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真理の探求者  作者: 大神
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第十四話 想い

さて、レイアとアリシアが仲間になってから10日。

俺とアリシアは図書館に入り浸り、

俺が取られないか心配なのか、リアが時々様子を見に来る。

三人は資金稼ぎに奔走し、気が付けば予定していた10日が経っていた。


上記以外であった事といえば、

リアとデートした事と、アリシアに絵を描かせた事、

チームプレイの練習も兼ねて五人で討伐依頼をこなした事か。


まず、アリシアの絵だが。

…まあ、凄かった、としか言えない。

いや、描かれているものが何かは分かる。

原型を留めたまま、しかし超絶と言ってもいいだろうあのセンスはある意味凄い。

感性が俺達とは違うんだろうな、という事にしておく。

神様の手帳にわざわざ画伯と書かれるだけの事はある。

成る程、あれもある意味才能だ。


次に、討伐依頼。

少し南に下った所にある村の脇の森に、

オークが集団で出没しているとの事。

問題が起きるまではスルーしていたのだが、

最近になって田畑を荒らしているらしい。

先日は軽傷ではあるが怪我人も出た。

そのため、討伐依頼が出たのだ。

以前からオークが住んでいるのは確認されていたのだが、

森がかなり深い上に広い。

そのため問題が起きるまでは放置されていたのだ。


ちなみに、オークというのは皮膚が緑がかった巨人族。

大体3〜5mほどの大きさで、強い物は軽く木々を薙ぎ倒す怪力を持っている。

たまに知性を持って人間に混じり生活をしている者も居るが、

その多くは知性は少なく、森などで原始的な集落を作って生活している。

凶暴な者も多々居り、特に繁殖期になると凶暴化したオークによって、

村や田畑に被害が出る事も多い。

今回のケースもそういった事が原因のようだ。


完全な殲滅の必要はなく、

凶暴化している者だけを倒して、オークが村に出てこないようにしてくれ、

というのが今回の依頼。

この世界ではよくある依頼である。


…で、結果から言えば楽だった。

アリシアとリアが居れば、周りの自然や勘が敵の位置を教えてくれる。

どういう攻撃がどこから来るのかも丸分かり。

しかも相手には虚を加えるような知性は無い。

暴力に任せた力任せの棍棒による攻撃は、

なんとおっさんが容易く受け止め、返す刃で切り倒していた。

オークの怪力によって振り下ろされた棍棒を受け止め、

さらには硬く厚い皮膚を斧で真っ二つ。大した怪力だ。

流石に二桁も倒せばしんどそうにしていたが。


で、他の連中はと言えば、

アリシアは全員の疲労回復と、身体強化魔法等によるサポート。

リアは精霊の能力で敵の位置を特定して片っ端から闇で消し飛ばし。

魔法を纏わせた刃なら硬い皮膚も斬れると知っていたレイアは、

集団で固まっている所へ突撃して敵陣の中央で乱舞。

魔法剣使って刺すわ斬るわの大立ち回りを披露し、敵を葬った。

しかも今の俺では反応出来ないであろう程の高速で。

素であれだけの才能があるのだから大したものだ。


で、アリシアによる回復魔法のおかげで疲れもすぐに取れ、

離れていた奴はリアの弓の練習台になった。

闇の魔法を掛けた弓は、敵に命中すると闇が膨れ上がり、

命中部分の周囲を飲み込み消し去った。直径1mほど。

物凄い凶悪な攻撃である。さすがのみんなも冷や汗を垂らしていた。

遠距離ならリアの右に出る者は居ないな。

そう考えるとこのパーティーはバランスも良く理想的だ。

やっぱり出会いSは伊達じゃないな。


5000リラと結構な高報酬だったので、街に戻ってから景気付けに飲みに行った。

アリシアとレイアもこっちではもう成人なので、普通に酒は飲める。

…飲めるのと酔わないのとは別の話だが。


アリシアは意外に長くもったのだが、

レイアが瞬殺だった。

おっさんは流石に慣れているらしく、美味そうに豪快に飲んでいた。

リアも精霊なだけあって酒には強いらしかったが、

俺達に付き合って飲んでいる内に酔いが回って寝てしまった。

ちなみに、俺は割りと酒に強い。

前世でもよく研究者仲間や後見人のおじさんと飲んでいたし、

こっちに来てからも何度も飲んでいるので耐性が上がっている。


…というか、森で色々採って食っている内に、

薬物に対する耐性が付いた。

人体に影響を及ぼす程の量を摂取したわけじゃ無いが、

それでもそういう成分が多少なりとも含まれたものというのは多い。

ちょっとでも摂取すればあとは才能で勝手に耐性が付く。

おかげで、ちょっとやそっとの毒や薬じゃ影響は受けない。

そのため魔法薬といった類の物が効きにくい。魔法あるから関係ないが。

閑話休題。


とりあえず今回の依頼の一番の成果は、

みんなとの連帯感とか親密さが増した事だろうか。

当初危惧していた、飲んで暴走するやつは居なかったし、

たまにはこうして賑やかに飲むのもいいかも知れないな。




で、俺にとっては最重要のリアとのデート。

折角なので丸一日デートは次の街に着いてからにしよう、という事になり。

その代わりとして、一昨日の昼に街に繰り出した。

二人きりで街を回り、露天を巡り、公園でのんびりと過ごす。

一番印象的だったのは、やはりリアの笑顔だろうか。

正直、本気で「生きてて良かった!」と思った。

あんな超絶美少女と二人きりでデート。

これ程自慢出来る事もそうそう無い。

…なんか日に日に愛が深まっている気がするのは…気のせいじゃないな、うん。

あ、一応ちゃんとキスをし直した。

以下は、その時の1コマ。






「ユウ、わらわはずっと一人じゃった。

 じゃが、ユウと出会ってからは幸せで溢れておる」


そう語るリアの顔は本当に嬉しそうで、

しかし少し寂しそうでもあった。

いや、怖がっている、と言うべきか。

俺にはリアがそんな表情をする理由が分からず、

何を怖がってるんだ?と直接聞いてみた。


「…ユウは、いつか居なくなってしまうのか?」


そう問いかける彼女の顔は今にも泣き出しそうだった。

…そうか。人の命は限りあるもの。

確かに俺は不老ではあるが、不死ではない。

死ぬ気は無いが、いつか居なくなるかもしれないという恐怖があるのだろう。

その瞬間はそう、思ったのだが。


「神になれば、ユウは遠くへ行ってしまうのか?」


…俺は自分を殴りたくなった。

そうだ。俺は常々、「神へと至る」と言ってきた。

管理者という存在についてもリアには話してある。

だからこそ、俺が真理へを知り、神へと至れば。

どこかへ行ってしまう様な、管理者の居るような、

彼女には手の届かない所へ行ってしまうような、

そんな恐怖があったのだそうだ。

少し、浅慮だったかも知れない。

そうだ、普段の俺の言動は。

神を目指すその姿勢は、

いつか居なくなると言っているようなものだったのかも知れない。


俺はリアを抱きしめて、心配する事は無いと語りかける。

柔らかい髪を梳くように撫で、

出来るだけ彼女が安心出来るように。

俺は別に、神になりたい訳じゃない。

この世界も、リアとの暮らしも、気に入っているし望んでいる。

俺は神の叡智を知りたいだけ。

文化の果てにそこへ辿り着く様を見てみたい、それだけだ。

決して、管理者や神になりたい訳じゃない。


俺がそのことを伝えると、

彼女はやっと安心したような笑顔を浮かべてくれた。


「それに、さ。改めて言うが、俺はリアが好きなんだよ」


一目惚れなんて自分がするとは思っても居なかったが。

実際にしてみれば、確かにこれはどうしようもないものだ。

俺は、最初からリアが好きだった。

だから、リアを置いていくなんて事は絶対に無い。


それを聞いた彼女は、少しの涙を零しながら、

嬉しそうに笑ってくれた。

そして、彼女もその思いを伝えてくる。


「ユウは一目惚れだったと言うが、わらわも似た様なものだったんじゃぞ?」


一目見て、好感を持った。

少し話して、好意を持った。

そんなものとは無縁だと思っていた。

最初は自分の感情に戸惑い、冗談のような態度で好意を伝えていた。

しかし、そうしているのが凄く自然な気がして。しっくり来る気がして。

それからは、止まらなかった。

一言話す度に。一挙一動する度に。


「ユウの事が、どんどん好きになって行く。何度も何度も恋をする。

 好きという気持ちが積み重なって、それでも、止まらないんじゃ…」


共に過ごす時間は今までのどんな時間より素敵で、

心地よく、満ち足りたものだった。

だからこそ、想いが止まらない。

限界を超えてもなお積み重なっていく。

このままどこまでも好きになれる、そう思えるほど。


「リア…」


「ユウ…んんっ!?…んむ…」


愛おしくて堪らなかった。

俺と同じように思っていてくれた。

なぜ自分がここまで彼女を好きになったのかは分からない。

だが、恋は理屈ではないと言うが、成る程そういうものなのだろう、と思う。

ただ相手の事が愛おしくて堪らず。

彼女がそこに確かに存在する事を確かめるように抱きしめ、

絶対に離すまいと誓うようにキスをした。


急に無理矢理唇を奪われた彼女は、

一瞬驚いた顔をして、しかしすぐに幸せそうな表情でそれを受け入れる。

蕩けるような甘く長いキスを交わし、

一度息継ぎのために唇を離すと、今度は彼女から求めてきた。


そうして暫くの間、

彼女に愛を伝えるのに夢中になっていた。




…時間を思考の彼方に追いやってどれ程経ったのだろうか。

いくら時間的にも位置的にも見ている人は居ないとはいえ、

公園の片隅で熱いキスをした事に流石に赤くなる。

それでも離れたくないと思えるあたり、

やはり俺は一生彼女の傍を離れられないだろう。


「…本当に、信じられない程急じゃったな」


そう呟く彼女の横顔は幸せそうだ。

確かに、出会って二週間でここまでの関係になるとは思わなかった。

本気で理性がやばいかも知れない。

今からでも部屋変えてもらおうか、と真剣に悩むぐらいには。


…確かに出会いは偶然というよりは必然で。

出会ってすぐ、互いに相手を好きになり。

本当に信じられないぐらい急な話だ。だけど、それでもいい。

確かにまだ相手の知らない部分は沢山あるかも知れないが、

なに、時間は腐るほどある。

これから何千年と一緒に過ごすんだ。

最初は何も知らないぐらいでも丁度いい。

これから、相手の事をもっともっと知って、

そして、もっともっと好きになっていく。

堕ちていく想いは、きっともう止まらない。


「…別に、女を作るなとは言わん」


自分で考えたセリフに臭いなあ、

と内心苦笑していると、リアが少し拗ねたような表情で、そんな事を言い出した。

彼女曰く。

リアは精霊であり、彼女と子を成す事は出来ない。(そういう行為は出来るが)

長く生きていれば、色んな人と仲良くなる事もあるだろう。

好意を持たれるだけのものもある。

だから、他の女性の相手(色んな意味で)をしたりする事は、禁止はしない。

どの道、リア以外とは永遠に一緒になんて居られない。


「だから、約束じゃ。絶対にわらわの所に帰って来い。

 あと、その間もちゃんとわらわの相手をしてくれないと嫌じゃぞ?」


恥ずかしそうに呟く彼女を見て、

俺は色んな言葉が頭に浮かんだ。

だが慣れないせいか上手く言葉に出来ず、

俺はただ「ああ」と言って彼女を抱きしめた。




………………


…………


……



というのが、俺の膝の上にリアを座らせていちゃついている理由だ。

今更だが物凄く恥ずかしい。

反省はしても後悔はしないが。

他の連中は現在荷造り中。

流石に俺達と違って、影にポン、はいおしまい。とは行かない。

大きい荷物や余り使わない物はそれでもいいが、携帯する必要がある物もある。


皆の合流までまだ少し時間があるので、

もう少しリアを愛でて待つ事にする。


「んぅ…ユウ…♪」


俺の膝の上で頭を撫でられて気持ちよさそうにしているリアは、

本当に可愛らしい。

彼女となら、辛い旅も楽しめる気がする。

…まあ、俺の悪運とアリシアの幸運があればそうそう辛い旅にはならないだろうけど。


これからの旅に思いを馳せながら、リアを愛で続ける。

本当に、この世界に来てよかった。

こんなにも大切なものが出来た。


「守らないとな」


ぼそりと呟いた言葉に反応し首を傾げたリアに「なんでもないよ」と返し、

胸の中で決意と覚悟を決める。

この世界で生き、彼女を愛し、色んな人と出会い、愛し。

真理を見つけるのも重要だが、他を疎かにしてはいけない。


「ユウ〜♪///」


とりあえず今は、

膝の上で蕩ける彼女をしっかり可愛がるとしよう。


俺は改めて、この世界に来れた幸運に、神に感謝した。




探求者は、想いを紡ぐ。





という訳でいきなりの急展開(?)です。

まあ元々一目惚れですし、だったらこんなもんでしょう。

急転直下なラブストーリーも好きですけど、

流石に技量が足りないので安全着陸…いやすいません。

単に早くイチャラブ書きたかったというのもあります。


では、今回の展開も飲み込んで頂ける心の広い方は、

また次回お会いしましょう。

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