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ジャングルラビット  作者: 時雨れの
一章
3/45

3

 夫の単身赴任にくっついて、即行渡米ってどうよ?

 …や、別に渡米するのはかまわない。母親がいなきゃ生活できないって程、お子様じゃねぇしな。だけど、それで、なんで俺まで引っ越ししなきゃなんねぇわけ?


「だって、なんだか心配なのよ。喜一ならともかく、あんたはどこか抜けてるし」

「抜けてねぇよ。どっちかっつうと俺は喜一の金銭感覚の方が心配だ」

「だからこの学校に編入しちゃえばいいじゃない。近くに下宿もあるし、ここなら喜一の職場にも近いから安心」

「おい、話聞けよ」

「それにこの下宿、亜紀さんもお世話になったことあるんだって。頑張って、廉次!」

「おい」


 というわけで、青森からはるばる東京まで上京。

 三人家族の中で、母親と兄が器用で要領が良いのに対し、次男で末っ子の俺は甘えたり助けてもらうための要領は良いものの、自分自身はそれ程器用じゃない。母はそれがとても心配だったらしい。

 …確かに時間はかかるし、あまり上手くはないけど、時間をかければそれなりにできるんだけどな…。

 まぁ、せっかく再び女の幸せを手に入れた母親に、自分のことで無駄に心配かけさせるよりは、おとなしく転校でもしてやろう、近所の年寄りどもの詮索の目もうざったいし。そう思って、あまり好きではない勉強をそこそこ必死にやって、ようやくできた高校の友達ともさよならした。

 だが、しかし。

 いざとなるとやはり…………すっげぇ面倒。

 引っ越しとか転校って、ちょーエネルギー要ると思う。

(喜一はいいよなー)

 兄の喜一は工業高校を去年卒業し、今は多摩だか八王子だかの工場で働いている。

 大きな荷物はまとめて既に下宿先に送ってあるから、持って歩く荷物はほとんどないが、下宿に着いたら荷解きしなきゃならないし、挨拶回りとか…面倒くさい。

 それに、本当は、やっぱりちょっと緊張している。

 知らない場所、知らない人たち。

 顔見知りが1人もいない環境って初めてだ。

 今まで苦労知らずで過ごしてきた自覚はある。それなだけに不安だ。

(ストレスで胃に穴あいたら、地元に戻れっかなー…)

 無視、とかされませんように。

 廉次はまた小さくため息を吐くと、まぶたを降ろした。

 これ以上、見当もつかない先のことで気を揉むのはやめよう。どうせ、なるようにしかならないんだから。

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