてきた
「おひぃさん、今から言うことを覚えてくれ。まず、ルートは一応ここを通る。だが、魔物の強さや数によっちゃあルートを変えつつ走る。先頭はウェインだ。勘でも走れる。間違いない。だから、何があってもウェインの後ろを付いて走れ。そんで、殿はグレンだ。グレンより後ろには絶対に下がるな。守れよ。あと、もし魔法使いが攻撃を仕掛けた場合、アルドが・・・・」
《ギャアアアアス!!》
トルーノの声をかき消して
今までに聞いたことがない生物の
大きな雄叫びが聞こえた。
ドガドガッ!!バギッ!!
沢山の木が倒されていく
遠くからでも見える
バッサバッサ
と羽根を拡げ、3体も飛んでいる
【ワイバーン】
自信過剰が自意識過剰になっておりました。
すみません。