豆腐みたいな家を建てることにした
まずは生きるための拠点づくり。
精霊たちと一緒に、家を建てます。
森の真ん中で目を覚まし、精霊に懐かれ、畑を作ると決めた俺。
問題がひとつある。
「……寝る場所がない」
昨日は木の根元で寝た。
正直、固い。
あと虫が多い。
丸い精霊(こいつ、土の精霊だろう)は俺の顔の横で、ぽよんぽよん跳ねている。
「お前はいいよな、土に潜ればいいんだから」
丸い精霊は胸(らしき部分)を張った。
ぴこっと双葉が揺れる。
ちょっと腹立つ。
「家、作るか」
そう言った瞬間。
光の粒が一斉にふわっと舞い上がった。
ぱあっと明るくなる。
……賛成らしい。
⸻
まずは材料集めだ。
森の端で、倒木を探す。
生きている木を切るのは、なんとなく気が引けた。
すると、丸い精霊が俺の足をぺちぺち叩く。
「なに?」
ぴょこん。
少し先へ跳ねる。
またぴょこん。
ついてこい、ということらしい。
ついていくと、ちょうどよく乾いた倒木があった。
「お前、見つけたのか?」
丸い精霊は、どや顔(っぽい雰囲気)で跳ねる。
「優秀だな」
なでると、ぷるん、と震えた。
光の粒がぱちぱち弾ける。
なんだこれ、可愛い。
⸻
枝を組み、柱を立てる。
と言っても、建築の知識なんてない。
四角く囲って、屋根を斜めにすれば雨は流れるだろう。
完全に素人設計だ。
「……豆腐だな」
四角い。
ただの箱。
丸い精霊が中に入り、ぐるぐる回る。
ぽよん、ぽよん。
壁をぺちぺち叩く。
すると、土が少しだけ締まった。
「……お前、固めてる?」
ぴょこん!
どうやらそうらしい。
光の粒も壁に集まり、ふわっと表面をなぞる。
すると、隙間が減る。
「生命共鳴って、こういうことか」
戦えない代わりに、育てる方向に補正がかかっている。
悪くない。
むしろ、最高じゃないか?
⸻
夕方。
小さな木造の箱が完成した。
屋根は歪んでいる。
壁も完璧じゃない。
でも――
「家だな」
中に入る。
土の匂い。
木の匂い。
川の音が遠くに聞こえる。
丸い精霊が中央でぽよんと跳ねた。
光の粒が、天井付近にふわふわ漂う。
まるで、小さな灯りみたいだ。
「……悪くない」
床に寝転ぶ。
昨日より、圧倒的にマシだ。
丸い精霊が胸の上に乗る。
地味に重い。
「おい」
ぽよん。
動かない。
どうやら、気に入ったらしい。
「ここ、俺の家だからな」
丸い精霊は、双葉をぴこぴこ揺らした。
外では風が鳴っている。
森が静かに息をしている。
俺は天井を見上げた。
戦わなくていい。
競わなくていい。
ただ、生きる。
ただ、育てる。
それだけでいい。
そのときだった。
小屋の外。
さらり、と音がした。
風とは違う。
誰かが、立っている気配。
丸い精霊が、ぴたりと止まる。
光が一瞬、揺れた。
「……?」
ゆっくりと、起き上がる。
小屋の入り口の向こう。
木陰に、細い影。
赤い、瞳。
月が、昇り始めていた。
豆腐ハウス完成です。
次回、いよいよ“月光の少女”が登場します。
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