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いずれ銀河は俺のもの  作者: 白田 まろん
別れの章〜仲間だと思っていたのに〜
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別れの章 エピローグ

 銀河アースガルド帝国士官学校の卒業式が厳かに幕を開けた。しかしそこにはユリウス・マキシスもレイア・オーカワもいない。まるで初めから存在していなかったかのように、だ。


 脳内に埋め込まれた目に見えないほどのチップにより記憶が改ざんされたからである。ただ、俺自身はその影響を受けていない。アリスイリスにより改ざんを阻止された結果で、俺がそうするように命じた。


 なおクローンのレイアは現在、精神年齢を肉体年齢に合わせる調整を行っている。卒業式を終えて俺がアリスイリスに戻る頃には、18歳相当に引き上げられていることだろう。性格や仕草などは俺の記憶から本人に寄せていくそうだ。


 俺たちが発見した廃棄コロニーメドギドも戦艦アリスイリスも極秘扱いとされた。だから俺の卒業課題はC判定。優・良・可・不可に当てはめれば"可"ということになる。当然叙爵どころか褒賞金もない。


「一人で課題に取り組むなんて無謀だったのさ」

「平民の分際で欲張るからだよ」

「自業自得だな」

「むしろ卒業できたことが不思議なくらいだ」

「将来性のない平民とは関わるだけムダ」


 そう、俺は卒業課題に単独で取り組んだことになっていたのだ。学生時代はほとんどユリウスとレイアとしか(つる)まず、その二人の存在が消されたのだから仕方がないと諦めるより他にない。


 ただしローガリク皇帝陛下はアリスイリスの所有を諦め、俺には卒業と同時に宇宙冒険者の道がつけられていた。元ユリウスだったジダル星人の襲撃がかなり(こた)えたようだ。それをレイアを除いて人的被害も物的損害も出さずに終わらせたのだから、アリスの主張を認めないわけにはいかなかったのだろう。


 現場を目撃し、記憶を改ざんされなかった者には第一級の箝口令が敷かれた。お陰で俺がただでさえ平民をバカにしている貴族の子息令嬢からそしりを受けるのはどうにもならない。


 まあ、悪口や陰口なんて言われても怪我をするわけではないからどうでもいい。心が傷つく? 俺のメンタルは弱くはないし、弱かったら平民で帝国士官学校になんて通えないさ。


 それにこれも彼らが知らないことだが、一応俺には大公領軍所属の戦艦アリスイリス艦長(キャプテン)という肩書きがついた。言いふらすわけにはいかないが、何かの拍子に知ったら腰を抜かすことだろう。


 士官学校卒業後は皆、思い思いの進路に進むが、帝国軍人になれたとしても最初は卒位というところからスタートとなる。これは一例だがそこで訓練を重ね、いくつかの試験などをクリアしてようやく宙兵になれるのだ。学位とは宙兵の見習い的な階級のことである。


 宙兵になれると次は帝国直轄星系に赴任し、そこで実績を積んで順調にいけば宙兵曹、宙兵曹長といった感じで階級が上がっていく。だが大貴族としてのコネでもない限り、多くは最初の赴任地から栄転することはない。だからアロイシウス大公領軍に所属する俺は同学年で一番の出世と言えるだろう。


 しかも戦艦の艦長(キャプテン)は通常なら大佐クラスが務める役職であり、彼らとはスタート地点がまるで違うというわけだ。貴族位はなくとも帝国軍内での俺は彼らにとって雲の上の人なのである。


 女子に知られたら結婚の申し出が殺到するところだが、俺は彼女らにまったく興味がなかった。加えて宇宙冒険者になる俺が同級生と一緒に仕事をするようなこともない。まあ、あったら顎でこき使ってやるから覚悟しておけよ。


 卒業式が終わると卒業生に保護者まで交えた謝恩会が始まる。本来は教官や学校関係者への感謝として催されるのだが、実情は主に帝国軍入り出来なかった爵位の低い家の者が、あわよくば高位の貴族の領軍に仕官させてもらえるよう渡りをつける場であった。


「よう平民、名前なんだっけ?」


 俺に話しかけてくるとは物好きもいたものだと思ったら、イシュアラ帝国に隣接するシルヴマルク星系を治めるシルヴマルク辺境伯嫡男、パール・シルヴマルクだった。コイツはユリウスやレイアが近くにいない俺一人の時に限って絡んでくるいけ好かないヤツだったな。


「ハルト・シガラキですよ」


 それでも一応貴族なのでこっちは下手に出なければ面倒なことになる。


「ああ、そんな名前だったか」

「ご用はなんでしょう?」


「どうせお前、進路なんか決まってないんだろう?」

「いえ、宇宙冒険者になろうと……」

「へっ! 宇宙冒険者だってよ!」


 小馬鹿にした物言いに数人の取り巻きが笑い声を上げた。


「やめとけやめとけ、お前なんかすぐに宙賊にやられておしまいだ。それよりウチに来いよ」

「ご忠告感謝いたします。ウチに来いとは?」


「領軍で下働きとして雇ってやるよ。主にオレ様の世話係だけどな」


 奴隷のような扱いが目に見えている。当然却下だがどうやって断ろうか。


「どうだ。栄えある辺境伯軍で働けるんだぞ。お前のような平民には光栄この上ないことだろう?」


「そうですね。ですが私のような()(せん)の者がお仕えしてはシルヴマルク辺境伯家の名折れとなりましょう」

「断るって言うのか?」


「とんでもない。身の程を(わきま)えてご辞退させていただくと申し上げております」


 同じことだけどな。


「ふん! せっかく雇ってやろうと思ったのに、後悔しても知らないからな!」

「お声がけいただきありがとうございました」


 悪態をついて去っていったがあれ以上無理に誘われなくてよかった。いつまでもこんなところにいたら、また変なのに絡まれかねない。早々に立ち去ることにしよう。


 そう思っていたら、今度はバーリエル子爵家令嬢のベンタ・バーリエルが声をかけてきた。


「ねえ貴方、ハルト・シガラキさんだったわね」

「はい、そうです」


「今ちょっと聞こえたんだけど、宇宙冒険者になるんですって?」

「はい、その通りです」


「およしなさいな。それよりワタクシのコロニーで下働きしませんこと? 住む場所とお食事は提供しますわよ」


 子爵位は10以上のコロニーを治める貴族だ。確かバーリエル子爵家は新興貴族で、治めているコロニーも最低限の10じゃなかったかな。いずれにしてもこの女も俺を奴隷のように扱うつもりに違いない。なぜなら住む場所と食事の提供だけで金銭報酬を口にしないからだ。平民を舐めるな。


「お心遣いに感謝します。宇宙冒険者としてやっていけなくなったらお願いするかも知れません。その時はよろしくお願いいたします」

「ダメよ。今ここで決めなさい」


 横暴なお嬢様だな。


「では残念ですがご辞退申し上げます」

「そ、そう。後悔しないことね」


 フンッと鼻を鳴らして(きびす)を返し去っていった。まったくもって面倒くさい。本当は世話になった教官に挨拶したかったが、このままだとさらに声をかけられそうだ。仕方なしに俺は人気のないところに移動して念話でアリスを呼び出した。


『どうされました、艦長(キャプテン)?』

『アリスイリスに転送を頼む』

『承知いたしました』


 その後、校内で俺の姿を見た者は誰もいなかった。

——あとがき——

タイトルに『別れの章 エピローグ』としてありますが、本作はこれで完結となります。

ご愛読いただき、ありがとうございました。

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