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10 死闘


 怪我人を、そして介抱する子供たちを守るために私は駆け出す。軽傷の人たちも続いた。


「グゥオオオオオオ!!」


 村の中に侵入したジ・オルクが咆哮を発する。前線の人たちはどうなったんだ? まさか、全滅……。


「っ!!」


 私は首を振って弾を引き絞る。大丈夫だ、大丈夫……!


「村から出ていけ、化け物!!」


 燃え盛る炎に包まれた弾丸が顔を吹き飛ばす。


「新入りに続け!」


 周りの人たちは武器を構え、吶喊していく。斬りつけ、斬りつけられ、血を流し、血を流され。泥と鮮血が入り混じっていく。


 指先が激しく痛んだ。先程からずっと弾を打っていたせいだろうか、爪が捲れていた。ポーションを飲みたいが重傷者優先だ。自分だけ楽をするわけにはいかない。


「――つぅ!」


 しかし、一際ズキリと痛んだ拍子に弾を落としてしまう。それを見逃さないオークはいない。ジ・オルクと二匹のオークがこちらへ向かってくる。

 もう射撃は間に合わない! 


「ッぁあああああ!!」


 私はカバンからスライムソードを抜き放った。目前に迫るオーク目掛け、両手で遮二無二突き込んだ。


「グギュァ!?」


 偶然、その刃先が喉笛を捉えていた。ドパっとオークは黒い血を浴びせ、倒れ伏す。


「ゴガア!!」


 更にもう一匹、斬りかかって首を跳ねてやった。


「はぁ……はぁ……」


 残ったジ・オルクは私を見て無言で背中から巨大な弓を取り出す。


「ッ!?」


 ――ヤバ、イ!!


 横っ飛びで物陰に飛び込んだ。同時に地面を深々と抉り取る大きな鏃。こんなの喰らったら捥げるぞ!?


「だったらこっちも!」


 私はゴブリンシューターを引き絞る。弾は二発同時だ。


「喰らえ!」


 燃え盛る二条の火炎弾がジ・オルクに襲い掛かった。奴はそれを鋭いバックステップで躱し、避けながら矢を放ってくる。


「ク、ソ!」


 迷わず物陰から飛び出す。放たれた矢は一撃で私が隠れていた木箱を粉砕した。


「お返しだ!!」


 今度は三発。三叉の炎が眩い火炎の軌跡を描いていくが、奴はやにわに弓を投げ捨てると今度は剣と盾を取り出した。振りかざした盾は難なく弾丸を受け止め、撃ち落としてしまう。


「……マジか」


 思わず笑いたくなる私に、奴は無言の驀進。分厚く粗雑な大剣を振り上げる。


「冗談きついでしょうよ!!」


 私もスライムソードを構えた。真上から降り注ぐ落雷のような袈裟斬り。


「ぅあッ!?」


 その凄まじい衝撃に両足が地面にめり込み、手が痺れる。


「かっは――!?」


 そして腹部に重い圧迫感。奴のヤクザキックがまともに腹に入ったと分かった時には吹き飛ばされ、壁面に叩きつけられた。


「ぐ、ゴボ……」


 口からは悍ましいまでの吐血。息が出来ない。

 私は必死にカバンをまさぐり、ポーションを取り出して血の塊と一緒に嚥下した。


「っはぁ……し、死にかけた……」


 真正面からやりあったら絶対勝てない。攻撃力も防御力も遥かに上だ。スライムソードじゃなかったら、最初の一撃で刃をへし折られ、斬り捨てられていた。今の蹴りもスライムガードで緩和されている。もし生身で受けてたらやっぱり死んでいただろう。


「グォオオオオ!!」


 起き上がった私を見るなり、ジ・オルクはまた剣を振り上げてくる。

 少しは考えさせてくれ!


 再び来る重厚な袈裟斬りを全力のバックステップで避けた。砕かれた地面の破片が凄いスピードで頬を切り裂いていく。


「どうすりゃ良い!?」


 スライムソードもゴブリンシューターもダメだ。私に何ができる? 私にできるのは……!

 意味もなく頭を掻きむしろうとした手が、それに触れた。


 ――鑑定ゴーグル。


 そうだ……何をムキに武器でやり合おうとしてるんだ。

 私の本懐は剣で戦う事でも、シューターを打つ事でもない。


 アイテム生成こそが、与えられた力じゃないか!!


「使えそうなのは……!」


 ゴーグルをつけると、使用可能な素材を教えてくれる。破壊された木箱や周りにある樽にそれがあった。


――――――――――――――――――――――――――――


【ナイター】 レア度:普 分類:素材

硝石の一種。このままでは爆発しない。


――――――――――――――――――――――――――――


 私はそれを掴み取り、雑貨屋で購入した火種と組み合わせる。

 眩い光と共に、それが作り出された。


――――――――――――――――――――――――――――


【デュナミネイト】 レア度:普 分類:道具

岩盤破壊用の爆薬。取扱注意。


――――――――――――――――――――――――――――


 筒状のそれは地球でのお馴染みの爆弾だ。だがこの雨では導火線に火をつけても消えてしまう。どうやって起爆させるか……


「――やるしかないねぇ」


 もう一度、腹を括るか。出来なきゃ死ぬだけだ。


「ゴガアアアアア!!」


 ジ・オルクは三度、突進してくる。私はそれに対し――迷わずに突っ込む。

 ぐんぐんと縮まる距離。


 落ち着け……焦らず、確実に……!


「ガアアアアア!!」


 必殺の威力を秘めた袈裟が落ちる。私はそれを死ぬ気で躱し――避け切れずにザックリと頬を抉られる。それでも構わずに、奴の鎧の隙間にデュナミネイトをねじり込んだ!


「吹き飛べ、化け物!!」


 後ろへ飛びながら、ゴブリンシューターで狙い撃つ。奴の、鎧の隙間を。


「ボン」


 火炎弾が直撃した瞬間、空気を揺るがす大爆発が巻き起こった。

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