第一章ー(1)
ジリリリーン。
アラームの音がうるさい。
寝ぼけ眼で目覚まし時計をとり、時間を見る。
「やっべ、遅刻する。」
時計が示しているのは8時30分、自分が通っている学校の始業時間は8時40分。
そして、全力疾走しても自宅から学校まで、8分はかかる。
慌てて準備を終えると、学校へ向かって走り出した。
ギリギリで教室にすべりこんだ。
「あ、あぶね・・・。」
「お前・・・。また寝坊か。いくらなんでも3日間連続寝坊だと、もう「初陣」の疲れとは言い張ることはできないし・・・危なかったな。」
こう言ってきたのはクラスメイトの工藤 岳人。
黒髪短髪で精悍な顔にごつい体をしている。
さて、「初陣」とは何か。
これを説明するには、西暦2054年まで時を戻す必要がある。
西暦2000年代から、異常気象に関する警鐘が度々鳴らされてきたが、それは年が経つ程に悪化していき、
その結果西暦2054年「大嵐」(グランド・ストーム)と呼ばれる全世界的な同時災害が起こった。
ある所では大噴火が起こり、ある所では大地震が起こった。
ただ、最も多かった災害が超巨大台風の襲来だったことから、この災害は「大嵐」と呼ばれている。
これにより「大嵐」前に1億人程度いた日本の人口は4000万人程度に、全世界の人口は3分の1になった。そういった所からも災害の激しさは窺えよう。
そして、この「大嵐」発生後人類に変化があった。
稀に異能とも言うべき能力が「大嵐」後に発現した人々が現れたのだ。能力は人それぞれだが、それ程圧倒的に強い能力はなく、戦闘向きの能力の最高峰でも生身で重装備の1大隊とやりあえる程度のものだった。
また、そういった変質をししてしまったのは人類だけではなかった。
野生動物、例えば、哺乳類、昆虫類、魚類などもそれぞれ変化を遂げ、人類の脅威となった。
そういった変化をした生物をまとめて、魔獣と呼ぶ。
この魔獣に対する対策が各国にせまられた。
そこで、各国政府は現れた直後から所在を探し、あらかた居場所を把握していた異能者に協力を要請し、
要請に応じた人たちに「冒険者」と呼び、実力に応じたライセンスを与えた。
ただし、異能者のみが「冒険者」になったのではなく、一部の自衛官なども「冒険者」となった。当初は、「冒険者」のみで各地に発生していた魔獣に対処できないと国が考えていたために自衛隊との連携を考えたための処置だと言われている。しかし、現在は「冒険者」のみで魔獣に対応しているが・・・。
この持っているライセンスに応じて国から給付金が定期的に支払われ、さらに魔獣を倒すごとにある程度の報奨金が支払われる。
ライセンスはD0-SS1までわかれている。
国からお金をもらう為、公務員的立ち位置とも言える。
ともあれ、そういう訳で人類は魔獣の危機に対応した。
ただし、ライセンスをもらう、つまり冒険者になることはメリットだけでなくデメリットもある。
それは、戦時、兵士として召集されるという事である。
各国は冒険者養成学校(adventures training school以下略称ATS)を各地に開設し、異能者のみならず一般人も冒険者になっていった。
今、俺もこのATSの一つに所属している。
日本以外の国の冒険者はたいてい軍属だけれども・・・。
そして、ATSの生徒がはじめて魔獣と戦うことを「初陣」という。
「ま、間に合ったからセーフだよ、セーフ。」
そんなことを言っている内に、先生が教室に入ってきた。