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雷蝶の奏曲  作者: 重鳴ひいろ
二章
18/76

#13 mail

 綾とともに<華焔>にとって初となる依頼をこなした日から数日後。

 朝の日課となっているメール確認をするためラーゼリッタを起動し、E-メール用のアプリケーションを展開すると、一件の着信があった。

 件名はない。

 メールの送り主は、未奈に衝撃を走らせる人物だった。











 その日の放課後、未奈は一人、メールによって指定された場所に来ていた。

 TN.007430――そこは、廃屋が並ぶ小さな街だった。

 すべて石造りで、それが古風な雰囲気を醸し出していた。

 このターミナルは、管理が放棄されて久しいようだ。

 管理人が健在ならば、そう設定しない限り、ここまで荒れたりはしない。

 だが、管理放棄がされた公式ターミナル(ターミナルナンバーがついているターミナル)は少なくない。

 というのも、ターミナルとは個人で複数構築できるものであり、人間は飽きやすい動物だからだ。

 そんな廃れたターミナルの中心に、一人の少年がいた。

 未奈にとって、決して忘れることのない顔。

 それは、幼馴染の顔であり、違法ターミナルに所属する違法術師の顔でもあった。

 未奈は、少年――坂井祐太の顔を見据えた。

 「罠だってことはすぐに分かったはずだ。何で来たんだ?」

 「説得するため。なんで違法ターミナルになんているの?」

 祐太と未奈を、雲によって欠けた夕日の朱色の光が照らす。

 「それは何度も言ったはずだ。それに、そんな話をするために呼びだしたんじゃない。・・・・・・後悔するなよ」

 祐太は、未奈に辛さに必死に耐えるような表情で告げる。そして、呟く。

 「"縛"」

 その瞬間、未奈は拘束された。

 <華焔>を、正確には護姫(プリンセス)である綾を呼び出すための人質として。











 脳内に、メール着信を知らせる音が響く。

 今は放課後なので、サイレントを切ってあるのだ。

 綾は、アプリケーションを開き、メールを確認する。

 件名はなかったが、添付画像が一つあった。

 そこには――

 「未奈・・・・・・ッ!」

 内容はこうだ。




 九重未奈を助けたければ、"シュカズ"を持って、TN.007430に来い




 時代錯誤をしているとしか思えないような脅迫文だったが、今の綾にとってはそこはどうでもよかった。

 問題は、未奈が人質として拘束されている(これ自体時代錯誤なのだが)、これだけだ。

 交渉材料のことは犯人に訊かなければ分からない。

 綾は、すぐさま隣を歩く詩織に声をかけた。

 そして、急いで事情説明、ここに残るようを言った。

 「なんで!?」

 詩織は、当然のように聞き返した。

 「相手が個人とは限らない。最悪ギルド(ターミナルと同義だが、複数の意味を持つターミナルは紛らわしいので、集団を指す場合はギルドが一般的)を相手にするかもしれない戦闘に、詩織が参加するのは危険すぎる」

 「でも・・・・・・!」

 「全部終わったらちゃんと説明するから」

 「そうじゃなくてッ!」

 そう叫んだ詩織の瞳は憂いを帯びていた。

 それで理解した。だから、綾は笑顔で返す。

 「私なら、大丈夫。だって、もう一人じゃないから」

 綾は、急いでエルカに連絡をとった。そして、メールの内容を伝え、現地合流するよう指示する。

 「それじゃ、行ってくるね。必ず助けて帰ってくるから」

 綾は、電子世界にログイン、目的のターミナルへと跳んだ。

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