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5 お風呂が無い


 夕食後、部屋に戻って手に入れたゴブリンの牙いくつか取り出しゴーグルで見る。そうすると、今の自分で作成可能なアイテムのレシピが記載された半透明のボードが目の前に出てきた。


 ポーションと組み合わせる事で『ケミカルドラッグ』と言う薬液になるようだ。

 サクッと作ってみる。ポーション同様、瓶詰めされているのは同じだが、デザインがまるで違うのは突っ込んだら負けなのだろうか。


 早速ケミカルドラッグのレシピをチェック。先程ゴブリンからゲットした『チカラ草』が表示された。これを組み合わせると……


――――――――――――――――――――――――――――


【パワフル草】 レア度:特 分類:食材

チカラ草より効率よく筋力が増加する。

風味や劇薬なのは変わらない。


――――――――――――――――――――――――――――


 そしてそのパワフル草にもケミカルドラッグを使う事で……


――――――――――――――――――――――――――――


【マッスル草】 レア度:幻 分類:食材

かつて仙人が愛用したと言われる幻の薬草。

一つ食べるだけで力が漲っていく。もちろん劇薬。


――――――――――――――――――――――――――――


 となる。チカラ草の摂取制限はまだかかっているが、種類が違うためかパワフル草、マッスル草は各一つずつ食べる事が出来た。

 しかし依然として腕はプニプニのまま。多分目に見えるものではなく、内面的な力が向上しているのだろう。多分。


 ちなみにマッスル草から先はないようだ。

 これで少しは非力な身体が改善されると良いなぁ。



 

 この世界に謎転移して数日。色々分かってきた。

 魔法やスキルと言う不思議な力があるとか、冒険者ギルドと言うお悩み相談施設があるとか、それはおよそ地球の常識など通じない場所だって事だ。


 だが、今の私が直面する問題に比べれば、こんなもの些事に過ぎない。

 その問題とは――。


「風呂が無い」


 いや、無いだと語弊が生まれるか。風呂自体はある。ただ、現代日本のようなイメージは今すぐ捨てよう。

 大体は行水か、蒸し風呂だ。枝で身体を叩くとか。そんなんで綺麗になるとでも……いや、これは現代の価値観を持つからだろう。この世界、この時代の人たちからすればこれが常識で当たり前なのだ。


 郷に入っては郷に従え……とは少し違うが、この世界で生きる以上、私に文句をつける筋合いはない。

 

 だが……それでもこの生活は耐えられない。私はインフルエンザでも風呂に入るくらいだ。

 別に潔癖症ではない。一日中、部屋に籠っていても夜になれば臭いや皮膚のヌメリが気になるだろう? それを落とさないまま寝るのが嫌なだけだ。


 不幸中の幸いか、何故か身に着けている衣服は汚れも臭いも付かなかった。鑑定してみたら、ゴーグルやカバンと同じく不思議な能力が宿っていた。どんなに汚れても真夜中を回ると自動的に洗浄されるという。

 どうせなら身体も綺麗にして欲しい、と思うのは贅沢か。


「……で、そんな訳でして。何かご存じありませんか?」


 私は絶賛、冒険者ギルドの相談窓口に来ていた。依頼などを出す前に、まずは職員さんが相談に乗ってくれるというシステムがあるのでそれを利用してみた。

 ナイスミドルなオジサンは首を捻りながら、呆れ顔を作る。


「嬢ちゃん、綺麗好きだねぇ。もしかして良いトコの生まれなのかい? 身体を綺麗にするアイテムなら、『禊石』ってのがある。ただこの村にはないね。ここから20リグス先のヴボルトワーズって街に行けば買えるが……」

「……そうですか」


 1リグスは大体一キロ。つまりニ十キロ。遠い。馬車、あるいは魔法があるとはいえ、遠い。そのどちらにも縁がない私には遠すぎた。


 馬車の定期便は高い。日本で言う新幹線みたいなものだ。自転車も車もない世界、馬を利用した乗り物が現状最速になるので当たり前だろう。


 移動魔法はもっと稀有だ。いたとしてもボられるのが目に見えている。ならスライムソードを売って荒稼ぎをするか? 


 無論、ノー。まず悪目立ちする。現代でも普段出回らないモノが大量に出品されたら怪しまれるのと同じだ。この世界の取締機関がどういったモノなのか、判明しない内は迂闊な行為は避けるべきだろう。

 もし中世ヨーロッパの魔女狩りの異端審問みたいな、怪しきは拷問&処刑みたいなノリだったらシャレにならない。


 だから今はまだ、無難なモノを売り捌くだけに留める。可能なら一本くらいはどっかの金持ちに売りたい。


「いや、ちょっと待てよ……、ああそうだ。エルフの泉ってのが近くにあった」


 職員のオジサンはテーブルに村近辺の地図を広げる。南東の小さなため池が私の修行場だ。そこから更に南に行くと、木々に囲まれた泉があるという。


「ここの泉の水はエルフが好むと言われるほどに透き通っていてな。水底にその元となる禊石があるらしい」

「……なるほど」


 歩いていける距離だし、ダメ元で行ってみる価値はありそうだ。


「ありがとうございます。ここに行ってみます」


 私は早速向かう事にした。


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