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雷蝶の奏曲  作者: 重鳴ひいろ
二章
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番外編/新入生歓迎会――③

 そうして迎えた、新入生歓迎会。

 講堂で行われるこの新入生歓迎会――立食パーティーは、すべて生徒会が取り仕切っている。

 そして、その生徒会の会長は、あの先輩だ――何も起こらない、なんてことはあり得ない。

 「それにしても――」

 隣でフルート型のシャンパングラス(中に入っている飲み物は無論ノンアルコール)をくるくると小さく回しながら、詩織が唐突に口を開く。

 「綾って、ホントにお嬢様だったんだね」

 「それ、パーティーの度に言ってるけど、飽きない?」

 「うーん、割と飽きた」

 詩織だってそうだろ!――と、内心でツッコむ。口には出さない。というか、出せない。

 私は、詩織と同じシャンパングラス(中身も同じ)を傾けて、中の炭酸飲料(何度も言うがシャンパンじゃない)に口をつける。

 味はまあまあといったところだ。まぁ、こんなものだろう。

 私はグラスをテーブルの上に静かに置いて、会場内を見渡す。

 パーティなので当然ながら、全員パーティードレスだ。中には、アクセサリーつけすぎだろ!と内心で叫んでしまった生徒もいたけれど、それがパーティーかとよくわからない納得をして、思考を切り替える。

 規模や目的は別として、パーティなどの文化は、廃れることなく未だに残っている。

 特に、こういった社交性のあるイベントは、結構残っていたりする。

 もっとも、私はあまりそういうのに参加しないんだけれど。

 そんな、どうでもいい思考にふけっていた時だった。

 「私立アンジエスタ学園高等部へ進級・新入された皆さん、今日はお集まりいただきありがとうございます。私は、新入生歓迎会の司会を務めさせていただきます、高等部生徒会会計の来栖実といいます。よろしくお願いします」

 来栖先輩は、スポットライトが当たる中そこまで言い終えると、ぺこりと頭を下げた。会場内が拍手の音で満ちる。

 「では、まず始めに、本校の校長先生より、祝辞をいただきたいと思います。校長先生、お願いします」

 スポットライトが移っていき、出てきた校長先生を照らす。

 校長先生の話が終わったのは、約5分後だった。

 「長っ………」

 隣で詩織が、思わずといった感じで呟いた。

 私はそれに苦笑いで応じる。

 「続いて、本校の理事長から祝辞をいただきたいと思います。理事長、お願いします」

 理事長の話は2分ほどで終わった。

 「続いて、高等部生徒会会長の城峰紗弥佳から、祝辞をいただきたいと思います」

 あぁ、ついにこの時が来たか、と私は思った。

 「進級・新入された皆さん、改めておめでとうございます」

 この時点では、いたって普通の祝辞だ。

 特におかしな所はなく、ましてやふざけているところもない。

 だが、この先輩は最後に宣言してくれた。

 「さて、突然ですがここで、第25回(嘘)進級・新入生大カラオケ大会を開催します!」

 まぁ、この手のイベントは割とよくあることだ。特に、同窓会とかでは。

 そして、カラオケや同窓会も現存する文化の一つだ。

 それよりも問題なのは、あの(・・)先輩が開催したイベントだということだ。

 「ここで、特別ルールを説明します!本カラオケは完全指名制で、なおかつ指名された人は私たち生徒会と校長と理事長が用意した衣装に着替えてもらいます。もちろん、衣装の方は抽選で決めるので、何が出るのかはお楽しみ。では、まずは一人目。開催者である私が、Eaeth/地球/中国発祥のチャイナドレスを着て、歌います!曲は――」

 私にはよくわからないが、世の中にはこんな言葉があるという。


 『オタク文化は永久不滅。萌えは世界の活力なり』


 さっぱり分からない。萌えって何?

 「相変わらずだね、あの先輩は」

 見れば、隣でシャンパングラス片手にははは、と詩織が笑っていた。

 ステージの方へと視線を移せば、なるほど確かに笑みの一つも零れるか。

 そんな風に油断していたのがいけなかったのだろうか。

 「それじゃあ、次は………栗原綾さん!お願いしまーす!」

 は?あの先輩様は、今なんと?

 「綾、指名されちゃったねぇ」

 「えぇぇええっ――!?」

 私は、気付けば叫んでいた。



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