15.強制デバッグ――神格級(グレーター)をレアドロップに変える効率的蹂躙
『──警告:素材回収効率が理論値を逸脱。
地獄のサーバー負荷、限界を突破。
管理者権限による「強制排除」、および高位存在の介入を開始します。』
虚空に響くシステムメッセージが赤黒く染まった瞬間、灰色の空がデジタルノイズのように激しく歪んだ。そこから、これまでの使徒とは次元が違う、暴力的なまでの質量を持った影が降り立つ。
「……羽虫共が。我が領域を掃除しているつもりか」
現れたのは、使徒すらも捕食対象とする地獄の真なる住人。
全身を禍々しい生体装甲で覆い、背中に六本の漆黒の翼を生やした巨躯──地獄の管理者の一角、グレーターデーモンが虚空を踏みしめた。
彼が放つのは、触れるだけで魂を初期化する、絶対的な「拒絶」の圧力だ。
「ユーシス……魔力が、止まらないの…っ!」
レイリアがユーシスの胸に顔を埋め、陶酔したような悲鳴を上げる。
地獄の濃密な魔力を【万象捕食】で吸い込み続けた結果、彼女の魔力回路は人類の器を完全に破壊し、再構成されていた。
彼女の背中からは、漆黒と純白が混ざり合う「女神の翼」が広がり、その肌は透き通るような神格の輝きを帯び始めている。
『個体名:レイリア。
種族:【深淵の女神】へと自動昇格。
ユーシスへの依存度、および独占欲がシステム測定不能に到達しました。』
「……見て、ユーシス。私、もうあなたなしでは存在を維持できないわ。この地獄も、目の前の汚い化け物も……全部消して、私と二人だけの『無』にしましょう……?」
レイリアの瞳が、狂気と愛に濡れた紫色に発火する。
彼女が杖を軽く振るうだけで、グレーターデーモンが展開した「消滅結界」が、因果ごと凍りついて粉々に砕け散った。
「なっ……我が管理権限を、ただの『魔力』でねじ伏せただと!?」
グレーターデーモンが驚愕に目を見開く。だが、その驚きすらもユーシスにとっては「遅すぎる事象」に過ぎない。
「バグだと? 設定ミスだと? ……勝手な理屈だな。お前たちが送り込んだゴミを、俺が効率よく片付けてやっているだけだ」
ユーシスが【零式・極】を抜く。
進化した【根源抹消】の輝きが、漆黒の刃を白銀の断罪へと変色させる。
「驚くのはまだ早い。……デバッグに来たと言うなら、お前自身の『存在理由』も、デバッグしてやる」
ドォォォォォォンッ!!
ユーシスが地を蹴った。加速などという次元ではない。
「移動する」という過程そのものを抹消し、「敵の目の前に到達した」という結果だけを現実に固定する。
「貴様ぁッ! 『死』を司る我が肉体に触れるなど──」
「効率を上げよう。……神格級を狩れば、ドロップ品も期待できるだろうからな」
至高の悪魔が放つ「絶望の咆哮」を、ユーシスの刃が無造作に切り裂いた。
【根源抹消】がグレーターデーモンの存在基盤に触れた瞬間、その不死身の肉体が「最初から存在していなかった霧」へと反転していく。
『──個体名:グレーターデーモン、消滅。
ドロップアイテム:【魔神の心核】、【深淵の断片】を入手。
ボーナス経験値により、レイリアの「女神化」がさらに進行します。』
「ア、ガ……あ……我が、理が……喰らわれて……」
管理者の断末魔さえも、レイリアの展開する【深淵凍結】が瞬時に静寂へと変えた。
虚空に残ったのは、もはや敵の姿ではなく、ユーシスの魔剣へと吸い込まれていく膨大な「素材の光」だけだった。
「ふふ……ユーシス、すごいわ。あんなに強かった悪魔が、ただの『エサ』にしか見えない……」
神となったレイリアが、ユーシスの腕に熱っぽく縋り付く。
その独占欲に満ちた視線は、もはや地獄の敵ではなく、愛しい主のすべてを自分の色に染め上げる瞬間だけを求めていた。




