あとがき
昨年の夏に始まった猟闇師シリーズも、もう第六弾になります。途中、様々な試行錯誤を経た結果、今回は今までの作品の中でも最も荒唐無稽な話となりました。
まず、一般人がアイドルと接点を持っている。この時点で、既に漫画の世界です。加えて、アイドル達もどこかリアリティが足りないというか……あえて、一昔前の少女漫画から飛び出して来たような性格の人間を集めました。
一方、ホラーな要素としては、とにかく見た目に気持ち悪いものを出そうと考えました。今までの作品には殺人が絡む陰鬱で暗い話が多かったのですが、今回、それはカットです。殺人を話のメインに据えてしまうと、どうしてもそちらに読者の視点が行ってしまうようで、肝心のホラー部分に目が向かないようですので……。
そもそもホラーの謎解きとは、呪いや祟りといった超常現象に対し、なんとか理由をつけようとする部分から始まるはずです。この登場人物は、なぜこうも恐ろしい目に遭うのだろう。この家に入ると、どうして呪われてしまうのだろう。そういった疑問から、実は過去に何かあったのではないかとか、何か呪いのアイテムのような物が家にあるのではないかといった推理をしてゆくわけです。
しかし、そこに殺人が絡んでしまうと、読者の視点は犯人探しのみに集中してしまいます。こうなると、もう呪いなんてどうでもよく、推理小説として優れているか否かになってしまうわけですね。凶器がナイフか藁人形かの差異だけで、後の要素は全部オマケになってしまうというわけです。
正直な話、これは私の書きたいホラーではありません。猟奇殺人を主軸に据えた話も過去には書きましたが、本気で書くなら単なるサイコサスペンスにした方がまとまりが良くリアリティもあります。そういった諸々の事情から、今回はとにかくぶっ飛んだ話にしてやろうという考えの下、気がつけば自分でも滅茶苦茶な話として完成させてしまいました。
最終決戦に登場した蟲の化け物。モンスター物としてはかなり安っぽい部類ですが、たまにはこんなのも良いでしょう。第四弾も第五弾も陰鬱なバッドエンドだったので、ここらで少しガス抜きです。まあ、少々抜き過ぎて、今までの世界観を破壊していないかが心配なところですが……。
下手すると、今回の話は単なる特撮作品としても成立しそうな気がします。それこそ、少しテイストをライトにするだけで、≪仮面○イダー●●● 第▲話 恐怖の毒サソリ男!!≫という話にしてもOKな感じです。
作者の息抜きがてら、とにかくB級臭さ満載で作った第六弾。こんなものでも、少しは楽しんでいただければ幸いです。今後は長谷川雪乃の事件によって得た芸能界とのパイプに関しても、作中で生かせれば生かしてゆきたいところです。
2011年 1月5日(水) 雷紋寺 音弥