森の外から来た、塩の匂い
第2章スタート。
外の街との初接触です。
「塩が欲しい」
言い出したのは、バルドだった。
鍛冶場の炉が安定し、保存庫も整い、畑の収穫も安定してきた頃。
「魚、焼くなら塩だ」
もっともだ。
エルフが言う。
「森では採れない」
ルナが少女形態で頷く。
「外ね」
レイナの耳が動く。
「街がある」
俺は少し考える。
精霊の森は整った。
でも閉じるつもりはない。
「行くか」
俺が言うと、全員がこちらを見る。
「代表は俺とレイナ」
「私も行く」
ルナが言う。
「少女形態で」
エリシアは静かに頷く。
「森は任せてください」
二日後。
森を抜ける。
外周の防護層を抜けると、空気が少し変わる。
人の匂いが混じる。
道がある。
踏み固められた土。
やがて見えた。
石造りの壁。
煙。
人の声。
街だ。
門の前で、兵が止める。
「森の者か?」
レイナが静かに頷く。
俺が前に出る。
「交易をしたい」
兵は俺をじっと見る。
そしてルナを見る。
最後にレイナを見る。
「最近、森の流れが安定したと聞く」
噂は広がっているらしい。
「塩と鉄を少し」
俺は言う。
「代わりに?」
「薬草、保存食、木工品」
ルナが補足する。
兵は少し考え、門を開けた。
「揉め事は起こすな」
「起こさない」
即答。
街の中は騒がしい。
香辛料の匂い。
パンの匂い。
人の笑い声。
レイナが少し警戒を強める。
ルナは周囲を観察する。
俺は思う。
精霊の森は、まだ小さい。
でも、外とつながる準備はできている。
交易は小さく始まった。
塩を手に入れる。
鉄を少し分けてもらう。
代わりに薬草と保存ベリーを渡す。
大きな利益ではない。
でも確かな一歩。
帰り道、ルナが言う。
「広がるわね」
「ゆっくりな」
レイナが短く言う。
「悪くない」
精霊の森は――
外と、静かにつながった。
次回は交易発展と、村内経済の芽生えです。




