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雷蝶の奏曲  作者: 重鳴ひいろ
序章
5/76

#5 〈華焔〉/ターミナル

栗原綾――Aya Kurihara


コード:《華焔の雷撃(バースト・ボルテッカー)》


通称:アオアゲハ


格位:護姫(プリンセス)・第三格位(ドライ)


ライセンス:4th


音色:ギター


能力:形状固定,被神


私立アンジエスタ学園高等部 1-C




 「ターミナル?」

 翌日の朝、SHR前。詩織が、綾から聞きなれない単語を聞いたのはそんな時だった。

 「そ。聞いたことない?」

 詩織は、首を横に振る。

 「端末のことなんだけどね。RPGでいうギルドみたいな感じ。えーと・・・『組織未満の集団の拠点及び集団そのもの』だったかな・・・とにかく、そんな感じのものがあるのよ」

 「へぇ・・・」

 詩織は、一応返事を返すものの、いまいちピンとこないでいた。

 というのも、そもそもゲームというものをやったことのない詩織には、ギルドって何?という感じだった。

 「まぁ、とにかく、今日の放課後付き合ってね。仕事もあるから」

 「仕事?」

 「早速依頼が入ってきているのよ。ネットワークウイルスの討伐依頼」

 「え?でも、まだ、私・・・・・・」

 一度も魔術を使ったことないんだけど・・・。

 「綾さん、詩織さん、おはようございます」

 詩織がそう言おうとした時だった。

 未奈が、笑顔で挨拶をしてきた。

 「おはよ」

 綾が返す。

 「あ、あはよう」

 詩織も返す。

 「あー、それで、魔術のことだけど、それなら大丈夫。今日なら、暇だろうし、講師呼べると思うから」

 綾は詩織にそう言った。

 そう言って、未奈に改めて説明をする。

 その説明が終わると同時に、チャイムが鳴る。この、バカ広い学校に鳴り響く。




 「センパ~イ」

 「あ、来た来た」

 放課後の電子世界、綾の登録SN.015、通称"メトロポリス"。

 電子世界における巨大都市の一つだ。

 そのメトロポリスの超高層ビル群からはずれた北東区、モニュメントがあちらこちらに見られる自然公園の噴水広場で、快活の良い声が空気を震わす。

 自然公園というだけあって、公園には多くの木々が葉を揺らしており、空気は澄んでいて、メトロポリスでは名所の一つに数えられている。

 「すいません!お待たせしました、リオナです」

 「ううん、こっちこそ今日はゴメンね、急に講師役頼んじゃって」

 「いえいえ。センパイの頼みごとを断る理由がリオナにはありませんから」

 眩しいくらいの笑顔でリオナはそう言う。その表情から、その言葉は本心からのものなのだとわかる。

 「綾さんが言っていた講師って・・・」

 未奈の言葉、視線に込められているのは、“憧れ”。

 「あ、自己紹介がまだでした。えっと、初めまして。護姫・第四格位フィーア、リオナ・アルディッツェです。リオナと呼んでください」

 金の瞳、金のウェーブのかかったセミロングの髪をした、まだ僅かに幼さを残す少女は、未奈と詩織にペコリと軽く頭を下げた後そう言った。

 「これから、〈華焔〉のターミナルに行くんだけど・・・」

 「はいっ!ぜひともお供させていただきます」

 「よし。それじゃ、行こ」

 四人は、〈華焔〉のターミナルへと転送した。



 

 〈華焔〉のターミナルは、レトロな喫茶店のような造りをしていた。

 床や天井、柱などすべてが木製でできており、カウンターまである。

 だが、デザインはかなり近代的で、現代を生きる人間にぴったりだといえる。

 カウンター席は4つ、他にテーブルが3つあり、1つのテーブルに4つの椅子が配置されていた。

 カウンターの上にはメニューがおいてあり、コーヒーから始まりソフトドリンクまで名前が連なっていた。だが、このメニュー表には値段が書いていなかった。

 「そういえば、センパイのターミナルに来るのって初めてなんですよね」

 「あ~、そういえばそうかもね。あはは・・・・・渋いよね、やっぱり」

 綾は、未奈と詩織の〈華焔〉――正式名称、第三格位特別編成部隊〈華焔〉への登録作業をしながら、苦笑をもらす。

 「そんなことないですよ。とっても落ち着きます」

 「うん」

 落ち着く、そう言ったリオナの表情は、心から癒されている、と誰でも分かるようなものだった。

 綾は、ここまで表情に表せられるのは、かなり珍しいだろうと思った。そして、嬉しい、とも。

 「さてと。それじゃあ、本題に入るわよ」

 登録作業を終わらせた綾は、そう話を切り替えた。

 綾はそう言うと、テーブル席の一つに座り、ウィンドウを1つ展開する。

 そこには、"護姫任務依頼書"と書かれていた。

 そして、内容の欄には、『ネットワークウイルス"メルガディア"の討伐』の文字。

 「これが、今回の依頼。これを、私と未奈の二人で遂行するわ。その間、詩織はというと・・・」

 「詩織さんは、私と一緒に魔術の基礎を学びましょう」

 綾の言葉をリオナが継ぐ。

 「え?」

 「要するに、マンツーマンの勉強会です。私も《炎獄》なので、センパイからお願いされたんです。なので、センパイのためにも頑張ります!」

 リオナは、気合いを入れるように両の拳をぐっと握った。

 「な・・・なんで、私だけ・・・」

 勉強があまり得意ではない――それでも、平均からかなり上を行く学力を持っているのだが――詩織は、早くも弱音をこぼす。

 「みんなやったことです。何事も基礎が大事なんです。それに、自分で電子魔導楽譜を組めるようにならなきゃ、本当に魔術を習得したことにはなりませんから」

 実際はその限りでもないのだが。

 汎用電子魔導楽譜というものが、それのひとつだ。汎用電子魔導楽譜とは、文字通り属性さえ合えば誰でも使える楽譜のことだ。

 しかし、今回のリオナは講師役というのもあってか、少々・・・いや、かなり厳しい。

 ――ホント、はりきってるなぁ・・・。

 内心、そんなことを思う綾。

 「それじゃあ、センパイ。私たちはお先に。頑張ってくださいね、センパイ」

 「あ、うん。リオナと詩織もね」

 リオナは、詩織の腕を離すまいとしっかりと握りながら転送していった。

 「さて、それじゃあ、私たちも行くわよ」

 「あ、はい」

 綾と未奈も、リオナと詩織とは違う転送先へと転送した。


九重未奈――Mina Kokonoe


コード:《桜城の氷剣(エルナ・アイスレイド)》


第三格位特別編成部隊〈華焔〉所属


ライセンス:2nd


音色:クラリネット


能力:兵装


私立アンジエスタ学園高等部 1-C 特殊編入生

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