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第3話 : 目が合った、その一瞬


朝の教室。

いつも通りの喧騒が流れていた。


誰かの笑い声、椅子を引く音、友達同士の挨拶。

そのすべてが日常の一部で、いつもと変わらないはずなのに。


——違和感があった。


私の中だけで。


昨日の放課後。

あの静かな時間と、藤井くんの優しい「ふっと笑う顔」が、頭から離れなかった。


普段は無口で、目も合わないような彼が、

あの時だけは、ちゃんと私を見ていた気がする。



「おはよう、つばさー!」

「おはよー!」


友達に呼ばれ、笑顔で返す。

けど、目は自然と教室の後ろの席を探していた。


……いた。

藤井くんはいつものように席に座り、ノートに何かを書いていた。


けれど、不意に彼が顔を上げた。


——目が合った。


ほんの一瞬。

でも、その一瞬が心の中に波紋を広げた。


彼も、少し驚いたように目を見開き、すぐに視線を戻した。


私は、なんでもないように振る舞いながらも、

心臓がどくん、とひとつ大きく鳴ったのを感じた。



「なに見てんの〜?」

隣の席の友達にからかわれ、私はあわてて笑ってごまかした。


「え、なにも。ちょっとボーッとしてただけ〜」


本当は、違う。

ただ、目が合っただけなのに。


どうしてこんなに気になるんだろう。

どうしてこんなに、心がざわつくんだろう。


藤井くんは——

今、私のことをどう思ってるのかな。


そんなことを考えてしまう私は、

もうきっと、「昨日の私」じゃない。



---


今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


目が合う、ただそれだけの出来事。

けれど、その「一瞬」に心が揺れる瞬間って、たしかにありますよね。


今まで何とも思っていなかった相手が、

ある日突然、少しだけ気になる存在になる——

そんな小さな違和感から、物語は動き出します。


第3話では、つばさの中での「変化の始まり」を描いてみました。

次回から、彼女の視線や心の動きにも、少しずつ変化が現れていく予定です。


次の話も、放課後の片隅でそっと覗いていただけたら嬉しいです。

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