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森の実は、森のままでは終わらない
加工・品質安定回です。
“ブランド化”の土台。
「このまま売るだけじゃ、もったいない」
ルナが言ったのは、干しベリーを並べている時だった。
少女形態で真剣な顔をしている。
「もったいない?」
バルドが首をかしげる。
「味はいい。でも、保存と形を整えれば“価値”になる」
エリシアが静かに頷く。
「森の恵みを、森のまま出す必要はない」
俺は干し台を見渡す。
乾燥具合にばらつきがある。
火加減も一定ではない。
「揃えるか」
そこからは改良だった。
乾燥棚を作る。
風の流れを計算する。
バルドが鉄枠を作る。
エルフが通気の木組みを整える。
レイナが湿度を体感で読む。
ルナが微調整で水分を抜く。
丸い土精霊が基礎を安定させる。
芽吹き精霊は控えめに。
“加工では過干渉しない”と決めた。
数日後。
均一な干しベリーが並ぶ。
甘みが凝縮され、酸味が丸くなる。
「これは……」
街の商人が目を見開く。
「菓子より旨い」
ルナが小さく笑う。
「森菓子ね」
俺は首を振る。
「名前はシンプルでいい」
エリシアが言う。
「精霊の森干果」
商人が繰り返す。
「精霊の森……干果」
響きが残る。
それでいい。
無理に飾らない。
精霊の森産。
それだけで十分だ。
次回、名前が街で広がります。




