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奈落の底で拾った【略奪】スキルが、絶滅寸前の人類を救う切り札だった件  作者: 水原伊織


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28.異世界ハネムーン――絶望の戦場を『全自動リゾート』へ強制コンバート

「ハッピーエンドに固定された世界なんて、ただの『静止画』だわ。ねえユーシス、飽きちゃった。もっとこう……あなたの『蹂躙』が必要な、デバッグしがいのある場所へ連れて行って?」


レイリアがユーシスの首筋に吐息を吹きかけながら、とんでもない提案を口にした。

宇宙の管理者権限を持つ今の二人にとって、次元の壁を越えるのは、ブラウザのタブを切り替えるよりも容易な作業だ。


----


「……ふむ。確かにこの世界の効率は飽和状態だ。新たなリソースの獲得と、外宇宙へのドメイン拡大は、長期的なシステム維持において合理的と言えるな」


ユーシスは膝の上のレイリアを抱き上げたまま、虚空に指を走らせた。


『──次元跳躍ディメンション・シフトプロトコル実行。

 座標:未定義・未開領域。

 目的:ハネムーン、および全自動インフラの試験導入。』


二人の姿がアビスガルドの王宮から消失し、次の瞬間、彼らは「魔法も科学も中途半端に未発達な」異世界の戦場へと降り立った。


そこでは、巨大な泥の怪物ベヒモスの群れが、泣き叫ぶ騎士団を今まさに踏み潰そうとしている真っ最中だった。


「ひ、卑怯だ……! こんな数、勝てるわけが……!」


騎士団長が絶望に目を閉じた瞬間。

戦場に、漆黒のコートを纏った男と、その腕に抱かれた銀髪の美女が「座標エラー」のように唐突に現れた。


「……汚い泥ね。ユーシス、あんな不潔なものが私たちのハネムーンの背景グラフィックにあるなんて許せないわ。……一括で『清掃』していいかしら?」


「ああ、許可する。だが、ただ消すのは非効率だ。……その泥の粘性を利用して、この荒野の舗装材へと再定義しろ」


ユーシスが【零式・極】を抜く間もなく、レイリアが指をパチンと鳴らした。

刹那、数千の怪物が一瞬でフリーズし、その巨体が「最高級のレンガ」へと姿を変え、騎士団たちが呆然と立ち尽くす前で、滑らかな「全自動高速道路」が荒野を貫いて伸びていった。


「な、何が起きたんだ……!? 聖剣も魔導も効かなかった怪物が、一瞬で道に……!?」


「おい、そこな原住民」

ユーシスが騎士団長を冷徹な瞳で見下ろす。

「このエリアの管理権限は、たった今、俺たちが取得した。これより、お前たちの非効率な『戦い』という概念をデバッグし、全自動による統治を開始する。……まずはそのボロボロの鎧を脱げ。もっと防御効率の高い『機神エプロン』を支給してやる」


「……うふふ、私たちの『愛の別荘地』へようこそ。……ねえユーシス、まずはあのお城を、私たちの好みにリフォームしましょう?」


「そうだな。……ついでにこの次元の重力定数も、お前の歩きやすさに合わせて0.8倍に微調整(パッチ当て)しておこう」


新婚旅行という名の、一方的な世界改変。

最強の夫婦が通り過ぎた後には、争いも飢えもない「強制的な平和」と、ピンク色にデコられた全自動要塞だけが残される。


異世界の神々が慌てて「外部介入」を叫ぶが、ユーシスが放った『一括アクセス禁止命令バン』によって、彼らは自分の世界からログアウトさせられる羽目になった。


----


ユーシスが数時間で「泥の怪物」を高速道路に変え、重力定数までいじくり回した新天地。

そこは、もはや「異世界」ではなく、ユーシスという王が治めるアビスガルドの**【第2広域リゾート特区】**と化していた


「……ようやく見つけましたわ! 座標を隠すなんて、職務放棄も甚だしいですわよ、ユーシス様!」


空に巨大な次元の裂け目が開き、そこから姿を現したのはアビスガルドの旗艦……ではなく、巨大な「全自動パラソル」を装備した豪華客船仕様の機神母艦だった。

デッキからは、水着の上に最高位天使の法衣を羽織ったマリアが、拡声器代わりの聖杖を手に叫んでいる。


「あまりに快適なリゾートが他次元に新設されたというログを検知しました! アビスガルドの官僚組織(および全住民)のメンタルヘルス維持のため、これより『全軍、一括リフレッシュ休暇』を敢行しますわ!」


母艦からは、ピンク色にデコられた機神兵たちが、ビーチチェアやクーラーボックスを抱えて次々と降下してくる。さらには、かつての勇者や王族たちまでが「ここが新しい福利厚生施設か!」と、バカンス気分全開で荒野に飛び出していった。


「……チッ。マリアか。休暇申請の承認プロセスを勝手にスキップするとは、非効率な独断だな」


ユーシスは、レイリアに耳を甘噛みされながらも、冷徹に空を見上げた。


「……あら、いいじゃない。マリアたちが来たなら、あの子たちに『バカンス中の私たちの護衛(邪魔者の排除)』を任せればいいわ。……ねえ、ユーシス。私、あの透明度の高い海を、あなたの瞳のユーシス・ブルーに染め変えたいの。ついでに温度も38度に固定して、巨大な露天風呂にしましょう?」


「……妥当な提案だ。……おい、マリア! 遊びに来たなら働け。これより、この次元の『海洋リソース』を全自動温泉施設へとコンバートする。天使兵団を配管工事レイアウトに回せ」


「……っ、到着して3分で業務命令!? ……でも、いいですわ! ユーシス様の作った最高効率の温泉なら、天界の疲れも一気にデバッグできそうですもの!」


こうして、未開だった異世界は、アビスガルドからの「社員旅行」という名の集団移住によって、一瞬にして宇宙規模の巨大スパリゾートへと書き換えられた。


地元の騎士団たちは、昨日まで命がけで戦っていた戦場が、ピンクの機械がカクテルを運び、天使がマッサージを施す「理解不能な極楽」に変貌した光景を前に、ただ呆然と「幸せの過負荷」に耐えるしかなかった。


「……よし。物流マリアも揃ったな。……レイリア、次の『観光スポット』の選定に入るぞ。……次は、時間の流れが100倍遅い次元で、1万年ほど滞在ハネムーンするのはどうだ?」


「……素敵。それなら、1秒間に1億回、あなたに愛を囁けるわね……」


二人の新婚旅行は、もはや一つの世界では収まりきらず、宇宙の因果律そのものを「最高のバカンス」のために食いつぶし始めていた。

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