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異世界転生した俺は精霊に愛されすぎて、静かに村を育てます  作者: 月灯り庵


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13/26

何も起きない日の、確かな積み重ね

大きな事件はありません。

でも、こういう日があるから村は続きます。

その日は、何も起きなかった。


魔物も出ない。

知らない気配もない。

畑も順調。


「平和ね」


少女形態のルナが、畑の端に座って言う。


今日は少女形態だ。


落ち着いている。


子どもほど騒がしくない。


「悪くないだろ」


俺は鍬を振る。


土は柔らかい。


丸い土精霊がぺちぺち叩く。


芽吹き精霊がころころ転がる。


レイナは少し離れた木の上から見張っている。


昼間でも油断はしない。


でも、警戒は薄い。


「水、安定してる」


ルナが川を見る。


水路は昨日より整っている。


俺が少し直した。


レイナが土を踏み固めた。


ルナが流れを微調整した。


誰も指示していない。


自然に分担している。


それが、少し嬉しい。



昼。


トマトが三つ、赤くなっていた。


「増えた」


レイナが言う。


「育ってる」


ルナが頷く。


丸い土精霊が誇らしげに跳ねる。


芽吹き精霊もぴょこん。


俺は笑う。


「じゃあ今日は二個ずつだな」


「平等」


レイナが即答する。



夕方。


レイナが川で魚を捕った。


素手で。


「すごいな」


「簡単」


簡単ではない。


ルナが火をつける。


月光ではなく、指先の淡い炎。


俺は串を作る。


三人で並んで魚を焼く。


特別な会話はない。


でも沈黙は重くない。


火の音だけが響く。


ぱち、ぱち。


「……悪くない」


レイナが言う。


「何が」


「全部」


短い言葉。


でも十分だった。



夜。


小屋の前。


丸い土精霊が俺の肩にいる。


芽吹き精霊はレイナの膝。


ルナは少女形態のまま、月を見ている。


「大きくなるわね」


「何が」


「村」


まだ村と呼べるほどじゃない。


でも。


畑は広がった。


水路は整った。


精霊は増えた。


笑いも増えた。


俺は小屋を見る。


最初はただの箱だった。


今は、帰る場所だ。


「急がなくていい」


ルナがぽつりと言う。


「急いでない」


「知ってる」


レイナが立ち上がる。


森の縁へ向かう。


見回りだ。


でも足取りは軽い。


俺は空を見上げる。


今日、何も起きなかった。


でも。


畑は育った。


魚は焼けた。


笑いは増えた。


それだけで、十分だった。


この村は――


静かに、確実に、積み重なっている。

何も起きない回でした。


でも、こういう日が村を作ります。


次は少しだけ、外の森に違和感を入れるか、

それともさらに積み重ねるか。


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