レイナの奮闘 ― 強くて、ちょっと不器用
今回は、レイナの“守るための奮闘”を描きました。
戦士としてではなく、村人として成長していく姿をお届けしています。
「……よし」
朝の畑で、レイナはひとり気合いを入れていた。
ハルたちはまだ来ていない。
今日はレイナが、みんなより早く来たのだ。
「いつも戦うのは私の役目。でも……それだけじゃ、だめだよね」
レイナは腕をまくり、鍬を握った。
今日は“畑の柵の補強”と“害獣対策”を自分ひとりでやってみようと決めていたのだ。
「……あれ? レイナ、早いね」
後ろからハルの声がした。
レイナはびくっと振り向く。
「うわっ!? ハル!? な、なんでいるの!?」
「なんでって……自分の畑だからね?」
ハルは苦笑する。
レイナは少し気まずそうに視線を逸らした。
「……今日は、私がやる」
「ん?」
「柵の補強も、見回りも。私がやるから」
その真剣な顔に、ハルは少しだけ目を細めた。
「そっか。頼もしいな」
その一言に、レイナの耳がぴくっと動く。
「……頼もしい?」
「うん。森の守りは、レイナがいるから安心だよ」
レイナは一瞬固まり、それから慌てて鍬を振り上げた。
「そ、そういうのいいから! 作業する!」
だが――
ガンッ。
「あっ」
柵に打ち付けた杭が、少し曲がった。
「……あれ?」
もう一度。
ガンッ。
さらに曲がった。
「……うぅ」
そこへルナがやってきた。
「レイナ、力みすぎよ」
「だ、だって!」
「戦う時の力で打ったら、木が負けちゃうわ」
ルナはくすっと笑い、ハルを見る。
ハルは優しく言った。
「守るって、壊さないことでもあるんだよ」
レイナはしばらく黙り、それから小さく頷いた。
「……そっか」
今度は、深呼吸をして。
コン、コン。
ゆっくりと杭を打つ。
真っ直ぐ入った。
「……できた」
その声は、戦いの勝利よりもずっと嬉しそうだった。
昼前。
レイナは森の外れで、小さな足跡を見つけた。
「またウサギか……」
畑を荒らす常習犯だ。
だが今日は、追い払うだけではなく、考えた。
「入れないようにすればいいんだよね」
網を張り、精霊たちに頼んで草を少し伸ばしてもらう。
風の精霊がくるくると舞う。
「ありがと」
レイナは嬉しそうに笑った。
夕方。
畑はきちんと守られていた。
杭はまっすぐ、網も綺麗に張られている。
ハルが腕を組んで感心する。
「すごいな。完璧じゃないか」
レイナは照れくさそうに笑う。
「戦うのだけが守るじゃないって……分かったから」
ルナが微笑む。
「あなた、ちゃんと村の柱になってるわよ」
その言葉に、レイナの尻尾がぶんぶん揺れた。
「……私、もっとできるよ」
「うん」
ハルは頷く。
「でも、無理はしなくていい。レイナはもう十分すごい」
レイナは少し黙ってから、にっと笑った。
「じゃあさ」
「ん?」
「今度は料理も教えて」
ハルとルナは顔を見合わせて笑った。
「それはまた別の戦いだな」
「うるさい!」
精霊の森に、楽しそうな声が響いた。
強さとは何か。
守るとは何か。
レイナは少しずつ、それを自分なりに見つけ始めています。
次回は、また別の誰かの奮闘かもしれません。
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これからも、精霊の森を一緒に見守っていただけると嬉しいです。
月灯り庵




