4 アイスが食べられないなら私は死にます
バニラアイスを載せた3段ホットケーキと、タコなし平面たこ焼きがテーブルに横に並んでいる。
平面たこ焼きはソースとかつお節をかけるとお好み焼きに見える。だが食べてみると分かる。全くもってお好み焼きではなくたこ焼きなのだ。
あぐらに死さんを乗せて左手で彼女のお腹に手を回しズレないようにし、右手でフォークを持ち彼女の口へとパンケーキを運ぶ。
これですら彼女がズレ落ちたら死ぬらしいので、判定がおかしい。
手だけつないでおくのは駄目なのだろうか。
接地面積の問題?
まだダークソ〇ルの方が死なないのでは。
「それでスラーピーとは」
『今は機嫌がいいのでちゃんと答えてあげます』
彼女は器用に接地面積を減らし過ぎないように、昨日話していた対面座位の形へ。
安心してください、入ってはいませんよ。
そして手で髪をかき揚げ、額へおでこをくっつけてきた。
それから脳内に流れ込んでくる記憶っ、というかイメージ。
蛍光塗料のような黄緑きみどりしたメロンとオレンジが容器に入れられている。
コックレバーを引くとシャーベットが出てくる。
「あー、これか。沖縄で買ったことあるわ」
『日本にもあるんですか!?』
「ただ味はコーラとファンタの2種類だったかな」
『それならアイシーの方が飲みたいですね』
「だからアイシーとは」
『行きますよ』
脳内に流れ込んでくるサーフィンをしているシロクマ。
そのシロクマの手にはドーム型のリッドがついた水色の飲み物が握られていた。
「なにこれ、ソーダ水?」
『色は似ていますけれども』
「なにこのシロクマ、シロクマというとアイスの方が」
『白くま? なんで昨日教えてくれなかったんですか』
「かき氷はアイスじゃなくない?」
『英語の点数低そうですね……意外と悪くない……それなのに』
「国語の点数も悪くはないんですか」
『悪いのは社会性ですか』
「とてもわるくち」
『事実です。じゃなかったら年中カニ漁みたいな企業に入りはしませんよ』
「昔は繫忙期は年1だったんだけれどね」
『仕事を増やし続ける馬鹿は無能では』
「そうだねー、同業者が増えても馬鹿が吸収し続けるんだよね」
『まあ、それで毎日アイスを食べれるのですから良しとしますか』
「流石に100年経ったら働かないと行けなそうだけれどね」
『付加保険料とか払ったらいいんじゃないですか?』
「受給開始から2年経てば元は取れるし、死さんがくっついている間は必ずしなないなら最大で20万くらい給付を増やせるいい制度だとは思う。けどさその時までシステム生きてる可能性ある?」
『徳川幕府』
「鎖国したら滅ぶぞ」
『オランダでも行きますか』
「知識があるなら確定拠出年金はありだと思うけれど……、まあ多分、日本が一番アイスのバリエーション豊かだと思うけれどね」
『最低でも496あるとして1日10種類たっべればひと月半でいけますね』
「新発売って言葉を知ってるか?」
『そんなの長生きするしかないじゃないですか』
「アイスクリーム屋さんが全ていなくなったらどうするの」
『アイスが食べられないなら私は死にます』
「それ巻き添えくらうよね」
『鶏が先か、卵が先かみたいなものじゃないですか、どちらでも変わらないじゃないですか』
「重過失致死罪を因果性のジレンマにすり替えないで欲しい」
『あなたはもう量子猫のような状態なので、重過失致死罪は通用しませんよ。あなたが60歳になったら年金ミイラと呼んであげてもいいのですよ』
「物凄く悔しい、なのでこれからは死さんの事をエクモと呼ぶよ」
『それはなんとなく嫌ですね。エクモは凄いですけれど』