#7 勉強会と初仕事――②
恒星の、強烈な光が照りつける中、戦闘は続く。
だが、勝敗自体はかなり短い時間で決まった。
攻撃と潜砂を繰り返す、〈05〉に分類されるグノヴェルガだが、パターン化したその動きは意外にも読みやすい。
綾は、タイミングを見図り、グノヴェルガが砂から顔を出した直後、攻撃に移るまでの僅かな時間の間に、雷撃を見舞う。
起電術音はない。放ったのは、雷撃と言うには少々微弱な電流。
しかし、それで十分だった。
綾が狙ったのは、グノヴェルガの両眼。
ルビーのような妖しく光る両の眼を直撃した電流は、眼球を焼き、砕き、視力を確実に奪った。
その激痛に、グノヴェルガは暴れだす、咆哮を断続的に上げる、真っ赤な血飛沫を滴らせ辺りに散らし、飛び上がった。
幾粒もの砂とともに、跳ね上がるように飛び出たグノヴェルガを、綾の雷撃が貫く。
「アルシュレイザ」
中威力の雷撃が、轟く雷鳴を引き連れ、グノヴェルガの頭から尾までを貫通し、さらに虚空に向かって迸る。
後には、ギターの音色、ギターの独奏曲だけが残った。
しかし――。
「未奈、周囲を警戒。さっきの戦闘で、場所を感知されたかもしれないから」
直後、地面が振動。
綾と未奈は、慌てて回避行動を取る。
砂が一瞬盛り上がる。破裂する。
中から現れたのは、巨大な鋼鉄製のサソリ。
「メルカディア・・・」
綾が、その体躯を見上げながら呟く。
「これが・・・・・」
バカでかい二つのハサミ、先端が体長と同等はあろうかというほどの長大な槍の如き尾針、機械の音が各所から漏れる黒き体躯、それを打ち消す獣と相違ない咆哮。
そして、腹のあたりにミサイルポッド、背中には中型高機動戦闘兵器を軽くあしらえそうな長大な二門の砲身。
ハサミの内側には、銃口らしき穴。
〈04〉に類する、"リストR"の下位に登録されている、さながら『砂漠の生体戦車』。
ガコンッ――。
不意に、背の砲身が更に伸びる。
キュオォォォ・・・。
チャージ開始。
「やばっ・・・・・!」
綾は、磁力で思いっきり体を弾き、未奈の背を抱え、伏せる。
2秒以下の行動。
直後、綾と未奈の真上にある空間を、二本の熱戦が薙いだ。
「か、間一髪・・・・・」
呟きながら、綾は未奈を起こすとそのまま手を引いて再び回避行動。
今度は、メルカディアの腹から放たれた誘導ミサイルが、綾と未奈を追うように着弾していく。
そのたびに、砂柱が立ち上り、殺傷力を持った鉄の破片が飛びまわり、跳ねる。
奇跡的にも、二人には一つも当たらず。
だが、戦況は未だ悪いまま。
綾が、どうやって攻撃に転じようかと考えていたときに、不意に状況が一変。
メルカディアが何かに貫かれ、あちこちから薔薇の如き爆炎を上げていた。
そのまま、炎は各所の火薬その他もろもろに引火、メルカディアを木端微塵、ただの数字にする。
「やっと・・・・・見つけた・・・・・・」
唐突に声。綾は、メルカディアだったものから声がした方へと首を捻り、視線を移す。
隣の未奈も同様に。
そこには、身長をゆうに超える、白銀の長大な対戦車ライフルを両手に提げた少女がいた。