守るために、囲うのではなく整える
防衛整備回です。
重くせず、村らしく。
「壁を作る?」
俺が言うと、レイナは首を振った。
「囲うと閉じる」
その通りだ。
閉じたいわけじゃない。
でも、ワイバーンはまた来るかもしれない。
エリシアが地面に線を引く。
「防壁ではなく、流れを作る」
「流れ?」
ルナが興味深そうに覗き込む。
「森の魔力の流れを外周に巡らせる」
「結界みたいなもの?」
「柔らかいもの」
硬い壁ではなく、弾力のある層。
森の風が巡る道。
エルフたちが外周へ散る。
若木を曲げる。
土を整える。
丸い土精霊が土を固める。
芽吹き精霊が新芽を生やす。
俺は中央に立つ。
意識はしていない。
でも、村全体がひとつにまとまっていく感覚がある。
「ここが基点」
エリシアが俺の足元を指す。
「中心が安定しているから、外周が保てる」
大げさだ。
でも、昨日それを見た。
レイナが外縁を走る。
森と村の境目をなぞるように。
「死角が減る」
ルナが指先から光を落とす。
月光ではない、淡い膜。
空気が少しだけ重なる。
やがて、外周に見えない層ができあがる。
触れると、ほんの少しだけ弾く。
でも息苦しくない。
「これで、急降下は防げる」
エリシアが言う。
「火も多少は散る」
レイナが満足そうに頷く。
「守れる」
丸い土精霊が外周をぴょんぴょん跳ねる。
芽吹き精霊が新芽を増やす。
畑は広がりつつある。
家は包まれている。
そして今、村は“整った”。
俺は外周を見渡す。
囲ってはいない。
閉じてもいない。
でも、守れる。
「いいな」
俺が言うと、ルナが微笑む。
「らしいわ」
エリシアが言う。
「森は閉じない。ただ、調和する」
レイナが最後に言う。
「来るなら、受ける」
空は静かだ。
今は青い。
でも、もう怖くはない。
この村は――
少しだけ強くなった。




