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4/11

4 厳選


 私は現状確認のためにも一旦、修行場にまで引き上げる。

 とにもかくにも、この剣だ。


 スライムソードを片手で持つが……重さは感じない。長剣サイズなのに軽いのはこの剣の特性?

 なら有難い能力だ。なんせ男だった時は運動不足のオッサン、今は少女。少し重いものを持つだけで重労働だ。

 

 切れ味も悪くない。草に向かって振ると面白いほど、スッパリ斬れる。


 これならダンジョンも何とかなりそうだ。

 もう一度潜りたいところだが、日も暮れてきたので村に戻る事にする。



 宿に帰ると夕食の時間だった。

 そう言えば昼ごはんを食べ忘れていた……。思い出したように泣く腹の虫。


 食卓に並ぶのはパンとラム肉とスープと言うシンプルなメニュー。白米と味噌汁が恋しい。


「いただきます」


 パンは朝と同じでサクサクだが、肉が少し硬い! 筋張ってる! 

 スープは美味しいので千切ったパンを浸し、頬張ると口の中で熱いコンソメ風味が溢れた。


「おい、この近くにオークが迷い込んだって本当か?」


 俺の隣に座る恰幅の良い男がドワーフ族に話しかける。


「ああ。勘弁してほしいぜ」


 この世界には色んな種族が生きている。その中にはオークもいる。身体がデカくて、凶暴で、恐ろしい奴……と言われていた。

 ゲームや映画でもほぼ悪役として出てくるくらいだし、この異世界でもご多聞に漏れず評判は悪いようだ。


 イヤだなぁ。あんな剛腕でぶん殴られたら一発で死ぬぞぉ……。




 翌日……。私はダンジョンへ向かう。近くにオークがいるらしいけど、流石にこんな街道のど真ん中には出ないか。

 ダンジョンの洞窟に入ると、背中に背負ったスライムソードを抜く。暗闇の中で青い刀身は美しく煌めていた。


「スライム見っけ」


 昨日と同じくコッソリ近づいて不意打ちをかます。斬! とスライムは真っ二つに裂かれ、素材と宝箱になる。宝箱の中身は……またしてもスライムソード!?


 いや待ってくれ。百年に一度って言ったよな? 何でまた出るんだ? ボードに問いかけるが、もちろん返事はない。

 二刀流でもやれと言うのだろうか。無理がある。とは言え、放置するわけにはいかないのでカバンに素材と一緒に放り込んだ。


 しばらく進んでいくと、階下に下る階段が見えてくる。このダンジョンは小規模なので1フロアの大きさも大したことは無いのだ。


 もう少し進むか止めるか……。

 

 少し悩むが、進む事にした。

 この剣があればまだ行ける気がする。


 

 地下二階も似たような景色が続くが、スライムの代わりに別の魔物が出始める。人型の魔物、ゴブリン。背丈は子供ほどだが、信じられないほどに好戦的で凶暴だ。


 ただしスライムとそう強さが変わらないのが救いだろう。ハッキリ言って弱い。


 私以外の冒険者からすれば、だが。


「おわっと!」


 ゴブリンの棍棒が先程まで私の頭があった場所を通過していく。当たったらシャレにならない。


「くっ!」


 今度はこっちが斬り返す。へっぴり腰から繰り出される斬撃をゴブリンは余裕綽々で避けていく。


「はぁ……はぁ……」


 やっぱ帰るべきだったか。手強い! 本当なら不意打ちするはずだったんだが、うっかり足音を立てて気づかれてしまったのだ。

 しかしゴブリンも肩を上下させている。どうやら向こうも相当参ってるらしい。このチャンス、逃すわけにはいかない。


「はぁ!」

「ギィ!」


 互いに走り出し、交錯。少しの間があって、白目を剥いて倒れたのはゴブリンだった。


「……勝ったぁ……」


 私もドッと疲れてへたり込む。どんなに武器が優秀でも使い手がヘッポコでは、宝の持ち腐れだと痛感する。今勝てたのも武器の性能差のお陰だろう。木の棒だったら百パー負けてたと思う。


「あ、素材回収しないと……」


 立ち上がって散らばってる素材を拾う


――――――――――――――――――――――――――――


【チカラ草】 レア度:希 分類:食材

食すと筋力が増加する。劇薬なので一日一個を厳守する事。

風味は塩辛い。


【小鬼の牙】 レア度:普 分類:素材

ゴブリンの牙は一週間単位で生え変わる。射撃に秀でた個体はこの牙を弾丸として利用する。

砕いて粉末状にすると、薬の材料にもなる。


――――――――――――――――――――――――――――


 筋力……増加!?

 これは、いわゆるドーピングアイテムか!? まさか自身の弱さに嘆いていたら、それを解決する逸品が出てくるとは……。


 私は逸る気持ちを抑え、草と根元に実ったその実を口に含む。カリカリと軽い音がして、味は確かに塩っ辛い。劇薬抜きにしても、こんなの食べ続けたら太るぞ。


「あんまり……変わった感じはしない」


 牙の方はポーション系のアイテムの素材か? 後で試そう。


 そして最後に……宝箱。

 スライムと同様にゴブリンも落とした。果たして中身は……


――――――――――――――――――――――――――――


【ゴブリンシューター】 レア度:希 分類:武器 品質:普通

射撃王と呼ばれたゴブリンが使うスリングショット。高い命中精度を誇る。


――――――――――――――――――――――――――――


 え?

 スライムの勇者の次は射撃王のゴブリン? 何なんですかこれ。

 実は誰にでも手に入るアイテムなのか……?




「そんな訳ないでしょう。スライムソードは今だと時価にして十万ラドロンです。蒐集家の貴族なら金に糸目をつけないでしょう」


 ですよね。

 村に帰った後、魔物の素材を買い取ってくれる冒険者ギルドの受付の人に尋ねてみたところ、丁寧に説明された。

 値段に関してはよく分からない。日本円とのレートが不明なので。


 ただ間違いなく超高価なモノにはなる。

 ちなみに貨幣の価値はこんな感じ。

  

 鉄貨=10ラドロン

 銅貨=100ラドロン

 小銀貨=1000ラドロン

 大銀貨=10000ラドロン だ。


 金貨や白金金貨は高価すぎて一般には出回らないらしい。主に国家間のやり取り、大商人同士の取引でのみ使われるとの噂。


 で、暫くゴブリンやスライムを倒したんだけどほぼ毎回、宝箱から出たんだよなぁ。

 

 見落としていたのだが武器には品質と言うものがあり、質が良いと切れ味も良くなる。これはスライムソードで検証済みだ。


 品質が低いものは岩を切れないが、高ランクだとスッパリ切れる。更に高ランクでもより良い物には武器自体が持つ能力に加え、スキルや特殊な装備効果が付与されている。

 ひたすらゴブリンとスライムを狩りまくって厳選した結果がこちらだ。


――――――――――――――――――――――――――――


【スライムソード】 レア度:幻 分類:武器 品質:最高

百年に一度生まれるスライムの勇者を倒すと手に入る宝剣。

驚異的な切れ味を有し、スライム系モンスターへの特効を持つ。

【移動速度UPLv2】【攻撃力UPLv3】【スキル:スライムガード】



【ゴブリンシューター】 レア度:希 分類:武器 品質:最高

射撃王と呼ばれたゴブリンが使うスリングショット。高い命中精度を誇る。

【スキル:隠密Lv2】【スキル:エンチャントフレイム】


――――――――――――――――――――――――――――


 もっと頑張れば良いのが出せたかもしれないが、限界値が不明なので妥協している。

 と言うか、ダンジョンにスライムとゴブリンが出なくなった。絶滅したのかと一瞬焦ったが、ある程度狩り尽くすと出なくなり、夜中にダンジョンの内部はリセットされ、また出てくるようになるらしい。


 まあ、単純に一つのアイテムを突き詰めるというのが出来そうにない。コレクターは手に入れるのが第一なわけで。

 ここは緩くやっていこうと思う。

 

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