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引っ越し
八戸から東京行きの新幹線の中。
運良く窓際の席。
景色に顔を向けてはいるが、実際見ているのは窓に映る自分の顔。別にナルシストだとかそういうのではなく、高速で過ぎ去っていく景色なんて、まともに見てたら酔ってしまう。といって前の座席をそう何時間も見ていられるわけもなく。
窓際で良かったと、青柳廉次は思った。
抽象画よりも曖昧な輪郭のない景色を見るともなしに見つつ、もやもやとした気持ちを持て余して小さく吐息を漏らした。
まさか高校二年生になって、人生初の転校をするはめになるとは。
トンネルに入り、窓ガラスに冴えない顔の己がくっきりと浮かんだ。母親にそっくり!と親戚一同から太鼓判を押される顔は、造作は整っているが地味でこれといった特徴がない。ブサイク呼ばわりされることはないが、決してモテるわけでもない、平穏な学生生活を約束してくれる実に気のいい顔面だ。
(小学生ならともかくなぁ)