第4話 : 友達の視線、私の気づき
「つばさー、今日お昼どうする?購買行く?」
そう声をかけてきたのは、友達の一人、佐伯あかり。
明るくて、話題豊富で、クラスのムードメーカー。
彼女とは1年の時からの付き合いで、何でも話せる友達のひとりだ。
「購買でもいいけど、今日はちょっと……」
「ん?珍しいじゃん。つばさ、いつも即決じゃん」
「……なんか、教室にいたい気分かも」
自分でもなぜそう言ったのか、よくわからなかった。
けど、教室に残っていたかった。
理由は……きっと、あの人がまだいるから。
「もしかして、誰か気になる人とか?」
「えっ⁉ な、なんでそうなるの⁉」
「あっはは!焦ってるー。図星でしょ~」
冗談混じりのあかりの笑顔に、私は誤魔化すように笑い返した。
*
昼休み。
藤井くんは、今日もひとりで席に座っていた。
お弁当を食べているというよりは、ゆっくりと時間を過ごしているように見える。
私は、何気なく彼の方を見た。
……すると、彼も同じタイミングでこちらを見ていた。
目が合って、ふたりとも一瞬固まる。
だけど、今日は彼の方が先に——
ほんの少しだけ、目元を緩めた。
それだけで、胸がじんわり熱くなる。
あかりが隣で、私の顔を覗き込んだ。
「……やっぱ、いるな。気になる人」
「……う、うるさいな……」
私は視線をそらしながらも、顔が熱くなっていくのを止められなかった。
何も始まってない。
会話だって、ほとんどない。
でも、私の中では確かに、
何かが、ゆっくりと動き始めていた。
それはたぶん——
“好奇心”と呼ぶには、少し優しすぎるものだった。
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読んでいただき、ありがとうございます。
今回は、つばさの友人・佐伯あかりが初登場しました!
明るくて、ちょっとお節介で、でも空気も読める子です。
彼女のような存在がいると、主人公の心の動きも際立って見えてきますね。
そして、つばさの中の「気づき」。
まだそれが恋だとは気づいていないけれど、
静かに波紋のように広がっていく感情を、これから丁寧に描いていけたらと思います。
この作品は、急展開よりも、
「いつの間にか変わっていた」
そんな心の動きを大切にしていくつもりです。
それでは、また次の放課後でお会いしましょう。