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2 別に貴方を殺して私も消えてもいいんですよ?

 生まれて初めて食べるマラサダはそこまで美味しいと感じられなかった。

 晩御飯の一口目はこれではなかった。

 フィリングにしょっぱめのツナやタマゴ、ハムが含まれていると思ったのに、全然そんなことはなかった。

 フィリングは確かに入っていたのだけれどもそれはぎゅうぎゅうに詰められたチョコクリーム。

 日本人としての感性からかあんこがみっちりと詰められているのは良いのだけれど、チョコクリームは無理だ。

『もう食べないのです? 貰っても?』

「いいですよ」

 はいっと、肩から体に巻き付いているシデスカネさんの手に手渡そうとしたけれど、彼女の手はピクリとも動かなかった。

『食べさせてください』

「はあ?」

『片腕で食べてる時に、私が気を抜いたりして等なにかしらの事態があって、私が貴方からずり落ちたら、貴方死にますよ』

「喜んで食べさせていただきます」

 喜んでとは言ったものの、特に生き残りたい理由も思いつかない。

 右肩が急に重くなったので横目に見るとシデスカネさんの綺麗な顔があった。

 目が合うと彼女は小さな口を開いた。

 このマラサダを千切るのはシュークリームを千切って手をべたべたにさせる愚行と同じ。

 手を汚したくなかったので、食分0.290の太陽を彼女の口に押し当てるとバクバクと食べ始めた。

『美味しいですけれど、ぬるい』

「まあ冷たいマラサダを食べるなら金沢区まで行かないと」

『同じのを買ってきて冷蔵庫で冷やせばいいのでは』

「同じのでいいの?」

『確かに……、これだったらシュークリームでいいですもんね』

 あー、パパ『なるほど、明日駅まで散歩しませんか?』

「確かデリバリーもやっていたけれど」

『こういうのは店舗に行くのがいいんじゃないですか』

「結局お持ち帰りだけどね」

 スパム寿司、ネギ塩豚カルビ、パリジャンサンドを食べ終えるまで彼女の顔は右肩に載っていた。

 載っていたというよりも待っていただろう。

 重いアイシングサポーター買おうかな。

「メロンパン食べる?」

『はい』

 うわっ、とびっきりの笑顔。アイス以外の甘美なる甘味をしってしまったか。

 紫色のメロンパンを千切って彼女の口へと運ぶ。

 ああ、これ、肩に乗った小鳥へパン屑をあげている気分、重いけれど。どうにかこうにか三角巾を鍛えるべきか?

「この体制辛いんだけれど、主に肩が」

『他の体勢と言えば対面座位しかないですね』

 レモネードを拭きそうになった。

『しますか、ずんどこ』

「しないよ、ずんどこ。というか逮捕されない?」

『そもそも私は人間ではないので法の適応外なのですけれど、もし適応されるなら強制精交罪ですね』

「え、十三歳以下なの?」

『ワズボーントュデイ、ビバビバ』

「へえ、ケーキでも買いに行く?」

『先程のコンビニのケーキ棚すっからかんでしたよ』

「美味しいもんねコンビニケーキ。あ、クッキーバニラとアサーイボウルを上手く混ぜたらケーキっぽくならないかな?」

『アイスはアイスとして食べたいです』

「はいごめんなさい」


 肩が死にそうだったので、上手く前から抱きしめて貰う形にしてアイスを餌付けした。

 流石の人外さん、知覚過敏じゃなくても勢いよくは食べたくないアイスをボリボリと音を鳴らしながら頬張った。

 明日あずきバーで試してみよう。

 風呂はまあ何とかなるにしても、寝るのきつくない?

 昔、恋人が覆いかぶさるように寝た時は朝起きた時凄い筋肉痛だった。それにシデスカネさんを下にして寝たら裸絞みたいになって永眠しそう。

『私を抱き枕にする感じで大丈夫ですよ、ただ私は睡眠を必要としなくていいので、暇つぶしが欲しいですね。抱き枕状態での』

 食事も必要としないのでは?

『別に貴方を殺して私も消えてもいいんですよ?』

 明日イ〇ン行かない? イ〇ン。

「いつも寝てる間ずっと映画流しているからそれでいいなら」

『ええ、それで大丈夫です。なるほどTheSleepPrescriptionですか勤勉ですね』

 さっきからちょくちょく記憶読んでない?

『繋がってますから』

「接触回線みたい」

『それを言うならシンクロかと』

 えっちな妄想をすれば勝てる!?

『フィルタリング出来ますー』

 うっわ、ずっる。

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