オッサン達との旅④
あまりの喜びように、若干引いてます。
カナです。
「初めてだぜ!女の手料理!」
と小躍りしてるウェイン
「うお~!楽しみだな!女の手料理だぜ?夢じゃねぇよな!?」
と頬をつねってるグレン
「この前なんて食堂のババアに【お前らに食わせる飯はねぇ!】ってこと言われたぐらいだかんな!」
と涙ぐんだアルド
「孤児院も野郎ばっかだったからなぁ。生まれて初めてじゃねぇか?」
と思い出す様に語るトルーノ
って何?
《生まれて初めての女の手料理》なの?
母親は?
なんて考えてたら、
「俺達は全員孤児院育ちだぞ?っつーか、この世界の野郎はほとんど孤児院だろうな。」
勘が鋭いウェインが気づいたらしい
「おお、この世界は女が少ねぇからな。異世界がどうかは分からんが、この世界の女は子育てはしねぇ。もし、側に置いたとしても自分で産んだ娘だけだ。それも実際に育てるのは野郎だからな。」
当然のように語るグレン
「女は少ないからな。料理も掃除も洗濯も子育てもしねぇ。ただただ、男達から持て囃され、甘やかされて、貢がれて生きる。だから、男は自分達に従うべきだと疑わねぇし、自分達が優位だっつーのが当然だと思ってる。子育ても孤児院の男の仕事だ。」
アルドが詳しく説明してくれた。
「男は産まれてすぐに孤児院に置いてかれる。たまに自分だけで育てる父親もいるがな。子育ては大変だし、金も稼がなきゃなんねーし。父親一人でガキを育てるのは難しい。それこそ、仲間やダチと一緒に暮らして皆で育てるのは有りだがな。」
と話してくれたのはトルーノ
そうなんだ。
確かに、女の人が少ないんだから当然なのかもしれないけど、ちょっと違和感あるよね?
自分の子供を手離したく無い!って女の人いないのかな?
ってか、下手したら大変なことじゃない?これ。
女の人が少ない=今までの生活-多くの女の人
ってだけだ思ってたけど
女の人が少ないと、男の人が近寄ってくるのが増えたり、強行手段に出る人がいたりすんじゃないの!?
誘拐とか人身売買とか、娼館に売られたりとか!
と顔から血が一気に引いていった。
それに気づいたのは流石。勘が鋭いウェイン。
「おわっ!どうした?カナ、すげぇ顔色がわりぃぞ!?おい!大丈夫か!?」
「マジだ!おい!大丈夫か!?しっかりしろ!カナ嬢!」
驚いた顔で私を覗き込み支えてくれる前衛コンビ
だが、今の私には返事をする余裕がない。
そんな中、私が考えていた事に思い至ったのはアルドだった
「ああ、大丈夫だ。落ち着け。カナちゃん。この世界では女は女王様だ。本人の許可なく手を出すバカはいねぇ。もし、そんな事があれば、周りの男が黙っちゃいねぇ。だから安心して良い。カナちゃんに手を出すバカはいねぇ。もし、万が一、カナちゃんに変な気持ちで近寄る野郎がいたら俺達が殺す。大丈夫だ。ちゃんと守るから。安心して良い。」
頭を撫でながら、目を合わせて。
優しく、子供をあやす様にゆっくりと語りかけてくるアルド
うん。
落ち着いてきた。大丈夫。
皆が側にいてくれるもの。
大丈夫。
けど、もし、私に変な気持ちで近寄る奇特な人が居たら、逃げて。超逃げて。アルドさんの微笑みの向こうで目がマジになってる前衛コンビがいる。
絶対に血の雨が降る。
【カナ(嬢)は俺が守る!】
と何だか父親が男から娘を守るみたいな事を言っちゃってるから。
落ち着いてきた私に更に声がかかる
「それにな、この世界には女が男を相手にする《娼館》ってーのがある。金を出しゃあ、茶を飲んだり、手を触れたり、男女の仲の様に振る舞ってくれる場所だ。寝るのは金やら顔やらで選別されるけどな。自分の意思でそこにいる女は多い。娼館以外の場所にいる女の方が少ねぇくれぇだ。村や町とは段違いに持て囃される世界だかんな。」
と突然娼館の話までぶっこんできたのはトルーノ
「ああ、俺達みたいな顔がコレで金もそんなにねぇ野郎は皆で仲良くお茶までだけどな。もうちっとましな顔で大金がありゃ、寝れる。孤児院に置かれるガキのほとんどが娼館の女が産んだガキだしな。腹にガキがいても持て囃されるし、貢がれるかんな。女にとっちゃ楽園だろうな」
と更に続けたのはグレン。
え?何?
そんな話、して良いの?
私、子供の枠に入ってるんじゃないの?
娼館とか、そんな話、して大丈夫?
振り向いたら般若がいた。
その後ろで怯える大型犬もいた。
「お前ぇら、誰の前で、んな話してくれてんだ?ああ?それはよぉ、女の子に聞かせても良い話だと思ってんのか?ええ?」
アルドさん。げきおこです。
怖いです。怖い~で~す!
目をそらしたら震えてる大型犬と目があった。
勘が鋭い彼に
『怖いよね~』
と同意を得る気持ちで見てたら、なんと大型犬は真っ青になった。
「ち、違うんだ!あのな!えっとな!何となく、一応って気持ちで!そう、男なら一度は!みたいなノリで!一回だけなんだ!本当に!お茶しかしてねぇから!こいつら以外にも沢山の野郎達と一緒に!本当に!お茶しただけだからぁぁぁぁぁ!!!」
と涙目になりながら必死に首を横に振るウェイン。
あ、そっち?
ごめん。そんなつもりじゃ無かった。
鋭い勘が外れちゃったんですね。
ウェインが騒ぎだした
次の瞬間、他の全員がブリキのおもちゃの様にギギギギと変な音を立ててこちらを見た。
何て言えば良いか分かんないんで、取り敢えず、
「そろそろ行こうか。」
全員が膝から崩れ落ちた。
『違う!違うんだ!』
なんて涙目で膝をついた状態で言われても。
ねぇ?どうしろと?
「あー。うん。気にしてないよ?大丈夫。そんな気分の時もあるだろうし。私と一緒の時は分からないように行ってもらえるとありがたいかな。」
と安心させるように微笑んでみる。
が、逆効果だったらしい。
「ちげぇ!本当に!違うから!金巻き上げられただけだから!」
「お茶だけだから!マジで!触ってもいねぇから!」
「目も合わせてもらえてねぇから!」
「2度と行かねぇから!」
っておい。
目も合わせてもらえなかったって悲しすぎるだろう!!
やめてよ!
本当に!
可哀想過ぎるから!
あえて触れなかったけど、さっきの
食堂のババアに言われた一言も
相当、切ないからね!
本当に!どんだけの切なさを抱えて生きてんのよ!
オッサン達!
本当に、オッサン達に幸あれ!
私も微力ながらも、オッサン達の幸せに協力しようと改めて心に誓いました まる
その後、涙目で弁解を続けるオッサン達に
気にしてない。
大丈夫。
分かってる。
を繰り返し、何とか立ち直らせる事に成功しました。
オークと戦うより疲れました。
ふぅ。
オッサン達はカナが作ったパン『カナの手作りパン』を既に食べてますが、女性に目の前で作ってもらえるのは初めてです。
【自分達の為に作ってくれる姿まで見れるなんて!】
とテンションが上がっていたのです。
ちなみに。
食堂もムサイおっさんが作ってるのが通常運転です。