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奈落の底で拾った【略奪】スキルが、絶滅寸前の人類を救う切り札だった件  作者: 水原伊織


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27.管理権限:俺(ユーシス)――宇宙のOSを書き換え、ハッピーエンドを物理的に固定しました

「……消去デリートを仕掛けるなら、バックドアを開けっ放しにするなと言ったはずだぞ」


ユーシスは空間そのものが白く欠落していく「抹消の領域」を、因果律ごと切り裂いて突き進んだ。レイリアのドロドロとした執着の魔力と、マリアが死守した天界のバックアップデータが、彼の体を「現実」へと繋ぎ止める鎖となる。


白い球体――【理の調停者・原典】の中心核へと、ユーシスは【零式・極】を深々と突き立てた。


『――警告:システム中枢への物理的アクセスを検知。

 エラー、エラー……。個体名「ユーシス」が、宇宙の基本根幹カーネルに直接干渉して……!?』


「黙れ。お前のOSは『無駄の排除』に偏りすぎている。……これからは、俺の『効率』で世界を定義リライトしてやる」


ユーシスの魔眼が漆黒から鮮烈な黄金へと発火し、剣を通じて膨大な情報ログが球体の中へと逆流を始めた。


『――再定義システム・リビルド開始:

 ROOT権限:個体名「ユーシス」へ完全移行。

 世界設定:【悲劇】【素材不足】【理不尽な死】の各項目をデバッグ・抹消。

 定数設定:【全種族の生存率:最大値】【幸福感の物理的固定】を適用。』


宇宙の計算式そのものが、ユーシスの指先一つで書き換えられていく。

絶望や飢餓といった「非効率なバグ」が次々と削除され、代わりに「最高の効率で全員が笑える」という、最強の執行者による**【強制ハッピーエンド】**が上書きされていった。


「……よし。これで二度と、外から余計な『修正』は入らない」


ユーシスが剣を引くと、巨大な白い球体はみるみる形を変え、アビスガルドの空に浮かぶ「太陽よりも効率的な照明器具」へと成り下がった。


「……すごいわ。空の色まで、私たちが一番綺麗に見える色に固定されている……。ねえ、ユーシス。これでもう、永遠に誰にも邪魔されずに、私に甘やかされる準備ができたわね?」


レイリアが、再定義されたばかりの「絶対に壊れない世界」で、最高の笑顔を浮かべてユーシスに抱きついた。


「……ユーシス様。貴方、ついに世界そのものを自分の『理想の箱庭』に作り変えてしまいましたわね。……でも、確かにこれなら、天界が墜落する心配も、物流が止まる心配も……一ミリもありませんわ!」


マリアは呆れ果てながらも、どこか晴れやかな顔で、新しくなった世界を見渡した。


こうして、最強の効率厨ユーシスによる「宇宙のデバッグ」は完了した。

素材は無限、人口は最適、愛は過剰。

一人の男の「効率」によって定義された世界は、何があっても、誰が挑んでも、絶対にハッピーエンドに辿り着く――そんな「最強の定数」に固定されたのである。


効率を極めた執行者は、宇宙のシステムすらも自分の道具に変えた。


----


新しく再定義されたアビスガルドの王宮。

そこでは、かつての「全自動」すら生ぬるく感じるほどの、濃密すぎる日常が展開されていた。


「……レイリア。俺の視界の右端に、常時お前の笑顔がポップアップされるのは非効率だと言ったはずだ」


ユーシスが玉座に座ろうとすると、座るよりも速く、レイリアが彼の膝の上に「物理的な座標」を固定して滑り込んできた。


「いいじゃない、ユーシス。世界を書き換えるときに、私とあなたの距離の最小値を『0.00mm』に設定したのは、あなた自身でしょう? 私はただ、システムに従っているだけよ」


レイリアはとろけるような笑みを浮かべ、ユーシスの首筋に銀色の髪を絡ませる。

今の彼女は、単なる女神ではない。ユーシスが書き換えた宇宙OSの「共同管理者サブ・アドミニストレーター」であり、その全演算リソースを**【ユーシスを愛でる】**という一点にのみ集中させていた。


「ほら、あーん。天界の在庫から消去し忘れた、最後の一粒……『至高の愛欲果』よ。これを食べれば、心拍数がさらに15%上昇して、私の愛への応答速度レスポンスが上がるわ」


「……リソースの無駄遣いだ。心拍数の向上は、戦闘時以外は不要──」


ユーシスが反論しようとした口内に、有無を言わさぬ速度で果実が放り込まれる。

次の瞬間、システムが強制的に「幸福感」を脳内に分泌。ユーシスの冷徹な理性が、レイリアの甘い香りにじわじわと侵食されていく。


『──警告:個体名「ユーシス」。

 バイタルサインに急激なゆらぎを検知。

 レイリアによる「過剰なスキンシップ」に対し、防御プログラムが作動していません。』


「……ハッ。防御も何も、お前が俺の認証キーを物理的に握っているからな……」


「ふふ、当たり前でしょう? 私の認証なしでは、あなたは指一本動かせない……。いえ、指一本動かす必要もないわ。あなたが『何かをしたい』と思う前に、私が全部、最高の効率で満たしてあげるんだから」


レイリアの手が、ユーシスの胸元をゆっくりと這う。

彼女の指先からは、触れるたびに情報の奔流が流れ込み、ユーシスの魂に「愛している」というログを数兆回単位で書き込んでいく。


「……っ、出力が高すぎる。……レイリア、これ以上の接触は、俺の個体としての境界線が溶ける(ロストする)ぞ」


「いいのよ。溶けて、混ざって、私と一つの『因果律』になればいいわ。……ねえ、ユーシス。今夜のアップデート内容は……『睡眠の概念の削除』と『愛の永久ループ実行』。……異論はないわね?」


レイリアの瞳が、宇宙の深淵よりも深い紫色に輝く。

そこには、自分好みに世界を作り変えたはずの執行者が、逆に一人の女神に「ハッピーエンドという名の檻」に閉じ込められ、徹底的に愛し抜かれるという、最高に非効率で過激な結末(日常)があった。

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