精霊の森、はじめての祭り
「精霊の森」最初の小さな祭り回です。
第1章の温かい締めです。
「祭りをしよう」
言い出したのは、バルドだった。
鍛冶場の炉に初めて火が入った日。
畑も復活し、水路も安定し、外周も整っている。
「何の祭りだ」
レイナが聞く。
「名前が決まった祭りだ!」
バルドは豪快に笑う。
ルナが少女形態で小さく頷く。
「悪くないわね」
エリシアも微笑む。
「森に感謝を伝えるのも良いでしょう」
俺は少し考えてから言う。
「大きいことはしない」
「らしいな!」
バルドが笑う。
夕暮れ。
中央の家の前に、丸い机を外へ出す。
魚を焼く。
ベリーを並べる。
トマトも添える。
エルフが薬草茶を淹れる。
ルナが淡い光で火を整える。
レイナが外周を一巡して戻る。
丸い土精霊がぴょんぴょん跳ねる。
芽吹き精霊がころころ転がる。
誰も飾り立てない。
でも、空気は明るい。
「乾杯は?」
バルドが聞く。
俺は空を見上げる。
森。
月。
仲間。
「精霊の森に」
静かに言う。
「精霊の森に」
みんなが続く。
火が揺れる。
笑い声が森に広がる。
レイナが小さく笑う。
ルナが穏やかに微笑む。
エリシアが目を閉じて森に触れる。
バルドが豪快に飲む。
俺は思う。
ここはもう、仮の場所じゃない。
戦うための拠点でもない。
守るための砦でもない。
ただ、育てる場所だ。
精霊の森は――
今日、ちゃんと生まれた。
次話から第2章へ入ります。




