夜の独占欲
ルナ甘々嫉妬回です。
強い女の独占欲。
でも壊れない関係。
カグラ誕生から三日。
森は穏やかだが、丘の家の空気は少しだけ忙しい。
レイナは誇らしげに娘を抱き、
ハルは、何度目か分からないほどカグラの顔を覗き込んでいる。
「鼻、俺に似てるな」
「どこがだ」
レイナが即座に返す。
その様子を、少し離れた場所からルナが見ていた。
表情は穏やか。
だが夜の瞳は、少しだけ細い。
「何か言いたい顔ね」
エリシアが小声で言う。
「言ってないわ」
即答。
だが視線は、ハルから外れない。
夜。
カグラが眠り、レイナも休んだあと。
ハルが外に出る。
丘の上。
月は高い。
そこに、先回りしていたルナ。
「ずいぶん、嬉しそうね」
声は穏やか。
だが静かに刺す。
ハルは笑う。
「嬉しいぞ」
隠さない。
ルナが一歩近づく。
距離が縮まる。
「私のときも、あんな顔をしてくれた?」
問いは軽い。
だが本音。
ハルは少し考え、正直に答える。
「もっとひどかった」
「取り乱してた」
ルナが目を瞬く。
「……そう」
少しだけ満足したような顔。
「嫉妬してるのか?」
ハルが聞く。
ルナは否定しない。
「するわよ」
夜の女王は、強い。
だが独占欲もある。
「私は、夜を全部あげたのよ?」
ハルが一歩近づく。
「昼もやる」
短い返事。
ルナの頬が、わずかに染まる。
「レイナは強い」
ルナが言う。
「私は静か」
違う強さ。
違う愛し方。
森は拡張しない。
だが関係は、重なる。
「比べてない」
ハルは言う。
「それぞれだ」
ルナは少し笑う。
「それが一番ずるい」
そのとき。
丘の下からソラの声。
「あー」
精霊が、柔らかく揺れる。
夜は争わない。
共鳴する。
ルナがハルの腕を引く。
「今日は私の番」
宣言。
夜の独占。
ハルが苦笑する。
「はいはい」
月明かりの下。
ルナは小さく呟く。
「壊れないって、こういうことよね」
嫉妬しても。
拗ねても。
関係は壊れない。
丘の家の中。
レイナは目を開ける。
「夜か……」
小さく笑う。
「好きにやれ」
強い女は、余裕もある。
森は広がらない。
だが愛は、重なる。
壊れない未来は、甘さも含む。
愛もまた、急がせないことで深くなります。
森は静かに厚くなっています。
―― 月灯り庵




