第2部 Tokyo Ophionids - 6
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トーキョー港、と言うべきかどうかは知らないが、学校からそう離れていない桟橋からは、短い秋のオフシーズンでも朝と夜に水上バスが発着しており、それがトーキョーとヨコスカを海路で結んでいるため、唐突に始まったセージの通学任務にうってつけの交通手段になっていた。
その水上バスは〝二階〟建てではあるものの、小型客船と言って差し支えないスケールであったが、通常の船舶によく採用されるスクリューによって推進力を得るのではなく、ポンプで汲み上げた海水を後方に押し出す圧力で航行する、という規模の大小は違えど原理としてはセージが乗り込んでいる母艦と同様の推進方式を採用していて、さらには、水中翼という二〇世紀に確立された技術を未だ用いているようだった。
水上バスが停泊している時、その船体は一般的な船舶と同様、海面に浮かんでいる。
しかし、機関に火が入って航行を開始すると、激しいエンジンサウンドと白く濃い航跡を曳きながら、みるみるうちに船体が浮き上がっていく。姿勢制御が利いているのか、浮遊感は意識しなければ客室のシートベルト付き座席にいるだけではあまり感じ取れなかったが、目線が高くなっていることは、高層ビル群に挟まれた紅白の航空標識が塗装された旧電波塔を見ても明らかだった。それに船の速度だって、ガントリークレーンが並ぶバースの前ですれ違う他の船舶と比較すれば数段上に見えた。
セージも船上生活が長いだけに、こうした船舶技術に全く興味がないわけではないので、最初の数日は行き帰りに客室の窓から船体底部の水中翼を覗き込もうとしたが見えるわけもなく、そこで出港前に舳先や艫の側から喫水線下の翼を見てみようとしたが、そのうち運航会社の係員や船員が笑ってみていることに気づいて止めてしまった。
向こうがどんなつもりかは知らないが、何も知らない観光客だと思われるのは、セージだって良い気分はしなかった。
果たして、先方は先方で、どうやらセージを船舶工学に関心がある学生だと思ったらしく、ある日の朝、他の客がいない出港前のタイミングを見計らってセージのところへやってくると「興味あるの?」と尋ねてきて、セージが曖昧な笑みを返すと、それを是と受け取ったらしく、身振り手振りを交えながら、自社の機材について話してくれた。
曰く、通常の船舶はどれだけ速度を出そうとしても水の抵抗を受けるため、その速度には限界があり、40ノット前後が上限値となる。
しかし、本船を始めとした水中翼船は船体底部に翼を備えており、多くの航空機が空気という流体から翼によって揚力を得るように、水中翼船もまた水という流体から翼によって揚力を得て、船そのものを水面上に浮上させることで水の抵抗を最大限抑えられる。
これによって水中翼船は従来式の船舶に比して高速航行を実現しており、本船の場合は最大で時速八〇kmに達する、とのことだった。
実をいうと、セージもこうした水中翼の技術に関しては既に知識を持っていた。
ただ、その実物を日本で見ることになるとは思っていなかったので、興味本位で眺めていただけのことだった。
それでも、せっかく説明してくれている船員の親切を無碍にするのは気が引けたし、なにより日本語で専門的な話をされても案外理解できてしまう自分に彼自身困惑していた。
最後に日本語でまともな会話をしたのはもうずっと昔のことだった。
テルミと話す時だって、最初に会った頃を除けば殆ど英語だった。
それを不満に思うことも、不便に思ったこともない。
周りの国連職員や研究者たちは皆、英語で話していたし、彼の傍らから離れようとしない竜が受け入れられなかった以上、もう戻ることもないと思っていた。
だから、もう話すこともないと思っていた。
それなのに、今回の航海でいざ日本へ戻ってきたらどうだ。
空港や基地の管制官との航空無線だけでなく学校に通い始めた時も、思っていた以上にスムーズに日本語が自分の口から、あるいはもっと底の方から飛び出してきて、どういうことなのか自分でも良く分からない。
学校へ行け、と言われた時は授業の内容よりも言葉の方が難しいと予想していたのに。
セージはそういう自分に不信感すら覚えていた。
だが、そんなセージ側の事情を船員が知る由もない。
対応に窮したセージは取り敢えず、にこやかに笑って見せながら頷いていると、船員は理解の早い生徒に満足したのか、何か他に訊きたいことがあったら声をかけてくれ、と言い残して持ち場に戻っていった。
もっとも、それは悪いことではなく、以来すっかり顔見知りになった客船の乗組員とは登下校時には必ず挨拶を交わすようになったし、セージが折り畳み自転車を船に持ち込もうとした時にもそれとなくアドバイスをくれたりもした。
そうして、通学を始めてから二回目の土曜日。
その日も快速客船は穏やかな午後の波の上を海鳥のように飛び続け、東京からおよそ三〇分ほどで、セージの他に幾人もの観光客を横須賀の埠頭へ送り届けていった。
船員に片手をあげて「また来週」と中一日の別れを告げたセージは、折り畳み自転車を入れた袋を担いで、フェリーターミナルを出た。
自転車はそのままでは持ち込むことはできなくとも、収納ケースに入れてしまえば手荷物扱いで客室後方の手荷物置き場に持ち込み可能、というのはなんだか良く分からない話ではあったが、明文として定められたルールの枠内でうまく体裁を整えてやって現実に即した運用を行っていくことは、国連機関でも、どこの国でも良くあることで、求められることもであったから、それは日本に来ても変わらないというだけの話だった。
セージは人の流れを邪魔しないような場所でケースを外して、鮮やかな黄色の折り畳み自転車を手際良く組み立ててしまうと、力強くペダルを漕ぎ始め、大量のコンテナと輸出待ちと思しき自動車が整然と並べられた埠頭を走り抜けていった。
通学路を確認しようと事前に見た航空写真から判る範囲では、どうやら横須賀は半島の大部分を占める丘陵地帯と、すぐそこに迫る海岸部との間にある手狭な平地に、中規模の住宅地と赤錆びた工業地帯が同居する街らしい。
きっとネーデルランドのように、埋め立てによって拡張されたところもあるのだろう。
もっとも、山岳地帯と海岸部の狭間にある細長く狭い平地に都市が集中しているのは、日本列島全体の特徴と言えそうでもあったが。
セージは小気味良く立ち漕ぎで自転車を走らせていく。
公署と倉庫の間を抜けて、そのまま国道に出てしまっても良いのだが、もう少しだけ海に臨みながら進んでいくと、直に古い軍艦のシルエットが見えて来る。
なんでも一〇〇年以上前の戦艦を〝陸揚げ〟して、周囲を記念公園にしているそうで、今でも小綺麗に舗装されていて、観光客らしき人々の姿も見かける。
セージは大昔の艦影と芝生の広場を横目で捉えながら、左手に折れた。
公園の先は小高い丘を抱えたまま東京湾に突き出た岬になっているのだが、その岬全体がアメリカ海軍基地になっていた。さすがに用もなく通れる場所ではないので、おとしなしく国道に合流する針路をとる。
埋め立て地のせいか、起伏がすくない平坦な道に自転車を転がしていく間、次々と後方に流れていく横須賀の風景は、一〇階建てくらいのマンションやホテルにオフィスビルといった中層ビルが敷き詰められるように立ち並んでいて、そうした景色は確かに、高層ビルが林立する東京の姿とはまた少し雰囲気が違ったものに思えた。
また、幅員の広い国道から一本、裏通りに入れば、アメリカンテイストなショップと日本の伝統的な商店が軒先を連ねる独特な空気感のストリートに出くわすが、さすがにそこで時間を過ごせるほどの余裕は時間的にも電子マネーのデポジットにもない。
国道に沿って走っていくうちに歩道橋へ出くわすので、セージはそこで自転車を降りた。
自転車を押しながら歩道橋を渡っていると、また海が見えてくる。
対岸の岬にはアメリカ海軍の艦艇が、真下には海に面する形でショッピングモールが営業していて、そこからは控えめな桟橋が出ていて、観光船が発着している様子だった。
歩道橋を降りると、そこから海沿いに、やはり道が小綺麗に舗装された公園が細長く伸びている。観光船、アメリカ海軍の艦船だけでなく、西側にはさらに日本の艦艇も見え、まさに横須賀の海を一望できるエリアになっていた。
セージは再び自転車に乗って、自動車道路の高架下を走り始め、公園敷地内にあるポンプ場や、古い戦艦の砲身モニュメントの脇を駆け抜けていく。
日本の横須賀基地の桟橋に停泊している彼の母艦、イニシエイト・ロコラの艦容はとっくに視界に入っている。ここからだと、全長300mの巨体はそこまで大きくないように見えるが、それは遠近法による錯覚だ。
検問でロコラのIDカードを示すと、ここ最近は通学のため朝と夕方に欠かさず通過するセージの顔を憶えてくれたのか、それともセージがまだ学生だからか、担当官は心なしか柔らかな言葉で通行を許可してくれた。
それを喜んで良いのかどうかは分からなかったが、他の国でそうであったように、何時間も(下手したら何日も)留め置かれるよりはずっとマシだった。
なんにせよ、検問を通ればロコラはすぐそこだ。
桟橋までの長く広い舗装路の端を、往復する車両の邪魔にならないように走っていく。
もう少しだと思えば、ペダルを漕ぐ足も自然とサイクルが早くなる。
桟橋を一気に走り抜ける。
イニシエイト・ロコラの艦体左舷の中央やや後方にはカーフェリーのようなROROゲートが設けられている。
セージは、艦から岸壁に架橋されたそのスロープを走って来た勢いのまま駆け上がった。
そうして、搬入物資を一旦プールしている踊り場のような区画の隅で自転車を折り畳んでいると、コンテナの陰から知った顔が出てきた。
「おいおい、こっちは物資搬入用のゲートだぞ。ちゃんと乗組員用橋路から上がって来い」
ラダマだった。ニヤニヤと笑いながら、セージに向かって注意らしきものをしてくる。
「別にいいだろ、こっちの方が近いんだから」
「良くはねぇな。事故につながったらどうするんだ」
「自転車だと、こっちの方が上がりやすいんだよ」
「だったら自転車なんて乗っていかなきゃいいだろう。まぁいいや、今はオレしか見てねぇから補給班の班長には黙っておいてやる。貸し一つだな」
「わかったよ。貸し一つね」
セージが手を振ってラダマの話を打ち切ろうとしていると、別のコンテナからも人影が姿を現して、ラダマの隣に並んだ。
「残念なお知らせだ、星の王子様。目撃者は一人じゃない、二人だ」
自転車を畳み終わったセージは体を起こして、ヘラヘラと笑いながらこちらを見下ろしているベトナム出身のヘリコプターパイロットを睨んだ。
「なんだよ、クオンもいたのか」
「おう、いたさ。そこのラダマ君とはさっきまで一緒に搬入作業を頑張ってたんでね。ところで、そんなオレたちを労って、今度、陸のカフェでコーヒーを奢ってくれるとは学生君もなかなか見上げた心掛けじゃあないか」
「誰もクオンに奢るなんて言ってないぞ」
「まぁ、そう言うなって。あのやかましい班長にどやされるよりマシだろ」
クオンは肩をすくめてみせたが、そうしたいのはセージの方だった。
「しょうがないな。でもトッピングはなしだからな」
「あぁ、いいさ。オレはコーヒーの上にクリーム乗っけて喜んだりはしないからな」
クオンはそう言って黄色い歯を見せたが、すぐに取り繕って教官風の物真似をし始めた。
「ところで良いのかね、学生君。陽はまだこんなにも高いっていうのに、艦に戻って来るなんて。学校へ行ってたんだろう。授業をサボるのは良くないぞ」
いかにも芝居がかった調子に、セージはこれ見よがしに深く溜め息をついた。
「なんだなんだ、随分お疲れのご様子じゃないか。故郷の学校へ通うっていうのはそんなに大変なもんなのか。だけど悲しい哉、オレたちみたいに艦に残されたヤツらは半舷上陸すら許されず、手が空いてりゃ総出で、ひたすら荷役をさせられてたんだから、そんなお前の苦労を分かち合ってはやれねぇんだ。なぁ、ラダマ君」
「いや全く気の毒に。オレたちはただひたすら立ちっぱなしで大量のコンテナと厳しい班長に向き合っていただけだから、ずっと座ったまま大量のテキストや理不尽な教師に向き合ってる我らが星の王子様の苦労を共有してやることはできないんだ」
「分かってもらえない側もつらいとは思うが、分かってやれないオレたちもまたつらい!」
そう来たか。
絶対に思ってもいないであろう言葉を口にしながらクオンとラダマが互いに肩を組んで泣きべそをかく真似までし始めるに及んで、セージは深い溜め息を追加した。
「どうせそんな風に言われるだろうと思ってたよ。だから、今日は早く帰って来たんだ。授業は昼までだったから、午後は少しでも手伝おうと思ってさ」
「いやいや、いいんだ、いいんだ、学生君」
あくまで調子を変えず、クオンは大袈裟に手を横に振ってみせた。
「こんな、ただ大変なだけの荷作業なんてオレたちに任せておいてくれれば良いんだ。将来ある天分に恵まれた若者は真面目に学校へ通って勉学に励んでくれたまえ」
もちろん本気で言っている訳がない。質が悪いことに、クオンはこれでも艦内では随一の腕を誇る回転翼機パイロットだった。
「あのさ、こっちだって好きで行ってるわけじゃないんだよ。通えって言われたから通ってるだけなんだ。いいよ、わかったよ。手伝えばいいんだろう。こっちだって、そのつもりで帰って来たんだ。言ってくれ。デンゲイを動かしてもいいって許可が出ればホニアラみたいにすぐ終わるさ。それで、どこから手を付ければ良いの?」
「終わったぞ」
「えぇ?」
ラダマの予想しない回答に、セージは変な声を出してしまった。
クオンは片手で腹を抱えて、もう一方の手で目の辺りを覆うという、これまた大袈裟な仕草で笑い出した。
「だから、今日の分はもう終わりだ。オレたちはこれから引き揚げるところなんだ」
「なんだよ、それ」
セージはがっくりと肩を落とした。折角、急いで帰って来たというのに無駄骨になった。
クオンはそれを見て、ますます愉快そうにした。
「傑作だなぁ、共辰者。空の上じゃ王子様でも、陸の上じゃ思うようにはいかないか!」
棘のある口振りに、セージはまなじりを釣り上げた。
「言っておくけど、その呼び方、好きで呼ばれてるわけじゃないからな」
「いいじゃねぇか、オレは好きだぜ。少なくとも御邪魔蜥蜴って呼ばれるよりマシだろ」
「どういう意味だよ」
身長が比較的高めのクオンはニヤニヤと笑いながら当然にセージを見下ろし、これから成長期を迎えるはずのセージは自然と見上げる格好になって、両者は睨み合った。
「ま、その辺にしておいてやりな」
ラダマが間に入って、クオンをとりなした。きっと、セージがそろそろ本気で腹を立て始めていることに気がついたのだろう。
「はいはい、整備班の若きリーダーにそう言われちゃ、オレだって何も言えませんよっと」
クオンは両手を広げて、降参のポーズをしてみせた。
「なんてったってオレらの機体は竜とは違って整備してもらわなきゃ動けねぇんだから」
まだ言うのか、と思ってセージは食って掛かろうとしたが、ラダマが一歩前に進み出てきて、鼻先に小包を突き出してきた。
「なんだよ?」
「宅配便だよ。ステファン宛てのな。本人に訊いてみたら、これから艦を降りて御偉方と一緒に上陸するから後でお前に持って来させてほしいってさ」
「オレに?」
突然の話にセージは顔をしかめて訝しんだ。
「どうしてオレなんだよ?」
「さぁな。オレが知るわけないだろ。ステファンに直接訊いてみりゃいいんじゃないか。
ステファンはいつも艦上構造物の最上階、つまりイニシエイト・ロコラの天体観測区画に詰めている竜星天文学者で、確かにセージの顔なじみではあった。
「なんでもお前とはあながち無関係じゃないらしいぞ」
「本当かよ?」
「こんなこと嘘ついて、どうすんだよ」
それもそうかと考え直し、セージは首をかしげながらも、スマートウォッチの化粧箱と同じくらいの大きさの小包を受け取り、それをしげしげと眺めた。
「なんだ、お前。意外に信用されてるんだな」
いつの間にかクオンが不用意に近づいて小包を覗き込んでいた。
「見るなよ!」
気づいたセージが邪険に振り払うと、クオンは妙にはしゃいだ喜声を発して、のけぞるようなバックステップを決めると、ラダマの肩を叩いて通路の方を示した。
「そろそろ行こうぜ。メシの時間が過ぎちまう」
ラダマは「あぁ」と頷くと、セージに片手をあげて見せた。
「じゃあな、セージ。オレたちは先に行くぜ。その荷物、頼んだからな。それと、何とかっていう子とは仲良くできてんのか。しっかりやれよ」
二人の乗組員が去っていくと、後には小包を持って佇むセージだけが残された。
セージは飾り気のない茶色いボール紙の梱包を改めて視線を落とした。
表の面には当然ステファンの名前が宛先として記されているが、裏返しても他に何も書かれておらず、それ以上の情報も得られない。
ステファンに訊こうにも、お偉方と一緒に東京へ行ったということは、数日前アイノが言っていた竜星群対応のための会合に参加する、ということだろう。
ロコラの実質的な総司令官であるテルミが日本政府や在日アメリカ軍といった現地側カウンターパートと協議するために、ステファンの専門的知見を必要としたのだ。
アイノも随行すると言っていたのは、彼女は乗艦前には国連竜星群機関の職員としてテルミの秘書のようなことをやっていて、それを買われたからだろう。それにアイノは子供と話す程度には日本語を話せる。
艦に残っているクルーだってオーストラリアから日本まで一週間の航海を終えて息つく間もなく、シドニーやケアンズでは完遂できなかった艤装と艦内設備の有効化を速やかに済ませ、イニシエイト・ロコラがいち早く本来の目的に従事できるよう奔走している。
物資の搬入に整備班やパイロットまで手の空いているクルー全員が駆り出されているのにも、そういう理由がある。
セージはもう一度だけ息を吐いた。
小包を脇に挟んで、折り畳み自転車を乱雑にケースへしまった。
荷物の積み込みが終わってしまったというのなら自室へ戻るしかない。
引き揚げる途中、書類や荷物を抱えて足早に通路を歩くクルーと何人も擦れ違った。
皆は例外なくセージを見ると笑顔で挨拶をしてくれたので、セージもぎこちなく笑顔をつくって挨拶を返すしかなかった。
ほどなくして、セージは自身に宛がわれた船室に戻って来た。
自転車を壁にかけて固定し、通学に使っているデイバッグも壁掛けにかけてしまって、中身の教科書やノート、それに学校支給のタブレットをデスクの上に並べた。
自前のラグドタブレットを取り出し、クラスメイトから教えてもらった日本の配信者やコメディの動画を幾つか再生してみたが、すぐに聞き慣れた英語の自然科学ドキュメンタリーやマリンレジャーのPOV動画に切り替えてしまった。
日課の室内トレーニングとロープワークの練習を終えて、セージは改めて机に向かった。
日本語で受けた授業の内容を見直して、それから他に出来ることを考え、学校でどうしても気になってしまった点についてスマートフォンやタブレットで撮影した画像を再度チェックしてから、せめてレポートを作成することにした。




