24. 早過ぎた再会
そして迎えた金曜日、私の心配は杞憂に終わった。
「アカリ殿、こちらは騎士団員のミネアだ」
――そう、レオニーダさんと共に現れたのは、ほんの数日前に逢ったひと。
思わず口を開こうとした私を制するように、ミネアさんが「アカリさん、『はじめまして』」と言った。
そういえばこの前の帰り際、エイジさんとミネアさんが私の家に来たことは、レオニーダさんには秘密にした方が良いと言っていた気がする。
私は慌てて笑顔をつくり、同じく「ミネアさん、『はじめまして』」と返した。
「急にすまない。今日はアカリ殿に話があって、彼女を連れてきた」
「――お話、ですか?」
食事前なので、コーヒーではなくお茶かな。
ちょっと待っていてくださいね、と二人を座らせてから、とぽとぽとお茶を入れる。
マグカップを置くと、レオニーダさんが「いただきます」と一口飲んだ。
その様子を見て、ミネアさんも「いただきます」とお茶を飲む。
「アカリ殿が元の世界に帰るまでもう少し時間がかかることは、先日伝えた通りだ。それを踏まえると、ずっとこの家に閉じこもったままの生活は良くないのではないかと考えている」
それはその通りだ。
確かに大好きな絵を描いてさえいればいい今の暮らしは最高だけれど、なかなか外出できないのはしんどい。
――あと、なんだか最近身体が重くなってきた気もするし。
心なしかおなかも出てきたような……。
「……そうですね、私もそう思います」
「あぁ、そこでミネアに来てもらった」
レオニーダさんが隣に座るミネアさんに視線を移すと、ミネアさんが待っていたかのように口を開く。
「この家は森の入口にありますから危険がないとは言えませんし、街に行くにも少し距離があります。ですから、アカリさんが外出する際には私がお供します」
「えっ! いいんですか!?」
思わず声が出てしまった。
街には是非行ってみたいと思っていたけれど、以前レオニーダさんから振舞いに気を付けるよう言われていたので、結局今に至るまで行けていなかったのだ。
ミネアさんが一緒にいてくれるなら、安心して出かけることができる。
「はい、必要な時はこれを使って私に連絡をください」
ミネアさんが机の上に置いたのは、黒いバングルのような小物だった。
手に取ってみると、中央部分にきらきらと虹色に光る大きな石が埋め込まれている。
「この石を押して話しかけると、私の元にアカリさんの声が届きます。同じように、私が自分のこの石を押して話せば、アカリさんの元に私の声が届く仕組みです」
「それは便利ですね」
まるで電話みたいだ。
これも魔法のなせる業なのだろうか。
いずれにせよ、これでミネアさんに連絡を取ることができるようになった。
エイジさんはこうなることを見越していたのかも知れない。
「ありがとうございます。ミネアさん、お忙しいところお手数をおかけしますが、これからもよろしくお願いします」
「はい、こちらこそよろしくお願いいたします。それでは、私はこちらで失礼します」
そう言ってミネアさんが立ち上がった。
「え、もう帰るんですか?」
「えぇ、あまり長居するのもご迷惑ですから」
そしてドアに向かおうとする背中を「待ってください!」と引き留める。
これからお世話になるというのに、このまま帰らせるのは申し訳ない。
「せっかくですし、ごはん一緒にいかがですか!?」
――すると、ミネアさんの足がぴたりと止まった。
「……ごはん、ですか」
「はい、これからつくるところですし、よろしければ是非」
それから迷うこと数秒、ミネアさんは振り向いて口を開く。
「……それでは、お言葉に甘えて」
私の手元には、この前レオニーダさんに再現してもらった新食材があった。
コリコリした食感が好きで、久々に食べたくなったのである。
その新食材とは――そう、きくらげ。
中華っぽいメニューを作る際のアクセントになると思ってお願いしてみたのだ。
シンプルな色味で絵に描くのは意外に難しかったけれど、さすがレオニーダさん、一発で想像通りの仕上がりになった。
元々二人分の予定だったところに玉子を一つ追加し、またかさ増し用にもやしも洗う。
フライパンに油をひいて、割りほぐした玉子を炒めて固まり過ぎる前に取り出した。
それから切っておいた豚肉を入れ、続いてもやし、そしてきくらげ。
ざくざく炒め合わせてから最後、炒めた玉子を戻し入れた。
大皿に盛り付けると、ふわりと香ばしい匂いがする。
ごま油はないけれどごまはあったので、一緒に炒めてみたのが良かったのかも知れない。
冷蔵庫から出した付け合わせのサラダもそれぞれの器に取り分ける。
レタスにトマト、そしてこちらもこの前再現してもらったコーン。
まだコーンを食べていないレオニーダさんに食べてほしくて、シンプルにサラダにしてみた。
「二人ともおまたせしました」




