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異世界転生した俺は精霊に愛されすぎて、静かに村を育てます  作者: 月灯り庵


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16/26

森の民は、境界線に立つ

正式接触回です。

ここから村は次の段階へ入ります。

その日の昼下がり、森の空気は不思議なほど澄んでいて、まるで何かを待っているかのように静まり返っていた。


レイナが最初に耳を動かし、次いでルナがゆっくりと顔を上げ、最後に俺が森の奥のわずかな気配に気づいた。


「……来る」


レイナの声は低く、しかし確信に満ちていた。


木々の隙間から、白い影がひとつ、またひとつと姿を現す。


人型。


長い耳。


淡い銀色の髪が風に揺れ、木漏れ日を反射してきらりと光る。


全部で六人。


全員が女性で、静かな緊張をまとっていた。


敵意はない。


だが、覚悟はある。


先頭に立つ、年長と思しきエルフが一歩前に出る。


「この地の主は誰だ」


落ち着いた声だった。


高圧的ではない。


けれど、試すような響きがある。


俺は畑の前に立ったまま答える。


「主ってほどじゃないが、住んでるのは俺たちだ」


ルナが少女形態のまま横に立つ。


レイナは少し前に出て、森と俺たちの間に位置する。


守る姿勢だ。


エルフたちは畑を見る。


水路を見る。


小屋を見る。


そして、精霊を見る。


丸い土精霊がぴょこんと跳ねる。


芽吹き精霊がころんと転がる。


その瞬間、エルフたちの表情がわずかに変わった。


「……多い」


一人が小さく呟く。


年長のエルフが頷く。


「この森は均衡を失った」


「だから来たのか」


俺が聞くと、彼女は正面から答える。


「古木が枯れ、魔力の流れが変わった。私たちは住処を探している」


静かな言葉。


奪うとは言わない。


追い出すとも言わない。


ただ、探している。


ルナが一歩前に出る。


「ここは小さい」


「承知している」


年長エルフは即答した。


「だが、この地は安定している。精霊が選んでいる」


その視線が、俺に向く。


妙に、まっすぐだった。


レイナの耳が動く。


「争うなら帰れ」


短く、鋭い言葉。


空気が一瞬だけ張り詰める。


しかし、年長エルフは首を横に振った。


「争いに来たのではない」


そして、はっきりと言った。


「村に住まわせてほしい」


沈黙が落ちる。


風が通り、畑の葉が揺れる。


俺は小屋を見る。


まだ豆腐みたいな家だ。


でも、ここは俺たちの場所だ。


「条件がある」


俺は言う。


エルフたちの視線が集まる。


「畑は荒らさない。水路は守る。森を傷つけない。争わない」


年長エルフは、ゆっくりと頷いた。


「森を守るのは、私たちの誇りだ」


ルナが小さく息を吐く。


レイナはまだ警戒を解いていない。


でも、敵意は感じない。


丸い土精霊が、エルフの足元へぴょんと跳ねる。


芽吹き精霊も転がる。


エルフの一人が、そっとしゃがみ込む。


「……温かい」


その声は、驚きと安堵が混ざっていた。


俺は言う。


「広げればいい。無理にじゃなく、少しずつ」


年長エルフは静かに微笑んだ。


「では、共に生きよう」


その瞬間、森の風がやわらかくなった。


境界線は、消えたわけではない。


でも、踏み越えられた。


この村は――


もう、三人だけの場所ではなくなった。

次回はエルフ側視点です。

なぜこの地を選んだのかが明かされます。

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