#49 アスフィナス――③
エルカは、シフトが同じなのもあって未奈と一緒にいた。模擬店などを巡りながら適当にブラブラしている、という感じだ。
「あと三十分……どうしますか?」
未奈が問いかけてきたが、エルカには聞こえていなかった。
――この反応……。
エルカがその存在を捉えたのはついさっきだ。正確には、数分前に内蔵する汎用高感度センサーに一瞬だが微弱なノイズが走った。一瞬で、しかも微弱だったので気のせいかと思った。が、妙に気になったので、逆探知をかけて発信源を探してみたが失敗。方法を変えて、全情報の中から有機生命体の存在情報を除外――さらに必要のない情報を除いていくと、取得できない反応を捉えた。そこだけ、ぽっかりと空白になっているのだ。ステルス戦闘機すら容易に検出するエルカのセンサーでも完全に捕捉できない存在について、エルカにはひとつだけ思い当たるものがあった。そして同時に、ついに来たか、と嘆息する。
「エルカ……ちゃん?」
「……ごめん」
「え……?」
エルカはそれだけ告げると、普段は走ることのない廊下を走りだした。
「"ASFINAS"稼働開始――電子魔術、起動」
♪
「……捕捉されたか…………カーズ、フェイズ3へ移行、作戦を開始するよ」
『了解した』
脳内に、昨日と同じ低い男声が響く。
「"ASFINAS"稼働開始――電子魔術、起動」
長い黒髪をポニーテールにまとめた快活そうな少女――アリスは、ステルス状態を維持したまま、行動を開始した。
「ヴィルガロン」
エルカのそれと全く同じ起電術音を口にして、掌の中に自動大型拳銃を形成する。しかも、現実世界で、だ。
アンジエスタ学園高等部の制服を着たアリスは、その状態で人気のない場所を目指して走り出す。今回のターゲットはあくまで同一能力を有するエルカ・メフィリアであり、要らない犠牲を出さないための処置だ。
アリスは、バカみたいに広いアンジエスタ学園の敷地内をひた走り、高等部の校舎の裏へと回る。そして、さらにその奥にある開けた場所に出る。現代では珍しい自然の芝が敷き詰められたそこは、軽くスポーツをやったり、涼をとる場所として利用されている。
アリスは、その中央付近で足を止めた。だがその一方で、警戒を強める。ミサイル群が突然飛んできてもおかしくはないからだ。
不意に、ざっと芝を踏む別の足音が聞こえた。後ろからだ、アリスが振り向くと、予想通りそこにはエルカがいた。エルカの手には、アリスが持つそれと同一(正確には逆なのだが)の武器が握られていた。
「初めまして、原形」
「…………」
アリスが声をかけるが、エルカからの返事はない。当然だ、そういうふうに造られたのだから。
「分かってるとは思うけど、あなたの"ASFINAS"はかなり不安定。そういうわけだから、被害が出る前にあなたを壊すよ」
アリスは、銃口をまっすぐエルカの胸の中心に向ける。
「……どうして?」
唐突に、エルカが問いかけてきた。
「……どうして、また私のような存在が造られたの?」
「あなたを試作したことで得られたデータを元に、改良・安定化したのが私。理由があるとすれば、それはあなたを設計する段階で既に出ているでしょ?」
「……そう」
「それより、一つだけ答えて。なぜ研究所を抜け出したの?」
「……兵器になるのが怖かった」
「なにそれ。あなたはもう――」
アリスは、敢えて区切りをつけて、すこし声量を上げて告げる。罪人に宣告するかのように。
「――十分すぎるほどに兵器じゃない」
それは、今更問答するようなことではない。自分たちは明らかに兵器で、しかも現行兵器を軽く上回る代物だ。現代における最強の陸戦兵器――人型機動兵器すらも。
「もういい。答えを聞けただけで十分。LSL-H0A"ELKA"、あなたを破壊する」
直後、爆発音にも似た銃撃音が、文化祭の最中に響き渡った。
はい、エルカは実は兵器(と言える存在)だったのです――と言いたいところですが正確には違うのです。そのあたりは次回――かなぁ。←非常に曖昧な予告。
ども、作者の神崎です\(-o-)/
さて、もうすぐ狩祭り解禁です。
あと半月を切りましたよ。いやー待ち遠しい。
ま、相変わらずのゲーム話ですね。
クリスマス?お、俺にはその話はムリだ。
あぁ、でも『雷蝶』の番外編でなら……。
で、では、この辺で。
インフルエンザとか寒さとかにはきーをつーけてっ!(-.-)ノシ