#38 Summer Live in The Dark――②
アゼンブリユ――それが、このホテルの名だ。完全予約制のこのホテルは、34階建てで部屋数は2000を超える。エントランスホールこそゴージャスで煌びやかだが、2階以上は雰囲気がガラリと変わる。どこもかしこも高級素材なのは変わらないが、全体的に落ち着いた色合いをしている。部屋は3種に分かれており、今回綾が予約した1207号室はこのホテルにおける4人用スウィートルームだ。家具はすべて機能性とデザイン性に優れており、トイレやシャワールームがあるのはもちろん、固定型大型壁面ディスプレイやドリンクバー|(アルコール類も完備)などが設置されている。無論、ベッドはふっかふかだ。
綾たちは、その部屋に一度荷物を置いた後、綾案内の下1227号室へと向かった。
綾は、目的の部屋の扉の前まで来ると、脇にあったスイッチをぽちっと押す。ぴんぽーん、と僅かに古風な音色が響く。どうでもいいが、現代のはもう少し音が高い。
「とぅあっ!」
という、返事にしては奇妙な声が返ってきた。直後に、解錠の音。綾は、ドアに軽く触れて開ける。ぱしゅーという音ともに木製のドアが右にスライドする。
「こんばんわ、レヴィーネ」
「おおー、綾か。あたしは待ちくたびれたよ~」
そう言って姿を現したレヴィーネ――エメラルドのぱっちりとした瞳、ボブカットの緋色の髪、綾と同じくらいの身長――は、特徴的なカットのTシャツにデニムのショートパンツという出で立ちだった。
「ごめんごめん。それより、中に入ってもいい?」
「おー、どんな速度ででも入っていいぞ~」
綾は、普通に入るわよ、と言い返しつつ中に入った。が、その歩みは3歩程で停止する。
「どうしたの?」
綾は、ぽかんと固まっている3人――詩織と未奈とリオナに声をかける。ちなみにエルカは固まっているのではなく、3人が邪魔で入れないだけだ。
「お姉さま、彼女と知り合いだったんですか?」
「あれ、言ってなか――ったわね。彼女の護衛をするのは、私は今回が初めてじゃないのよ。最初に護衛依頼を受けたのは――」
「綾が、中2の時だよ~。あの時はテログループ3組に同時に襲われたっけな~」
レヴィーネが、かつてを懐かしむように、とんでもないことをサラリと言う。ちなみに、レヴィーネが言ったテログループとは、いずれも術師集団のことだ。
「レヴィーネだって同い年じゃない。それに、あの時はホントに大変だったんだからね」
綾ははぁっと溜息を漏らす。本当に大変だったらしい。
「私がレヴィーネの護衛を受けるのは今回で4回目だけど、毎回何かしらに襲撃されているのよ。今回も十中八九何かあるから、皆気をつけてよね」
綾は4人にそう言うと、部屋の中へと入っていった。このホテルの、最高クラスの部屋へと。
♪
「この後一緒にお風呂なんかどーだい?」
今後の予定を確認し終えた時である。レヴィーネが、一緒に風呂に入らないかと誘ってきた――居酒屋に誘うサラリーマン上司のように。
綾は、時刻を確認する――午後21時。
食事は既に済ませてあった――ルームサービスを利用して、レヴィーネの部屋でそのまま食べることにしたのだ。
その後、大型壁面ディスプレイにてクイズ番組を鑑賞、結局予定確認を始めたのが20時40分。
そして、今に至る。
「私は別にいいけど……」
「私も賛成」
綾に続き、詩織も意を示す。
「お姉さまとお風呂……」
うっとりと頬を染めて妄想をし、態度で賛成を示す者が一名。
「…………」
どこかの情報統合なんたらでつくられた某ヒューマノイドインターフェース並みの頷きで示す者が一名。
「皆とお風呂かぁ……」
純粋に気恥ずかしさを覚えている者一名。
というわけで――
「決定だね~。んじゃ、各自準備整えてこの部屋の前に再集合ね~」
数分後、6人は再集合の後、大浴場へと向かった。
アゼンブリユには、メインの大浴場のほかに、露天風呂やジャグジーバスなどがある。また、効能別にいくつかに分かれていた。ちなみに、ここには混浴も存在するが、いかんせん女子しかいないため、そちらに向かうことはまずない。
「お姉さま、私に背中を流させてください」
浴場の中へと進みながら、綾と平行して歩くリオナが艶やかな声で言う。その声音は、いつにも増して無駄にエロかった。
綾が、別にいいわよ、と断ろうとして視線を向ければ、そこにはまぁなんともうるっとした瞳が。胸の前で小さく手を合わせて、上目遣いで、懇願するような視線で――。断われという方が無理だった――少なくとも綾にとっては。
「お、お願い……しちゃおうかな」
そう言う綾の頬も、気付けば朱みがさしていた。
レヴィーネは、その様子を見ながら、ほほぅなどとニヤついている。
そして、その後綾はリオナによって全身をくまなく洗われた。泡を纏った綾は、ここに男がいなくて別の意味で本当によかった、そう思わせるほど――綺麗を通り越してこれまたエロかった。男がいたならば、今の綾を見ただけで卒倒し、へたをすれば派手に流血していたかもしれない。なにせ、リオナですら理性を抑えるのに必死なのだ。
泡を流しきった後は、後でまた――以下略。スベスベとした白い肌に、濡れた長い髪が張り付いて――リオナのリミッターが吹っ飛びそうになる。
未奈などは完全に真っ赤で、詩織まで顔を赤く染めていた。
リオナは限界を感じ、綾が使っているところから最も遠いシャワーの前まで退避、自らを洗い始める。
綾は仕方がないので、自分で髪を洗い始めた。
そうした工程を経て、綾はようやくといった感じで湯船に浸かる。その綾に、僅かに早く入っていたレヴィーネが寄って来た。そして、視線を綾の胸のあたりに落とし、
「また大きくなってない?」
ポツリとそんなことを漏らした。
次に、レヴィーネは先ほど洗い終えたばかりの未奈を見る。
「ふぅむ、綾に負けず劣らず……」
まるで変態だった。その後も一人一人見ては、感想を述べていく。
あまり、いいように言われなかった詩織が、綾に飛びかかる。理不尽だ―!!、などと叫びながら。
そうしてイニングの夜は更けていく――女風呂はぎゃあぎゃあと賑やかに。
この小説はどこへ向かうのか――百合?百合なのか?こんなはずじゃなかったんだけどなぁ。
ども、日焼けしすぎて鼻の頭の皮がペロンペロンな神崎です\(-o-)/
バイトでね……。この時期の駐車場の交通整備はマジでヤバイ。1日でかなり焼けましたよ。
今回の話、どこまでならば許させるかマジで悩みました。
描写を書きすぎれば十八禁になりかねない、お風呂。
これ以上をお望みの方は、どうぞ脳内で。
そんなわけで、本日はこれにて。では。