#33.5 新人術師のための術師講座②
綾 「第二回、あったんだ……」
詩織 「先生、今回もお願いします」
綾 「うむ……じゃなくて。こっちまでキャラがおかしくなるからやめてくれない?」
詩織 「講師を先生と呼ぶのは普通のことです、先生。そんなことより、今回は魔術基盤のことを教えてください」
綾 「魔術基盤?」
詩織 「そうそう。結構出てきている単語だけど、よくわかんなくて」
綾 「魔術基盤……えーと、なんて言ったら分かりやすいかなぁ」
詩織 「魔術の大元……っていうのは違うの?」
綾 「魔術そのものの大元は魂で、エネルギーとなっているのが音だから、それは違うのよ。えーと、『魔術の属性を決定づけるもの』かな」
詩織 「属性……火とか氷とか、そういうの?」
綾 「うん、それ。本当はほかにもイロイロあるんだけど、魔術基盤の根幹になっているのがそれ。例えば私の場合、魔術基盤によって魔術の漠然としたエネルギーが雷に変えられるのよ。それと同時に、基盤へ記録した楽譜で、形や効果、撃ちだされる位置や最終的な魔術の大きさなんかを調節するってわけ」
詩織 「……………???」
綾 「能力も基盤に記録されているから、当然使用するときは魔術基盤を介することになる。それに、能力を使わなきゃ魔術の形成が成り立たないときは、楽譜に能力のことも一緒に記述しなくちゃならないから、当然その分楽譜を書くときの難易度が……って聞いてる?」
詩織 「き、聞いてる。ちゃんと聞いてるから!理解はできてないけど……」
綾 「つまり、結局はそういうことってわけ」
詩織 「何が?」
綾 「ただの一術師が、魔術基盤とかそういうことの細かいところまで理解する必要は、基本的にないってこと。これはラーゼリッタと同じこと。OSのシステム構造を知らなくても起動できるし、機能さえ知っていれば少し凝ったテキストファイルも作れるでしょ?」
詩織 「まぁ、そうだね。というか、綾が勝手にベラベラと喋っていただけのような……」
綾 「う…………っ」
詩織 「今回のまとめ。『綾は相変わらず頭がよくて、私のような勉強が苦手な人をイジメます』」
綾 「イジメてないでしょ!」
詩織 「おぉ!あの綾が珍しく声を荒げている。これはまさか……」
綾 「……電子世界まで付き合って」
詩織 「お、温度が一気に氷点下まで下がった……。え、エフェクトが青くて暗い!?……み、皆さん、綾はツンデレ化なんて生易しいことはしてくれないようです……私も初めてしりました」
綾 「そういえば、あの時も……」
詩織 「何のこと!?」
綾 「はっ!…………どうしたの?」
詩織 「へ?あ……あはは…な、なんでもない、なんでも!」
綾 「あぁ、ごめんね、大きな声出しちゃって」
詩織 「え?……い、いや、いいんだよ。私こそゴメン」
綾 「何謝ってるの?」
詩織 「え?あ……いや……」
綾 「親友なのにイジメ呼ばわりしたこと?それなら大丈夫」
詩織 「そ、そう?」
綾 「私は記憶力いいから」
詩織 「――――――っ!!」
詩織はその後数分間、震えが止まらなかったらしい。