表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真理の探求者  作者: 大神
10/22

第八話 期待

さて、ティッシュは持った。ハンカチも持った。

剣も持った。杖も持った。ナイフも持った。

わくわくして昨日の夜は眠れなかった。


「子供かお主は」


呆れたように呟くリア。にこやかな笑顔の俺。

遠足みたいなものなんだし、この世界に来て初めて町に行こうと言うんだ。

少しぐらいテンションが上がったっていいじゃないかと思う。


で、彼女は最初に出会った時は黒いワンピースを着ていたが、

今は黒を基調とした洋服とスカートを着ている。

デザインは割と地球のものと大差は無いようだ。

美的感覚が近いのかも知れない。

素材が自然由来のため、ポリエステル製の服とは質感も手触りも違うが。

決して悪い訳では無い。

俺はいつもの地球に居た頃の服装。白衣も着ている。

無論ちゃんと洗っている。今着ているのは錬金による複製品。微妙に細部が違う。

異世界の日本人であるという証明の一つなので、手放す気は無い。


俺達は今家の前で家に鍵を掛けている。

日用品など確実に必要な物はリアの影の中に入れてあるので、

正直確認する必要は無いのだが。


「剣や杖持った子供ってなんか嫌だなあ。新聞紙丸めたやつならともかく」


「なぜわらわを見ながら言うんじゃ馬鹿者」


リアの突っ込みも綺麗に決まった所でそろそろ出発する事にする。

リアが来て1週間。

互いの情報確認も含めて色々話し合い、魔法の手ほどきも受けた。

一段落着いたので、当初の予定だった街への買出しに行く事にしたのだ。


「そういえば手帳見てなかったな」


すっかり忘れていた。

一応見ておこう。


―ペラッ―


リア


年齢:1109歳


ギルドランク:未登録


HP測定不能

MP測定不能


筋力D

耐久力D-

知力AA-

魔法力S

機動力D

運気D-


総合攻撃力D+

総合防御力D

総合魔法攻撃力S

総合魔法防御力S-

総合回避力D



―ペラッ―



携行所持品


・日用品

・お気に入りのティーセット


装備品


武器類

・ユウの鎌

・ユウの弓


・無し


・無し


・闇精霊のローブ

・闇精霊の旅服(上)


・無し


・闇精霊の旅服(下)

・闇精霊の皮靴



―ペラッ―



能力

・不老不死

・上位精霊(闇)

・低速成長

・生活技能D

・魔導知識AAA

・魔導理解AA+

・武術理解D

など


―ペラッ―



才能

・魔法の才S

・知力の才AAA

・鎌の才B

・弓の才C




…予想通りというかなんというか。

というか能力判定が軒並み俺以上…せめて筋力ぐらい勝ちたかった。

まあすぐ追い越すだろうけど。

HPとMPは精霊だからなあ。

でも冒険の経験無いって言ってたから、

この能力でもゲームで言えばLV1か…流石精霊。

日用品とティーセット別扱いか。余程気に入ってるんだな。

影の中に入れてあるものもリストに入るのか。

俺のもそうだった。ゲートの中とか影の中とかどうやって確認してるんだ?

鎌と弓は影の中なんだが…

すぐに取り出せるという意味で装備と同様に扱われてるのか?

精霊としての能力は一まとめにされてるな。

低速成長?ああ、そうか、精霊だから人間基準だと低速になるのか。

というか鎌と弓の才結構あるな…

何より、年齢だ。…下一桁だけの方がしっくり来るのは俺だけじゃ無いはず。

というか500越えとか言ってたけど実際は千越えかよ…

本当に精霊は年齢に頓着が無いようだ。

そういえばリアって成長するのか?身体的なものは。

聞いてみる。


「む?いや、精霊の体は成長せん。

 わらわは最初からこの姿じゃぞ?変える事も出来るには出来るが」


曰く、物凄く面倒らしい。

成る程。気にしている様な事を以前言っていたが、気に入ってはいるらしい。

これも本人談だが、この姿の方が人付き合いしやすいんだそうだ。

まあそりゃそうだろうな。見た目少女だし。


「なんじゃ?急に。ユウが大人っぽい方がいいと言うなら…」


いや、誰もそんな事は言っていない。

…しかし、リアが成長した姿か…綺麗なんだろうな…

いやいや、やはりこっちのリアの方がしっくり来る。


「ふむ、やはり小さい体の方が好み…」


「人をロリコンみたいに言うな」


失礼な事を言いそうになったので取り敢えず「あいあんくろお」で黙らせる。

俺は決してロリコンではない。

リアが好きなだけであって、幼女や少女が好きなわけでは決して無い。

そう信じたい。捕まりたくは無い。

…本気で惚れてしまってるな、これは。


桃色に染まり始める脳内を諌め、森を歩く。

相変わらず綺麗な森だ。鬱蒼と生い茂る木々の隙間から射す木漏れ日が心地良い。

暫く歩いていると、視界の奥の光が広がり始めた。森を抜けたようだ。

前の持ち主が使っていた道は分からなかったから(数十年経っているので当然である)、

ちゃんと抜けられるかどうか心配だったが。

リアが先導してくれたおかげで迷う事なく抜けられた。

精霊の力って凄い。

とりあえず後で道作っとくか。


俺達の眼前には荒野が広がっている。

別に砂嵐が舞っているわけでは無いが、荒涼としている。

草原はもう少し南に行った地帯にあるらしい。

気候は温暖。季節は森の感じからして秋の一歩手前といった所か。


「さて、地図ではここから北西に暫く行けばクレイアだ」


結構大きい都市らしいので楽しみだな。

まあこの世界の街の大きさは現代の10分の1程度のようだが。

日本のようにどこまで行っても町、という訳でもない。

大陸中にバチカン市国のような町が点在していると思ってもらえば大差無い。

人が少ないので当然と言えば当然である。


リアと他愛の無い会話をしながら旅路を行く。

重い持ち物も無く、魔獣などとの遭遇率も低い。出会っても瞬殺だ。

絶世の美少女と会話しながらののんびりとした旅。

…当初の旅のイメージとはえらい違いだな。

もっとデンジャーなイメージだったが、

よく考えればそんなに危ないようならそもそも文明が栄えない。

少し杞憂が過ぎたか…


「おう、兄ちゃんら。いいカッコしてどこ行くんだ?」


訂正。多少はデンジャーなようである。

少なくとも賊の類が出るくらいには。

見た目40後半ぐらいの、顔に布を巻いて隠した、盗賊らしきおっさんが声を掛けて来た。

かなりがたいはいい。他にもそれっぽい人が4人。みな布を巻いている。

左回りに、ひょろいのと、がたいのいいのと、ちょっと太いのと、がたいのいいの。

まあイメージしていた盗賊とかよりは身なりはいい。

やはりこの世界は総じて"綺麗"だな。

こういった盗賊に関しては上辺だけなのが残念だが。


「兄貴、こいつすっげー美人ですぜ!」


一人の子分らしき男がリアを見てテンションを上げている。

そりゃまあ初めてリアの姿見た男なんて、

惚けるか興奮するかの反応しか取れないだろう。

だから俺が一目惚れしたのもおかしく無い。うん、俺はロリコンじゃない。きっと。

さて、兄貴と呼ばれた男がいい獲物を見つけたような目をしているが…


「うぬらのような下種共の視線など気色悪うてしょうないわ。失せい。目障りじゃ」


そう言って魔力を撒き散らすリア。

その顔は無表情だが瞳は苛立ちに染まっている。

道端に生えていた雑草が魔力の余波で枯れた。流石闇の精霊。

すぐに消滅させない辺りまだ自重出来てるな。

俺との時間を邪魔されたのが余程気に入らないのか、

今にもあの黒球を放ちそうで俺はそっちに恐々としている。

彼らもいきなりの大魔力に冷や汗をだらだらと流し始めた。

流石に命の危険を感じたか。


「なっ…!?……兄貴、なんかやばい気が…」


「すげぇ魔力だ…あー、やー、その………すいっやせんっしたああああ!!!」


綺麗なジャンピング土下座。

やっぱこの世界は綺麗だな、うん。というか土下座あるんだ。

とりあえず訂正。やっぱりデンジャーのデの字も無いわ。


話を聞いてみると、東の方(ここは大陸の西の端の方)から流れてきた者達らしい。

元は冒険者なのだがこの辺で路頭に迷い、盗賊に身をやつしたらしい。

子分たちは同じような境遇のやつや、町で拾ったと聞いた。

成る程、盗賊の割には綺麗な訳だ。

盗賊としての経験は浅く、見た目非武装の俺達を見付けたため、

金目の物ぐらい持っているだろうと声を掛けたんだそうだ。

剣ぐらいは装備していた方がいいんだろうか?

曰く、「怪我はさせずに脅し取るつもりだった」らしい。

がたいはいいし今までは上手く行ってたんだろう。

まあ、ようは金に困って強盗しようとしていたらしい。

未遂だし他の人が被害に会っても自己責任。

面倒なので見逃そうか、と思ったのだが…


「兄ちゃんら、強いんだろ?儲け話に付き合ってくれねえか?」


どうもかなり切迫しているらしく、儲け話を持ち掛けて来た。

内容は、最近この変に出没してる盗賊団(彼らでは無い)の討伐依頼。

普通の盗賊団と変わらないのだが規模が小さい割りに強い。

その上神出鬼没でアジトもちょくちょく変わっているらしく、中々討伐されない。

国やギルドが動くほどではなく、しかし下位冒険者数人ではつらい。

上位の冒険者はもっと割りのいい依頼を選ぶ。

どうやら冒険者の心理などに精通してるやつが居るらしく、

上手い具合に討伐されずに逃げ回っているらしい。


「兄ちゃんらの強さならいけると思うぜ」


なかなか討伐されないため被害が地味に増え続け、

それに比例して報酬も結構増えてるらしい。

蛇の道は蛇。彼らは盗賊団の現アジトをたまたま知っているので、

その情報を買わないか、という話のようだ。

成る程、彼らは偶然手に入れた情報が金になり、

俺達も当面の活動資金が楽に手に入る。


「どうする?ユウ」


リアが聞いてくるが、俺はアリだと思う。

どの道街に行けばギルドで依頼を受ける予定だったのだ。

報酬のいい依頼の面倒な情報収集が必要無くなるのだから、いいかも知れない。

それをリアに言うとリアも了承し、その旨を5人に伝えると5人は抱き合って歓喜した。

正直男が抱き合う画を見ているのは心にクルものがあるので、さっさと歩き出す。

正直少し信用が早過ぎるか?と思わないでも無いが、

実力的にどうとでもなるので構わないだろう。

そもそも上位精霊であるリアにはトラップの類が効かない。


五人は慌てて俺達の後ろに着いて来て、色々と聞いてくる。

以下、道中の会話


「兄ちゃん達のそれ地毛か?」


「完全な地毛だ。こっちでは珍しいらしいな」


「あんた、人間か?」


「わらわは精霊じゃ。それも上位のな」


「げぇっ!?マジかよ、初めて見た…」


「俺らとんでもないもんに喧嘩売ったんだな…」


「そんな上位精霊と旅してるって、兄ちゃん何もんだ?」


「ただの人間だよ。あえて言うなら探求者」


「へえ。しかしいい女捕まえたな」


「こっちに来て初遭遇が美少女精霊だったのは幸運だな」


「かーっ!その女運を俺らにも分けて欲しいぜーっ!」


「盗賊では無理じゃろうな」


「ちげぇねえ!あははは!」


「笑い事じゃねえだろ」


―ゴチン―


おっさん(兄貴と呼ばれていた男)がふとっちょの子分の頭に拳骨を振り下ろした。

かなり痛かったのか、悶えている。

意外に実力はあったのかも知れないな。

どう見ても低ランクの体つきでは無い。


というかなんか随分と馴染んでいる気がする。

おっさんが冒険者然としていて、気のいいオヤジって感じがあるからかも知れない。

話していてもやはり盗賊と言うより冒険者と言った方がしっくり来る。

比較になる冒険者を知っている訳では無いが、

少なくとも盗賊らしい印象は受けない。


「おっ!見えてきたぜ」


前方に巨大な街の外壁が見える。

魔獣等から街を守るための防壁だな。

結局途中から増えた道連れのおかげで騒がしい道中だったが、

こういうのも旅の楽しみの一つだろう。

出会いと、別れ。これから長い人生の旅路の中、幾度も経験する事になるだろう。

時には笑顔に溢れ、時には悲しみに溢れ。


さて、あの街ではどれ程の出会いと別れがあるのだろうか。

とても楽しみだ。




探求者は、期待に胸を膨らます。




さて、おっさん登場。実は名前付きキャラだったりします。

CVイメージはワンピースの白ヒゲあたり。

渋い武闘派ナイスミドルです。

他の4人は完全にモブ。

しかしモブの癖にかなりの割合喋っているという。


さて、そろそろ世界観の説明とかも必要ですかね。

まあ書き溜めがあるのでそれを出すだけなんですが。

それでは次回も、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ