再び森へ
王女、二度目の森訪問回です。
確認ではなく、選択。
関係が一段深まりました。
王都を発つとき、今回は隠れなかった。
小規模ながら正式な一団。
だが軍ではない。
旗も掲げない。
王女リシェリアは、堂々と森へ向かった。
森の入口。
精霊が穏やかに揺れる。
前回の緊張はない。
確認ではなく、知っている揺れ。
ハルは丘から降りてくる。
「また来たな」
「はい」
王女は微笑む。
今度は学徒ではない。
王女として、だが威圧せず。
「余白区域の件」
ハルが言う。
「囲ったつもりはありません」
王女は即答する。
「守る位置に置いただけです」
森を制度に入れないための制度。
矛盾のようで、必要な枠。
レイナが腕を組む。
「信じろってか?」
「信じなくていい」
王女は静かに言う。
「森が広げなければ、王都は触れません」
約束は短い。
だが王の裁可付き。
そのとき。
ソラが丘から転がるように近づいてくる。
「あい」
王女の外套を掴む。
自然な動き。
精霊が、祝福のように揺れる。
ミナが小さく笑う。
「森は、拒んでない」
カイが頷く。
「前より静かだ」
王女は膝をつき、ソラと目を合わせる。
「また来ました」
子どもに向けた言葉。
政治ではない。
「今回は何しに来た」
ハルが問う。
王女は立ち上がる。
「学びを、借りに」
囲わない。
管理しない。
だが持ち帰る。
森の在り方を。
「急がない政策を、ひとつ作ります」
王女は言う。
「王都に、余白を作る」
森の真似ではない。
王都なりの形で。
ハルは少しだけ笑う。
「壊れるなよ」
「壊しません」
短い約束。
森は変わらない。
王都は少しだけ変わり始める。
夕暮れ。
王女は森の中を歩く。
前回より、距離が近い。
精霊が寄る。
拒絶はない。
信頼が少しだけある。
森は今日も森。
だが今度は、未来が行き来する。
余白は固定された。
そして関係は、静かに深まっていく。
信頼は宣言ではなく、繰り返しで築かれます。
森と王都は、対立せずに接続しました。
ここから新章に入れます。
―― 月灯り庵




