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オッサン達との旅⑥

お肉を鞄に仕舞い、再び歩き出した私達。


歩きながら、お昼の相談をしようと思う。

このタイプの相談はアルドかな。

人が来ないとも限らないから、なるべく周りに聞こえない方が良いよね?


「アルド!お昼の時に料理したいんだけど、火の用意とか教えてもらえる?

あと、人が来ても大丈夫な様に、スープと食パンとオーク肉を焼いたの位にしときたいよね?

出来ればカモフラージュ鞄の中身は減らしたくないから、人が周りに居ないようなら神様鞄から出しても良い?」


斜め後ろにいるアルドに近づき、出来るだけ小声で話しかける。


話を聞いてくれたアルドよりも先に、ウェインが声を上げた


「んだあ?カナ!便所か?」


黙れウェイン。

お前は勘の鋭さの使い方を間違えてる!

私の行動にすぐ気づいたのは凄いけど、内容が違う。

全然違う。しかも声が大きい。

そして思いやりが足りない。

そんな時はそっと休憩を挟んでくれたりすると嬉しいんだよ。


「もしそうだとしても、カナちゃんはお前にだけは相談しねぇよ。お前はもっと女の子の事を学ぶべきじゃねぇか?」

と呆れてるアルド


「ああ。おめぇは本当に分かってねぇな。女の子に便所はねぇだろう?トイレって言わねぇと」

と上から目線のグレン


「そういう意味でもねぇ。大きな声で女の子に用を足しに行くのかどうかを問うなっつー話だ」

と説明を入れたトルーノ


「まだ平気だから。その時になったらアルドに言うから。今すぐその話から離れてもらってもいい?」


冷静に笑顔で問いかけるとオッサン達は黙って頷いた。


「あーあー、ゴホン、カナちゃん、さっきの話だけどな、火の用意や料理に関しては俺よりもグレンに教わってくれ。旅の心得ってやつだかんな。

ナイフの扱いとか使用した道具の洗浄方法とか、火のおこし方から簡易な竈の組み方なんかもグレンが一番詳しい。俺達はなんとなくって程度だ。

あと、食いもんなんだが、まずは周りをウェインとトルーノに確かめさせてからだな。

人が居ねぇなら鞄の件はそれでいい。

食事はなぁ~。見てみねぇと何とも言えねぇんだが、近場に人がいなけりゃ良しって感じか?

基本的に冒険者は食事中のパーティーには近づかねぇんだ。

誰でも食事に集中してぇだろう?だから、ある程度人数がいるパーティーは、2組位に分けて食べる組と警戒する組で時間差で食べる。

けどな~。カナちゃんの作る飯は匂いも良いからなぁ。近くに人がいりゃあ、寄ってくるかもしれん」

と顎をさすりながら、答えてくれたアルド


なるほど。

旅の心得って料理も含まれてるのね?

なら、詳しくはグレンに聞かないと。

匂いかぁ。そうなんだよね。

この世界の食事は《刺激臭》だけど、私が作るご飯は《いい匂い》だもんね。

寄ってくる可能性があるのかぁ。

なるべく早く食べるのを心掛けて、素早く作れるものにしろって事だよね。


アルドがグレンに声をかけて場所を替わっていた。


「アルドから聞いたぞ、カナ嬢。

このパーティーの中で食事は俺の担当だ。一応な。食事っつってもな、仕留めた魔物を切って焼いたり、こっちの世界のパンをかじる程度だかんな。手の込んだものは作れねぇ。

肉がどうしても余った時に干し肉とか塩漬け肉とか極稀に作るぐれぇだ。まぁ、俺達は食うからな。肉が余るなんてまずあり得ねぇ。

他のパーティーの奴等もほぼ同じレベルだと思って良い。

だからな、あんまし手の込んだものは作らねぇ方がいい。

火のおこし方も洗浄方法も着いたら俺がやって見せるからな、それを見て覚えてくれ。」

と異臭を放つパンを見せながら話してくれたグレン。


お願いだから仕舞って。そのパン。仕舞って。



魔物にも出会わずに、アルドに毒草の見分け方を教えてもらいつつ、トルーノに滑りやすい場所の見極め方を教えてもらい、歩き続けた私とオッサン達。


《ぐるぅぅ~》


っと変な音が聞こえた。

音がした方向に顔を向けると


「12時だ。昼だな。」

と当然の様な顔をして歩き出したウェイン

そして、ウェインに続くグレン。


なにごと?

突然どうしたの?

と困惑していると


「あー、おひぃさんは初めてか。

ウェインはな、12時ぴったりに腹が鳴る。寸分の狂いもなく だ。12時直前に飯を食っても12時ぴったりに腹が鳴る。完璧な体内時計を持ってやがる、変な野郎なんだ。

ちなみに、あいつらが向かった方向には川がある。来た時にも寄ったから間違いねぇ。来た道を覚えるのも大切なことだかんな。出来るだけ覚えとけよ?」

と口の端を上げて笑いながらトルーノが教えてくれた。


そして、私を呼ぶ声がした


「カナ嬢ー。火の付け方教えてやるから、こっちに来とけ」

早速、グレンが教えてくれるらしい。


とりあえず、火の付け方を教えてもらって、肉も野菜も出来るだけ細かく切って、火の通りを良くして。

食パンを浸して食べる。

オークの肉は塩コショウで焼くか、醤油か味噌かな。

下手にソースは作らない方が良いよね?

よし!手早く手早く!


グレンに火を起こしてもらい、その方法を見て覚えておく。

火がついたら、料理開始だ!

と気合いを入れていたら


「カナ嬢、ウェインもトルーノも人の気配はしねぇって言ってっからよ、そんなに焦んなくても大丈夫だぜ?あの二人に警戒させときゃ間違いねぇからな。

俺とアルドの二人で手伝うしよ、切るのは任せてくれて良い。カナ嬢は味付けと指示を頼む」

ナイフを構えたグレンと、大きな葉っぱを用意してるアルドがいた。


「この葉っぱは分厚くて丈夫だからな、旅の間はまな板代わりに使われんだ。割とどこにでも生えるし、特に水辺には沢山生えてるからな。覚えといてくれよ?」

と葉っぱの解説をしながら実際に触らせてくれたアルド


この二人が手伝ってくれるなら、手早く出来るかも。


「あの、お肉をミンチにとか簡単には出来ませんよね?」

肉団子でスープとか良いと思うんだけど、時間かかるし面倒だよね?


「んあ?ミンチ?簡単だし、すぐだぞ?やるか?」

とナイフを2本構えたグレン


え?

すぐなの?

大変だと思うんだけど。

やってくれるみたいだし、頼んでみよう。


「じゃあ、グレンはこのお肉を半分は厚さ1センチ位に切って、残りはミンチにしてくれる?」


「了解。任せな。」

すごい勢いでデカイ肉の塊を切り分けていくグレン


ッハ!手つきに見とれてる場合じゃないわ!


「アルドはこっちの野菜を1センチ角に切ってもらっていい?」


「ああ。もちろん。」

素早い手つきで皮を剥いて切っていくアルド


私より上手いよね?

この二人。

早いし。

私いらなくね?

あ、味付け味付け。

そうだった。私は味付けの為にいるんだった。


神様鞄からカモフラージュ鞄に入っているのと同じ調味料を出す。


厚切りオーク肉は味噌焼きに。

ミンチはトマトベースの野菜たっぷりスープに。

もちろん、トマトは私が潰す。


結果、グレンのミンチは超早かった。

アルドが野菜を切り終わる前にミンチが出来てた。

下準備が異様に早く済んだので、あっという間にトマトスープとオークの味噌焼きが出来た。

これに食パンを添えて出来上がりだ!


皆を呼ぼうとしたら、既に全員が肉とスープに注目してた。


おい、オッサン達。

何度も言わせないでよ。

出てるよ、ヨダレ。

オッサン達、ヨダレ。

垂らすなよ?

間違っても自分の分以外には垂らすなよ?

服にも付いてんじゃないの?

大丈夫?


あれ?

しかも見張りいなくない?

大丈夫なの?



「皆、ヨダレ拭いて。今すぐに。ウェイン、周りに人はいないの?大丈夫?」


「あ?あーっと、大丈夫だ!いねぇ!」


って、今思い出した!みたいな反応だったけど、本当に大丈夫なのかい?


「温かいうちに食べようか?誰から食べる?」


言った瞬間に上がる手が4本。

おい、オッサン達、そりゃダメでしょうが。

2組に分けて交代で食べるんだよね?

あ、オッサン達が真剣にジャンケン始めた。

こっちの世界にもジャンケンあるんだ?


「うらぁぁぁぁ!」

あ、ウェインが1人で勝った。

勝利の雄叫びがうるさいです。


「クッソ!」

声のトーンが低いよトルーノ!怖いから!

トルーノのこの顔は貴重な気がする。


あれ?そういえば

何でトルーノが負けたみたいな扱いなの?

ウェインの1人勝ちだったから、残りの3人でジャンケンじゃないの?

謎なんですけど?


「ん?ん~?んん~?あ!ああ!分かった!

トルーノが2回目に参加しなかったのはな、俺が勝ったからだぞ!警戒は俺とトルーノが得意だからな!俺が食うならトルーノは見張り。トルーノが食うなら俺は見張り。そう決まってんだ!」

流石、冴え渡る勘の持ち主ウェイン。

人の顔を見つめるだけで、脳内会議を読み取るとは恐るべし。


結局、ジャンケンはアルドの勝利。


最初はウェインとアルド。それから食べるのが遅いだろう私。

グレンとトルーノは見張りだ。



調理パンの時もそうだった。

けどさ、


「うおおおおおお!!!人生初の女の手料理!!うはあああ!!うめぇぇぇぇ!!!!カナ!これ、すげぇうめぇぇぇぇ!!お前、ガツガツ、本当に、モグモグ、天才、ングング、だな!ズズズッ」

食べながら喋るなよウェイン。

なにこれ?

私が注意するべきなの?

18歳の小娘が?オッサンに?

食いながら喋るなって?

なんだそれ。


助けを求める様にアルドに目線をそらしてみると


「んあ゛~!旨い!まさか俺の人生で女の手料理が食える日が来るなんてなぁ。ほんとあー、これあれだな今後他の店で料理食えんのか?いやそれよりもカナちゃん以外の人間が作る料理が食えるのかってレベルだよな?グレンや俺たちが作る料理なんてもう料理じゃねぇだろう特にウェインが作る気絶しそうな飯なんて今では臭いだけで気絶できるんじゃねぇの?アイツの料理は・・・・」

ダメだ。これ、アルドの方がダメだった。

ぶつぶつ言いながら凄い早さで噛んで飲み込んでる。

すごく怖い。



私は自分の食事に集中する事にした。

今の私に出来るのは、全力で食べ進める。

それだけだ。



__________________


よし、あと少しで食べ終わる。


「うめぇなぁー。あー。うめぇー。んだよ、これ、マジかー。うめぇわー。あー。うめぇー。女の手料理だぜ、夢じゃねぇんだよなー。これ。マジかー。うめぇー。」

語彙無さすぎじゃない?グレン。

うめぇーを繰り返すその姿。普通に怖いわ。


「モグモグ・・・モグモグ・・」

何も語らず、目を見開き、ただひたすら料理を口に運ぶその姿。

ある意味一番怖いよ、トルーノ。


もしかして、今後もこの怖い食事風景が続くの?

スゴく遠慮したいんですけど!?

ねぇ、メシマズなだけじゃなくて、食事自体が大変になりそうなんですけど!?


オッサン達!

勘弁してぇぇぇぇぇ!!!!!

料理の辺りは適当です。

調理方法とか調味料とか詳しく書くと調べるのに時間を取られてしまうので。

※オッサン達が女の手料理を食べるのが初めてだって設定を入れるのを忘れてました。

すみません。

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