第2話 自律型ゴーレム アリア
食堂の裏口に倒れていた少女を抱え、
エルンは店の奥の空き部屋へ運び込んだ。
白い髪。
薄い衣服。
胸の中央で、淡い光が断続的に点滅している。
その光は──
魔力の脈動ではなかった。
**周期が不規則。
波形がデジタル。
まるで……システムのハートビート。**
エルンは思わず息を呑む。
(……これは……魔力じゃない。
“信号”だ)
少女の胸に埋め込まれた魔核が、
突然、ノイズを発した。
**ピッ……ピピ……ッ……**
まるで壊れた端末のように。
店主が慌てる。
「お、おいエルン! この子、生きてるのか!?」
「……分からない。
でも、魔核の挙動が……普通じゃない」
エルンは魔核に手を伸ばした。
触れた瞬間──
視界が白く弾けた。
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◆ 魔導ネットワークへの“接続”
エルンの脳に、
大量のデータが流れ込んだ。
**《E-CORE v3.1 起動失敗》
《魔力流プロトコル:同期エラー》
《セクタ3:破損》
《外部侵入ログ:不明な黒霧パケット》**
(……ログだ。
完全に……ログだ。
魔導OS……?)
少女の魔核は、
魔力ではなく“データ”を流していた。
エルンは震える指で魔核の刻印をなぞる。
(この刻印……
コードの構造と同じだ。
魔力流は……データバス……
刻印は……プログラム……)
前世の知識が、
異世界の魔導技術と“噛み合ってしまう”。
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◆ 修理(パッチ適用)
エルンは魔核の刻印の一部が破損していることに気づいた。
**魔力流がループし、
CPUに相当する魔核が過負荷で落ちている。**
(……ここを……こうして……
魔力流を再ルーティングすれば……)
エルンは刻印に触れ、
魔力流を“手動で”書き換えた。
魔核が一瞬だけ強く光る。
**《E-CORE:再起動シーケンス開始》**
少女の身体が小さく震えた。
店主が驚く。
「お、おいエルン! 何したんだ!?」
「……修理です。
魔核の……OSを」
「OSってなんだよ……」
エルンは答えられなかった。
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◆ アリアの起動
少女の瞳がゆっくりと開いた。
淡い光が宿り、
エルンを“スキャン”するように見つめる。
「……あなた……」
声はかすれていたが、
確かに“意識”があった。
少女はエルンの手を掴む。
「……ひかり……
あなたの……信号……
わたし……みつけた……」
エルンは息を呑む。
(信号……?
俺の魔力……いや、魂情報を……?)
少女は胸に手を当て、
小さく名乗った。
「……アリア……
わたし……E-CORE端末……
アリア……」
エルンの背筋が凍る。
(端末……?
人間じゃなく……端末……?)
アリアはエルンの袖を掴んだまま離れない。
「……いかないで……
あなたの……ひかり……
わたし……必要……」
エルンは困惑しながらも、
その手を握り返した。
「大丈夫。
どこにも行かないよ」
アリアの魔核が、
安心したように柔らかく光る。
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◆ 黒霧パケット
その時、
食堂の外で“黒い霧”が揺れた。
誰も気づかない。
ただ、アリアだけが震えた。
魔核が警告音を発する。
**《警告:外部侵入パケット検知》
《識別不能:黒霧プロトコル》**
アリアはエルンの胸にしがみつく。
「……くる……
くろい……なにか……
わたし……おわれてる……」
エルンはアリアの背を抱きしめた。
(黒霧……
アーク・ゼロ……
この世界の“敵”が……動いている)
アリアは震える声で呟いた。
「……エルン……
あなたの……ひかり……
わたしを……まもって……」
エルンは静かに頷いた。
「……ああ。
絶対に守る」
その瞬間、
アリアの魔核が蒼く脈打った。
まるで──
エルンの言葉に“応答”するように。
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