畑を広げるとにした
村づくり回です。
少しずつ、形になっていきます。
「狭い」
朝一番に言ったのはレイナだった。
畑を見渡して、腕を組む。
まだ小さな区画。
トマト数本、葉物が少し。
確かに、三人分には心許ない。
「広げるか」
俺は鍬代わりの枝を持ち上げた。
ルナが小屋の入口から言う。
「水路も延ばす?」
「そうだな」
丸い精霊がぴょこんと跳ねる。
やる気らしい。
⸻
まずは草を刈る。
レイナが担当。
動きが速い。
ほとんど音がしない。
あっという間に地面が見える。
「助かる」
「当然」
短い返事。
でも少し誇らしげだ。
⸻
俺は土を掘る。
柔らかい。
丸い精霊がぺちぺちと地面を叩く。
すると、土が締まる。
均一になる。
「便利だな、お前」
ぴょこん。
双葉が揺れる。
⸻
ルナは川沿いに立つ。
月光ではなく、指先から淡い光を落とす。
水面が揺れる。
流れが少し変わる。
「こっち」
彼女が指さす。
水が、自然に新しい溝へ流れ始める。
「……魔法?」
「大したことない」
でも、十分すごい。
⸻
昼過ぎ。
畑は倍になった。
汗をかく。
悪くない疲れだ。
三人で並んで、新しい畝を見る。
「広い」
レイナが呟く。
「まだ足りない」
「欲張るな」
俺は笑う。
丸い精霊が新しい土の上で跳ねる。
ぽよん。
ぽよん。
すると――
土が、ほんの少し盛り上がった。
「ん?」
小さな、柔らかい芽。
でも種はまだ撒いていない。
ルナが目を細める。
「……早い」
レイナの耳が動く。
丸い精霊が、誇らしげに胸を張る。
ぽこん。
さらに土がふわりと揺れる。
小さな、丸い緑色の塊が顔を出した。
茶色じゃない。
淡い緑。
頭に、まだ閉じた芽。
ころん、と転がる。
「……増えた?」
俺が言う。
緑のそれは、丸い精霊にぶつかった。
ぽよん。
二匹で転がる。
光がきらきら舞う。
ルナが小さく息を吐く。
「芽吹き」
「なに?」
「土地が、本当に安定した証」
レイナがしゃがみ込む。
緑の精霊が、彼女の指をつつく。
レイナは一瞬だけ驚き、でも手を引かなかった。
「弱い」
「可愛いだろ」
俺が言うと、緑の精霊はぴこっと揺れた。
まるで、挨拶するみたいに。
新しい畑。
新しい精霊。
三人の影が並ぶ。
森が静かに揺れる。
ルナがぽつりと言う。
「本当に、村になっていく」
俺は土を見下ろす。
ただ広げただけだ。
でも。
「悪くないな」
緑の精霊がころんと転がる。
丸い精霊が追いかける。
畑は、まだ小さい。
でも確実に、増えている。
どうやらこの土地は――
俺たちを、歓迎しているらしい。
畑拡張+芽吹きの兆しでした。
次回、芽吹き精霊の正式誕生と、
三人の小さな収穫回へ進みます。




