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短編集

シロのシシャ

作者: 巫 夏希

 それほど、時代が離れていない未来。

 世界には死の概念が薄れつつあるとされ、世界に白い服の使者を遣わせた。

 人々に死を受け入れさせるために――。


「……寒い、寒い。なんでったって協会はスーツしか支給してくれないんだろうなあ」

 少年は呟いた。白のスーツを着る人間。

 世界にも適応力はあるらしく、使者が現れて十年もしたら使者は厄介者扱いされ近付くこともない。使者にとっては人間と関わる機会が少なくなるので嬉しいのだろう。

(……めんどくさいからさっさと行ってしまおう)

 少年は歩いた。サクサクと雪を踏むときに音が出る。辺りを見れば人がそそくさと中へ入っていった。君達は暇でいいなあ、とでも呟きたくなったが少年は無視して村の奥地へと向かった。

「ここか……」

 そこは古い木造建築だった。この時代石造建築(レンガのように石を組み上げたようなスタイルだ)が流行りであるのにそこはまだ木造建築だったので少年は少し珍しく思った。

「まあ、目立つっちゃ目立つなあ」

 少年は頭を掻いて、中へ入った。

 中には薄汚れた服を着たひとりの少女がいた。

 少女は笑って呟いた。

「私を殺しに来たの?」

「知っているのか」

「うん、私の家お父さんもお母さんも仕事出来なくなっちゃったの。だから死ぬしかないの」

「死ぬのは怖くないかい?」

「うん」少女は首肯した。「だってお父さんが死んでも天使がラッパを吹いて私たちを歓迎してくれる、って。天国には美味しい食べ物がいっぱい食べれて綺麗なお洋服もきれるんだって!」

 少女の考えに、少年は思わず頭を抱えてしまいそうになった。確かに天国は素晴らしいところかもしれない。しかし、永遠に逃げられないところを除いては現世と変わりはないから、そんなものは幻想に過ぎない。

 つまり今の彼女はその幻想というイメージを元に自ら死を選んでいる、それは如何なものだろうか。

「……そうだね」

 しかし、彼はそれを否定することは出来ない。

 否定することは、彼を否定すると同じ。

 彼が彼として居なくなると同じなのだ。

 だから、彼は頷いて、

「……痛いのは一瞬だから」

 彼女の首を切り裂いた。

 彼らは――“白い死神”と呼ばれている。

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