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第5話 : からかわれて、気づかされて


「ねぇ、つばさってさあ」

お昼休み、購買の帰り道。

あかりが突然、少し真面目な顔をして言った。


「……最近、ちょっと変じゃない?」


「へ? 何が?」


「ほら、なんかさ。藤井くんと目合うときの顔とか、すっごい分かりやすいよ?」


「なっ……! ちょ、やめてよ、そういうのっ!」


顔が一気に熱くなる。

声が裏返って、思わず立ち止まりそうになった。


「別に悪いことじゃないでしょ〜? 気になる人ができるのって、青春って感じ!」


「いや、そういうんじゃ……」


否定しようとして、自分でも言葉につまった。

“そういうんじゃない”って、本当にそうかな。


彼のことを気にして、目で追って、

笑ってくれるだけで嬉しくなって、

逆にそっけないと、ちょっと寂しくなる。


これって——


「……そういうの、かも」


思わず、小さな声で漏れた本音に、

あかりは一瞬驚いた顔をして、それから優しく微笑んだ。


「ふふ、やっぱりね」


それだけ言って、彼女は自分のパンをひと口かじった。

まるで、もう何も聞かないよって顔だった。



午後の授業。

窓際の光が教室に差し込むなか、

ふと目を上げた先に、藤井くんがいた。


ノートに何かを書きながら、少し考え込むような顔。

時々、指先でペンを回している癖。

私、いつの間にこんなに彼のことを見てたんだろう。


そんな風にぼんやり思っていたら——

彼が、こちらを見た。


また、目が合った。


でも今日は、私も逸らさなかった。


一秒、二秒……

そして彼がふっと笑った。


私は胸の奥がきゅっと締めつけられるような感覚に包まれて、

でも、不思議と怖くはなかった。


——ちゃんと、見てくれてる。


そのことが、ただそれだけが、嬉しかった。



---


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


第5話では、つばさが「自分の気持ち」に気づき始める瞬間を描きました。

誰かを「気になる」っていう気持ちは、最初はふわふわしていて、

自分でもよくわからないものですよね。


でも、友達にからかわれたり、ちょっと背中を押されたりして——

ようやく、素直になれる時がくる。


そういう、じんわりとした感情の変化を、

大事に拾っていきたいと思っています。


そして藤井くんもまた、彼なりに何かを感じ始めているはずです。


このふたりの距離がどう変わっていくのか、

次の話もぜひ見届けてくださいね。


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