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異世界転生した俺は精霊に愛されすぎて、静かに村を育てます  作者: 月灯り庵


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はじめての収穫と、小さな祝祭

初収穫回です。

派手ではありませんが、大事な回です。


「赤い」


レイナが最初に言った。


畑の端。


昨日まで青かったトマトが、ひとつだけ、しっかりと赤く染まっている。


朝日を受けて、つやつやと光っている。


「……本当だ」


俺はしゃがみ込む。


丸い土精霊と芽吹き精霊が、そわそわしている。


ぴょん。


ころん。


落ち着きがない。


「収穫ね」


ルナは子ども形態のまま、膝を抱えて見ている。


赤い瞳が、少しだけ真剣だ。


俺はそっと、実をもぎ取った。


ぷつり、と軽い音。


手のひらに、ずしりと重み。


「できたな」


レイナが静かに頷く。


ルナが立ち上がる。


「食べるの?」


「食べるだろ」


三人で小屋の前に座る。


豆腐ハウスの前。


畑を見渡せる場所。


俺はトマトを三等分した。


「平等だ」


「当然」


レイナが短く言う。


ルナは少し不満そうだ。


「もう少し欲しい」


「増やせ」


「……がんばる」


芽吹き精霊がぴょこんと跳ねる。


責任重大だ。



ひと口、かじる。


じゅわ、と果汁が広がる。


甘い。


酸味もある。


でも、ちゃんと“育てた味”がする。


「うまい」


自然と声が出る。


レイナも無言で食べる。


少し目を見開く。


「……悪くない」


ルナは両手で小さく持って、ちびちびとかじる。


赤い果汁が指につく。


「甘い」


その顔は、完全に子どもだ。


丸い土精霊が俺の膝に乗る。


芽吹き精霊はルナの肩に転がる。


「祝祭ね」


ルナが言う。


「一個だぞ?」


「でも、最初」


たしかに。


たった一個。


でも。


ゼロから、ここまで来た。


俺は立ち上がる。


「夜、少しだけ火を焚くか」


レイナの耳が動く。


「目立つ」


「小さく」


ルナが笑う。


「月も出る」



夜。


小屋の前に、小さな焚き火。


火の粉がゆらゆら舞う。


森は静かだ。


丸い土精霊が火の周りを跳ねる。


芽吹き精霊は火を見て、ころんと転がる。


ルナは子ども形態のまま、膝を抱えて火を見つめている。


レイナは少し離れて座る。


でも、離れすぎない。


「……群れみたい」


レイナがぽつりと呟く。


「群れだろ」


俺が言う。


ルナが小さく笑う。


「まだ三人よ」


「三人で十分だ」


しばらく、誰も喋らない。


火の音だけがする。


ぱち、ぱち。


俺は思う。


戦わなくていい。


奪わなくていい。


育てるだけでいい。


この小さな収穫が、ちゃんと嬉しい。


ルナが小さく言う。


「来年は、もっと」


「だな」


レイナが頷く。


「守る」


火が揺れる。


三人の影が重なる。


豆腐ハウスはまだ小さい。


畑もまだ少ない。


でも――


この夜は、確かに“祝祭”だった。


村は、静かに始まっている。

初収穫回でした。


次回は、少しだけ深い夜の話に入ります。

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