#18 <華焔> vs ベルガッセ――③
「祐太」
未奈は、祐太の背に向かって声をかけた。
「私も戦う」
振り向いた祐太の表情が――揺らいだ。
敵はギルド総戦力。
対してこちらは、それぞれの第三格位がいるとはいえ、未奈自身を含めてたったの5人だ。
危険は大きいと言える。
それでも――いや、だからこそ、未奈はもう一度その言葉を投げる。
「私も戦う」
未奈も術師で、そして今は<華焔>のメンバーだ。
相手が違法術師たちである前に、仲間が戦っているのを傍観するのは、ましてや自分ひとり逃げることなどできなかった。
「これは、私が原因だから。いつまでも守られてるわけにはいかない。私自身が終わらせなきゃいけない戦い。そうでしょ?」
未奈は、俯きかけた祐太の顔を強引に上げ、真っ直ぐに見ながら、そう言った。
その瞳には、力強い光が宿っていた。
「・・・・・わかった。でも、無茶だけはしないでくれ」
「わかってる」
未奈には、祐太が本気で心配しているのが、手に取るようにわかった。
そして、そんな風に心配するのは、これが初めてじゃないことも知っている。
昔からそうだったから。
もう少し自分のことを考えたらどうだろう、と何度も思った。
だけど、それを口にしたところで何も変わらないことも分かっていた。
祐太は、そういうやつだからだ。
あの時も、今も、もっと再会を喜びたいはずなのに我慢している。
理由は、ごく単純なものだろう。
――本当に、なんにも変っていない。
未奈は、そんな感想を抱いた。
だから、その心配をすこしでも緩めてやるべく、あえて上から目線で言った。
「そうさせないのが、祐太の役目でしょ」
「あぁ、そうだな」
もう戦闘が始まっているようなものなのに呑気だなぁ、と笑みを零す祐太を見ながら呆れ混じりに、未奈はそう思った。
♪
「羨ましいねぇ、まったく」
綾は、未奈と祐太の様子を見ながら、あれは幼馴染を少しばかり超えてないか?、などと思いつつそんなことを呟いた。
「どっちが?」
「どっちも。まぁ、ようやく素の未奈を見れたからいいかな。あの呼び方ですら、まだ仮面の上だったみたいだし」
「なんの話だ?」
「なんでもいいでしょ。それで、どうするのよ?」
「んー・・・。綾、ステイル頼めるか?」
秀は、続々と電子魔術を起動していく敵戦力を眺めながら、隣の綾に訊ねた?
「もう戦闘始まってるようなもんなんだし、あまり待ってもくれないでしょ」
「じゃあ・・・・・」
「いいわよ、それで」
「決まりだな」
そう呟くと同時に、秀は駈け出した。
ステイルの向こうにいる、敵ギルドの術師群に向かって。
一方綾は、ステイルを見据え、そして呟く。
「電子魔術・レグリマ、起動」
廃街の中心で今、雷鳴が轟き、同時に処罰を下すためのシステムが起動する。