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真理の探求者  作者: 大神
12/22

第九話 ギルド

クレイアに着いた俺達は、

門の通行を管理している警備隊員に挨拶し、街の中へと入った。

おっさん達が呼び止められたりしなかったので一安心。


眼前に広がる東側大通りには様々な人が行き交い、

多くの露天商店が立ち並んでいる。

色んな所から呼び子の声が聞こえ、

中には値切り交渉に奮闘している姿も見られる。

やはりヨーロッパ調で、ファンタジーと聞いて連想出来る街並みだ。

レンガ調の物とそうでない物がある。

どちらも錬金によって資材を構築し、術式で補強してあるため、

見た目以外の差はあまり無い、らしい。


というか、日本やアメリカの建築様式が独特なだけな気もするが。

科学が発達、普及していない時代や文化の家屋なんてこんな物だと思う。

裏通りは流石に多少小汚いが、糞尿や死体、浮浪者が転がっているという事も無い。

野良猫や野良犬ですら、小汚いものは少ない。

兎に角綺麗で活気のある街、というのが第一印象だった。


「ここらは軍事区画の傍だし、内陸から来た冒険者向けだからな。武器屋とかが多い」


おっさんの説明を受けてなるほど、と納得する。

何軒かの武器屋防具屋、旅人向けの服屋に道具屋。

何を扱っているのか良く分からない店もあれば、

魔法関係の商店もある。

"軍部御用達"と書かれた武器屋があったり、

"セール"と書かれた、刀剣類が乱雑に入れられた箱を表に出している店もある。

なるほど、分かり易いぐらいに冒険者向けの通りだな。

通っている人も冒険者風の風貌の人が多い。


「反対側の西側大通りに行けばもっと活気があるぜ」


南北の通りは観光向け、一般人向けの店が多く、

西側は海路から来た物品が売られ、そこから来た人達向けの宿や外食屋が多い。

上手い事出来てるなあ。などと感心しつつ、

今回ここに来た目的を果たすために歩き出す。

優先順位としてはこの5人の依頼をさっさとこなしてしまおう。


「ここがギルドだ」


そう言われて視線を向けた先には、"ギルド"と書かれた看板が掲げられた建物がある。

やはりイメージよりも綺麗な外観で、中も綺麗だった。

居るのはまさに冒険者、といった風貌の者が多いが、粗暴な態度の者は少ない。

ギルド協会の権力というの凄まじい(国の支援受けてるような冒険者も多数居るため)らしく、

そのギルドで横柄な態度を取ったり騒ぎを起こす輩は少ないらしい。

そもそもスネに傷を持つような奴らは、人通りの多いギルドにたむろしたりはしないそうだ。

成る程、確かに一理ある。

ここで思ったのも、"綺麗"という印象だな。

自然を重んじる思想があるからか、この世界の物は俺のイメージより綺麗だった。

というか、俺の世界のファンタジーが泥臭いだけな気がして来た。

20世紀中後期日本ぐらいの文明レベルがあるのだから、綺麗なのは当然といえば当然だ。


「武器持ってないやつも居るがここに居る以上冒険者だな」


己の肉体を武器にする者、

杖無しで強力な魔法を扱える者、

単に家や宿に武器を置いてきている者、など多々居るが、

どの人達も、武器が無くても支障が無い程度の実力がある、という事らしい。

じゃあ何で俺ら襲ってきたんだ、と聞いてみると、

「若かったから、ただ武器持ってないだけだと思った」

だそうだ。嘗められたものである。

やはり帯剣ぐらいした方がいいんだろうか?


「威嚇の意味も兼ねて剣か杖ぐらい持ってた方が、余計な面倒は寄って来ないな」


それを面倒と思わない程の実力があればどっちでもいいんだけどな。

とはおっさんの言。

成る程、やはり白衣に武器は合わない気がするので要らんだろう。

戦闘になればちゃんと取り出せるんだし。

要は精神的な問題である。


「おう、嬢ちゃん元気か?」


ギルドのカウンターに座っていた女性に、

おっさんが声を掛ける。


「あら?久しぶりですね。どうされてたんですか?」


一瞬キョトン、とした彼女は、

ニッコリと営業スマイルを送りながら返してきた。

おっさんはこのギルドの常連だったのか、どうやら知り合いらしい。

と言ってもしばらくは来ていなかったらしいが…


布で顔を隠して活動していたためか、

盗賊稼業はばれていないらしい。


「おう。ちょっと野暮用でな。こいつらの面倒を頼むわ」


相変わらずの豪快な笑みで俺達を指差す。

彼女はそれに従って俺達を見、何やら珍しそうにしてから書類を取り出してきた。

…髪や目を見ていた気がする。やはり珍しいんだろうか?


「ギルド登録ですね?こちらに必要事項をご記入ください」


本が一般的に普及している事からも分かるように、

この世界では文字の読み書きは当たり前に出来るものとしてある。

そんな世界で言語の加護無しはきつかっただろうな、と他人事の様に思いつつ、

リアと二人でカリカリと記入していく。

契約事項の承諾やら色々と書かれていたが要約すれば、

「自分の身は自分で守り、死傷してもギルドに責任を押し付けない」というものだ。

こういう大規模なシステムにはよくあるものである。

冒険者は自己責任が常であり、何かあっても自分や仲間と何とかしろ、というのが常識。

勿論困っていれば手を差し伸べてくれる人も居るが、責任は自分自身。

当たり前の事だな。


「リア様にユウ・シンドウ様、ですね?ギルド登録、受け付けいたしました」


これでギルドに正式に登録された事になるらしい。

ギルドは難易度や危険度によってランク分けされた依頼が多数あり、

それらをクリアする事でギルド員としての評価が上がる。

一定の功績を収めればギルドから推薦が来て、

それを受け入れればランクが上がるらしい。

基準はランクによって違うし、

「冒険者として相応しくない」と判断されれば推薦は来ない。

と言ってもギルドの契約条項では重犯罪を犯さなければOK。

一般人以外への死傷に関しても、判断の基準としない、という物がある。

つまり、多少の悪さをしようが、ギルドは関与しないのだ。

それを討伐してくれという依頼が来れば、掲示板に貼るだけ。

…おっさん達ってもしかしてバレた上で見逃されてるのか?可能性はある。


「ギルドの情報網、嘗めないでください」


受付の女性に「おっさん達の事…」

と呟いただけで上記の反応が返ってきた。

ギルド、末恐ろしい。

ギルドは関与せず、被害者も顔は見ていない。

これでは警備兵もおっさん達を捕まえられないらしい。


「依頼は掲示板か、依頼情報ファイルでご確認ください」


そう言って手で示された先には掲示板。

入り口から向かって右手側の壁に、ランクごとに分けられた大きな掲示板がある。

そこには大規模な依頼や緊急性の高い依頼が貼られ、

それ以外の依頼は掲示板の下の台に置かれている、

依頼情報ファイルと呼ばれるものに纏められているらしい。

それらの依頼書をカウンターに持っていって、依頼の受諾をするらしい。


「依頼の完了報告は依頼を受けたギルド以外でも出来るのか?」


「ええ、ギルドからの依頼なら出来ますよ」


各ギルドはギルド協会というグループで運営しているので、

ギルドが直接出している依頼の完了報告と報酬の受け取りはどこでも出来るらしい。

勿論、依頼者が別に居り、

報酬の支払い等を当人同士でする場合は直接会いに行く必要があるが。

大概の依頼は報酬の踏み倒しを避けるため、

依頼時にギルドが報酬を預かる形になるらしい。

それが金銭のみの場合は、他のギルドでも受け取りが可能なんだそうだ。


「ふむふむ。特殊な報酬は直接、か。当然と言えば当然か」


次に、俺とリアのパーティー登録をしておく。リーダーは俺。

パーティーのランクはパーティー内最高ランカーのランクになるのと、

パーティー内での連絡用のギルドリングという物が貰えるらしい。


「こちらがギルドカードと、ギルドリングになります」


ギルドカードは名前、自分とパーティーのランク、クラスなどが書かれたカードだ。

これらは登録時に記入したものが書かれている。

ちなみに俺のクラスは魔法剣士、リアは精霊術師で登録した。

クラスは自分のギルド員としての活動スタイルを表すもので、

登録時に自由に記載出来る。

中にはトンデモな名前のクラスで登録している人も居るらしい。

ギルドカードは依頼の申請、受理の際にカウンターに差し出すギルド員の証であるらしく、

再発行には1000リラ必要だと言われた。

リングも同様らしいが、こちらは魔法で模倣可能。


ここでこの世界の金銭価値を伝えておこう。

単位はリラ。

全て硬貨で、軽鉄貨けいてっか重鉄貨じゅうてっか

銅貨、銀貨、金貨、白金貨とある。

鉄貨は一円玉のようだと思ってもらって構わない。

軽鉄貨一枚が1リラ。重鉄貨一枚で10リラ。銅貨一枚で100リラ。

銀貨一枚で1000リラ。金貨一枚で1万リラ。白金貨は100万リラ。

リンゴっぽい果物三つ纏めて10リラ。

冒険者向けの宿一泊二食付で500リラ。

先ほどのセール中の武器が200リラ、安めの武器が400〜800リラ。

質のいいものなら数万リラする事もあるらしい。

凡そ1リラ=10円といった所か。

ちゃんとした書物を見たわけでは無いので微妙に間違えてるかも知れないが。

そもそも物の価値が日本とはえらく違う。

冒険者などが多いため宿屋は安く、サービスがいい。

武器の類も量産されているため安い。

その割りに魔術書などは技術料が入るため高い。


カードの再発行に1000リラという事は一万円。成る程、高価だ。

おそらくはギルドカードという物に価値があるとするための額なのだろう。

もしくはこういった事で地味に稼いでいるのかも知れない。


「高ランクの依頼でも自由に受けられるのか?」


俺達はまだ駆け出しなのでランクは当然G。

高ランクの依頼をこなせば評価も上がりやすいだろうが、

低ランクの者に高ランクの依頼はやらせないという事もあるかも知れない。


「依頼内容に指定が無ければ構いませんよ」


つまり、○ランク以下お断りとか、○ランク以上お断り、とか書いてあるんだそうだ。

前者は低ランク者が無謀な依頼を受けて失敗するのを防ぐため。

後者は上位のランカーが下位ランクの依頼で荒稼ぎするのを防ぐため。

低ランクでも実力のある冒険者は居るので、

討伐依頼などでは下位ランクに対する制限が無い依頼も割りとあるらしい。

ただし、Aランク以上の依頼は大概一個下のランクまでの制限があるらしい。

他には、一定以上の成績の者に限る、など。

失敗の多い奴は受けるな、という類のものだ。

つまり、依頼書に記載されている条件が全て。

あくまでギルドは仲介と評価を受け持つのみ、というわけだ。


「兄ちゃん、これだこれだ」


俺達がギルドのシステムについて聞いていると、

おっさんが一枚の依頼書を持ってきた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−-----------------------------


盗賊団討伐依頼


ランクC


クレイア周辺に出没する盗賊団を討伐して下さい。

特徴は~(中略)~以上の情報を元にお願いします。

討伐に至らずとも、中程度以上の損害を与えるか、

有益な情報を提供頂ければ内容に応じて報酬を差し上げます。


条件指定

無し


報酬15000リラ


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−----------------------------


…一ヶ月の一人分の宿代が手に入るのか。

結構な額なんじゃないのか?


「だから言っただろ?報酬が膨れ上がってるって」


成る程、情報無しで討伐するならもっと早く稼げる依頼もある。

だが情報有りでならこれ程美味しい依頼も無いな。


「これだけあれば人生をやり直す時間が稼げる」


真剣に、少し嬉しそうな表情で言うおっさん。

盗賊団が溜め込んでる財宝なども、

持ち主不在、もしくは特定不可が多いので、

回収したらギルドの懐に入るらしい。

その内の1割を俺達も貰えるらしい。


「まあモノが欲しけりゃその場で頂いちまうってのも手だ」


あくまでギルドは"回収"してきたものを換金し、そのうちの1割をくれるだけ。

全部自分達の懐に入れてしまう事も出来るらしい。

ただし、盗品なんてそうそう売れないし、持ち主が居れば色々と問題になる。

ギルドの評価もちゃんと回収した方が上がる。

高く売れるようなものは元から依頼書に回収依頼が書かれている。

そもそも財宝自体殆ど売り払っていてアジトは空っぽ、

という事もざらなんだそうだ。

つまり、わざわざ盗賊団潰してまで宝探しに行くメリットが少ない。

金が欲しいならもっと安全に稼げる方法はいくらでもある。


「けどな、あいつらの頭領が財宝好きで貯めこんでるらしいんだよ」


つまり、売り払う前の貴金属がわんさか残っているらしい。

それらの中から必要な物を懐に入れ(RPGで宝箱から武器をゲットする様なもの)、

残りはギルドに"回収"して貰えばそれだけで大金が手に入る。


「流石にCランクを俺一人じゃきつかったんだが、兄ちゃん達が居れば大丈夫だろ」


他の連中はアテにならないらしい。

子分よ、それでいいのか。

まあ最悪リアに頼んでアジトごと財宝以外闇に飲み込んでもらえばいいだろ。

流石に一発ではきついだろうけど、何度か撃てば大丈夫だと思う。


「そうじゃの。どうにでもなるじゃろ」


リアの頼もしいお言葉と自身に満ちた笑みを受け、依頼の受諾を決める。

流石にこれだけ報酬が膨れ上がっていると狙う冒険者も多いので、

さっさと討伐して報酬を頂いてしまおう。


受付で受諾手続きを済ました俺達は、

おっさんに従って街の外へと歩いていった。




探求者は、冒険者となる。






久々の休日なんで書き溜めを放出。

さて、ギルドの会員となった我等が主人公。

やっとまともな人間と交流しました。


ちなみに本編で出た貨幣の単位や物価などは、

かなり雑に考えて決めたので、深く気にしないで下さい。

とりあえず数字の桁だけ見てもらえれば。


ではでは、また次回、お会いしましょう。

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