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真理の探求者  作者: 大神
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第十六話 馬?

さて、1時間の予定が倍の2時間も寝てしまった俺は、

慌てて起き上がって外に出る。

みんなは俺が物凄い事をしたというのは理解しているらしく、

疲れているならと休ませてくれたようだ。

とりあえず魔力が回復し切っていなかったため、リアに魔力を分けてもらう。

それを見てアリシアが驚いていた。

どうやら精霊から人間への魔力の譲渡はかなりの適正が無いと出来ないらしい。

やはりリアと俺は相性が良かったんだなあ、と少し嬉しくなる。


で、俺の前にはさっきとは違う魔法陣。

これも大きな紙に書いてある。

大きさは先ほどと同じ1m。

というか、これ以上大きくするのは実用性が無い。


これもこの世界では難しい類の魔術だが、

さっきとは違って出来ない訳では無いので大丈夫だろう。

俺は両手を広げて魔力を一気に放出する。

2時間寝たのと、リアの魔力を分けて貰ったので魔力は全快。

しかも先ほどの魔術の行使のおかげか、

魔力量やら制御技能やらが軒並み上昇していた。

楽に使えるようになるまでは錬金術の実験だけで鍛えられるかも知れない。


で、その全快した、3000を超える魔力。それを、全て魔法につぎ込む。

そして、詠唱を開始。


―運命によって導かれし我が同胞よ―


―我が従者となり、我が友人とならんが者―


―我が呼び声に応え、此処へと来たれ―


―新藤夕の名に置いて―


「使い魔、召喚!」


詠唱を終えて叫ぶと、

俺の目の前に広げられた魔法陣の書かれた紙が、

盛大な魔力光を発し、輝く。

呼び出すのはなるべく強く、知性ある者。

馬のイメージに合う、使い魔。


俺の脳裏に、召喚に応えた魔獣の名が閃く。


「来い!アルフ!レルフ!」


一際大きな光が爆発のように膨れ上がり、

光が収まると、二体の魔獣が居た。


………馬?


いや、確かに馬を召喚した訳じゃない。

ただ、馬車を引く能力がある者を呼んだ。

しかし俺の前に居るのは、そんな目的で召喚する者では絶対に無いだろう。


俺の目の前に居るのは、馬というより狼。

その大きさはそこらの馬の非では無いが。

後で馬車の牽引用のバーを伸ばしておかないと。

その体躯は、3mはあるであろう。

体は綺麗な白銀の毛に覆われており、魔力が通っているようだ。

魔法には強そう。毛も柔らかく丈夫で、おそらくなまくらの刃なら一本すら切れない。

その体はそれぞれ紅い炎と蒼い炎に覆われている。

触ってみたが、熱くない。

理屈は分からないが、ダメージを与える相手を選べるようだ。

蒼い方がアルフ。紅い方がレルフ。

よく見ると瞳の色が炎の色と同色だ。アルフが蒼でレルフが紅。

両方ともメス。

信じられないが、双子のクレセントウルフだ。


…なぜ、幻想種が、それも二体もこんなとこに?


「「くぅ〜」」


とりあえず二体の頭を撫でてやると、

気持ちよさそうに鳴いて擦り寄ってくる。

おお、触り心地いいな。もふもふしてる。リアが好きそうな感触だ。

使い魔として召喚したので当然なのだが、やけに懐かれている。

あー、また才能か。こいつら呼んだのは…出会いSか。

もうそろそろ打ち止めだと思ってたんだけどなあ。

…神様、ちょっと自重して下さい。

いや、神へと至る者の使い魔としてはこの上無く最上だ。

…だが、馬車引かせるために呼び出すもんじゃないだろうこれ。

3000もの大魔力ぶち込んだ俺も俺だが。


「…ユウ、お前が規格外だというのはよーく分かった。

 分かったから、少し自重してくれ」


いや、レイアさん、これは俺の意図じゃない。

だからそんな呆れを通り越して異常者を見るような目で見ないでー。

というか、こいつらに馬車引かせていいんだろうか。

プライドとか幻想種の誇りとか馬とは違うとか。


「「あおんっ!」」


心配になって聞いてみると、任せとけ。という頼もしい返事が返ってきた。

頼られるのが純粋に嬉しいらしいが、

こんな頼り方でいいのだろうかと疑問に思う。

思うが、今更他のを呼び出すわけにはいかないので納得しておこう。


そうそう、説明がまだだったが、先ほど使ったのは使い魔召喚魔法。

この世界では広く知られている魔法だが、

使える者は割りと少ない。

まず、使い魔契約だけならそれなりの実力があれば出来る。

それでも相応の魔法制御能力や魔力が必要なのだが。

しかし、召喚系の魔法はかなりの技術と魔力、魔法への理解を必要とする。

そのため、使える者はかなり上位の魔導師だけなのだ。

俺?俺は才能でカバー。

そもそも魔法は毎日のように使っているため、成長が早い。


膨大な魔力と綿密な術式制御によって発動した召喚魔法は、

術者の魔力量、魔力に宿る性質、魔法技術、魔法への理解、

術者の魂の格、術者の召喚目的、契約内容、

そういった様々な要素に応じた対象を探し、

そして対象がそれに応え、それを術者の下へと呼び出すものだ。

つまり、俺が彼女らを使い魔にするに相応しい、

と魔法と彼女ら自信が判断し、納得したため、彼女らが召喚されてきたのだ。

…正直、出会いSで捻じ曲げられたような気しかしない。


ぶっつけ本番ではあったが、流石に召喚契約系の魔法を、

そうそうポンポン練習するわけにも行かない。

術式は念には念を入れて慎重に組み上げたし、

そもそも先ほどの錬金と同じで実験的な意味合いもあった。

取り敢えず、問題なく成功して良かったと言えるだろう。


まあ、それはいい。

強力な仲間が手に入ったのも事実だ。

しかし、彼らはクレセントウルフ。

竜種と並ぶ幻想種だ。

双子だったため二匹まとめて呼ばれたのだろうが、流石に目立つ。

この世界では狼系の魔獣に馬車を引かせる事もあるので、

せめて炎を隠せたら珍しい綺麗な狼、で誤魔化せるんだが…


「なあ、二人とも。炎出してると目立つから、どうにかして隠せないか?」


俺がそう聞くと、「わふっ」と鳴いて炎を収めた。

…意外に簡単に出来るんだな。

言ってみるものだ。

しかし毛並みが綺麗だし、分かる人には分かるだろう。

…認識阻害の刻印を刻んだ首輪でも付けてみるか?

二匹に聞くと、「やった!」と喜んでくれた。

首輪=プレゼントらしい。…お前らほんとに狼か?犬じゃないよな?

あと、流石に幻想種の生態なんてそうそう載ってる本も無い。

つまり…こいつら何食うんだ?


「…ふむ、お前らって雑食?」


聞いてみると、やはり基本は肉食らしい。

魚などでもいいが、動物の肉の方が好き。

野菜や果物も食べるが、主食では無い。

…との事。


「成る程。まあそれならなんとかなるか」


毒が無ければ何でもいいらしいので、

俺達と同じような基準で構わないだろう。

とりあえず二匹に馬車を繋ぎ、いざとなれば自分達で外せるようにする。

魔法式で。

外す意思を持って魔力を込めれば外れる事、

いざとなれば馬車は捨てても構わない事などを説明しておく。

任された馬車を捨てるのに抵抗がある様子だったが、

馬車は幾らでも作れるが二匹の代えは居ないという事を説明すると、納得してくれた。


「「わふっ」」


「こら、くすぐったいって」


二匹が寄ってきて顔を舐めてくる。くすぐったいが、悪い気はしない。

ちゃんと仲間として扱って貰えるのが嬉しかったらしい。

そうか、中には使い魔を道具としか見ない術者も居るらしいからなあ。

まあクレセントウルフ相手にそんな扱いや心配をする奴は少ないだろうけど。

下手したら自分が焼き殺される。

使い魔である以上主人に手を出す事は出来ないが、

術者と使い魔の間に力の差があり過ぎると、強制が利かない事もある。

使い魔召喚魔法が普及していない理由の一つでもある。


「…のう、ユウ?ちょっといいかの?」


リアが声をかけて来たので、

二匹にもみんなを紹介しておく。

仲間だから傷つけないように、と。

女性陣が二匹のもふもふ具合に蕩けていたが、

はっとしたように気を取り直したリアが再度声をかけて来た。


「…のう、ユウ?お主、こやつらの言葉が分かるのか?」


え?んなもん分かるわけ…


「「くうん?(どうしたの?)」」


……………アレ?


いや、いやいやいや、ちょっと待て!

確かにクレセントウルフはある程度の知性はある。

多少なら人語を理解出来る程の知性が。

…しかし、さっきまでしていた会話は人間相手と変わらない。

俺は彼女らの「わふっ」とか「あう〜ん」とかいう鳴き声の意味を正確に理解し、

彼女らも俺が話した言葉の意味を完全に理解していた。

よくペット好きがいうような、なんとなく相手の気持ちが分かるとかじゃない。

完全な意思疎通。…なぜに?


…思考10秒。


…言語の加護か?いや、そこらの動物と話せた覚えは無い。

…と、なれば、だ。

使い魔として契約した事で言語の加護の彼女らに対する効果が上がった、

もしくは契約によって彼女らが言語の加護の範囲に入った?

元々必要な知性はある。

…うん、そうとしか考えられない。


…そうか、これも神のシナリオか。


「…ユウ、自重してくれ頼む。私達が惨めな気持ちになる」


レイアさん、そんな悟りきったような表情で言われても。

他の皆も呆れたように頷かないでくれ。

こればっかりは俺のせいじゃないぞ。多分。

…ハァ。どうすりゃいいんだ?これ。


「「わふぅ〜ん♪(ご主人様〜♪)」」


「…ユウ、幻想種のメスにもモテるのか。ある意味流石じゃな」


勘弁して下さい…


神の本気の悪戯に項垂れるも、もはやどうにもならない。

きっと俺はこれから何千年、こういう事を繰り返すのだろう。

………待てよ?

契約した使い魔って、契約した時点でその命を主人に同期させるはずだ。

簡単に言えば、主人が死ななければ使い魔も死なない。

…こいつらも、永遠を手に入れた?

…こいつらと、永遠に一緒?


「「わふん♪(うん♪)」」


…マジか。


永劫を共にする仲間が増えた事。

それは喜ばしい事なのか。

それとも、彼女らにも業を背負わせる事になってしまうのか。


「「わふぅ〜♪(ご主人様ぁ〜♪)」」


―すりすり―


…今は、新しい仲間が増えた事を素直に喜ぼう。

考えるのが、少し億劫だ。




探求者は、馬?を手に入れた。






アルフとレルフ登場~。ペット欲しかったんで出してみました。

いや、幻想種をペット扱いという事で主人公の凄さを出そうかと。

ちなみに、竜種やクレセントウルフ以外にも幻想種は何種類か居ます。

たまにバトるかも知れません。


というわけで、これでメンバー全員集合。

速すぎる気もしますが、

ゴタゴタやシリアスは仲間になってからというRPG仕様で。


それでは、また次回お会いしましょう。

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