芽吹きの精霊と、少し幼くなる月
今回は少し、柔らかい回です。
朝。
畑の真ん中で、丸い緑が転がっていた。
ころん。
ころん。
昨日顔を出した、芽吹きの精霊。
まだ小さい。
丸い土精霊の半分くらい。
頭にちょこんと、閉じた芽。
「……増えてる」
俺がしゃがみ込むと、緑の精霊はぴょこんと跳ねた。
その瞬間。
小屋の中から、ばたん、と音。
「まって!」
飛び出してきたのは――
小柄な少女。
銀髪がふわりと揺れる。
赤い瞳が大きい。
子ども形態のルナだ。
「踏まないで!」
「踏まない」
「危ないでしょ!」
ルナは緑の精霊を両手ですくい上げる。
「……ちっちゃい」
頬が少し緩む。
完全に子どもだ。
丸い土精霊が、対抗するようにぴょんぴょん跳ねる。
ルナは二匹を並べて、じっと見る。
「兄弟?」
「違うだろ」
「似てる」
確かに丸い。
色違いだ。
ころん、と緑の精霊がルナの手のひらで転がる。
小さな芽が、ぴこっと動く。
「芽吹きね」
ルナが呟く。
声は柔らかい。
「この土地、ちゃんと育ってる」
レイナが近づいてくる。
金色の瞳が、緑の精霊を見る。
「弱い」
「可愛い!」
ルナが即座に言い返す。
「守る」
「守らなくても生きる」
レイナはしゃがみ込み、そっと指を差し出す。
緑の精霊が、ちょん、と触れた。
レイナの耳がぴくりと動く。
「……温かい」
小さな声。
ルナが勝ち誇ったように言う。
「でしょ」
なんだそのドヤ顔。
⸻
俺は新しい畝を見る。
昨日広げたばかりだ。
なのに、もう芽がいくつか出ている。
「早くないか?」
ルナが笑う。
「芽吹きがいるもの」
緑の精霊が、ぽよんと跳ねる。
跳ねた場所の土が、ほんの少しだけ柔らかく光る。
「……お前、すごいな」
ぴこ。
芽が開きかける。
丸い土精霊が並んで跳ねる。
ぽよん、ぽよん。
ルナも一緒にぴょんと跳ねた。
「私も手伝う!」
「なにを」
「育てるの!」
そのまま畑に座り込む。
スカートに土がつく。
気にしない。
子ども形態のルナは、隠さない。
嬉しいものは嬉しい。
楽しいものは楽しい。
レイナが少しだけ口元を緩める。
ほんの一瞬。
でも確かに、柔らいだ。
「……騒がしい」
「いいじゃない」
ルナが言う。
緑の精霊を抱えたまま。
朝日が畑を照らす。
三人と、二匹の精霊。
畑はまだ小さい。
でも確実に広がっている。
ルナがぽつりと呟く。
「ここ、好き」
小さな声。
でもはっきりと。
俺は空を見上げる。
どうやらこの村は――
ちゃんと、芽吹いているらしい。
芽吹き精霊誕生回でした。
次回は小さな収穫と、三人の初めての“祝う夜”へ。




